鉄塔営巣のクマタカ。まだ巣立たない

お盆に西日本を通過した台風の影響で、吹きさらしの巣ごと飛ばされるのではないかと心配したのだが、巣も雛も無事だった。雛は巣の上で落ち着いていて、まだ巣立つような仕草は見られない。尾羽や風切羽はまだ短く、これではもうしばらく巣立つことはないだろう。普通はこのくらいの日齢になると盛んに羽ばたきの練習をして、空中に浮き上がったりするのだが、この雛はほとんど羽ばたき練習をやらない。

その原因はこの巣の形状にあるのかもしれない。普通は直径1m近い丸い巣が樹木の枝に造られる。クマタカの雛はそこで思い切り翼を広げて羽ばたき練習をする。しかし、この鉄塔の巣は待避所のL字になった細長い網目状のところに細長く巣をかけている。その上、手すりのようになった鋼材が周りを囲んでいるので、翼を広げて羽ばたくと翼がその鋼材に当たりそうだ。

巣立ちが近くなると、巣から離れた枝先に止まったり上の枝に飛び移って止まったり、首を伸ばして巣の外を見て飛び出したそうな行動をしたりするものだが、この雛は全くそういう行動も見られない。
これらの行動をするかどうかは雛によって個体差がある。樹上営巣の雛でもあまり羽ばたき練習をしない個体もいるので、巣立ち前の行動が見られないのが鉄塔営巣の影響なのかどうかはわからない。

この雛の巣立ちは、8月末か9月に入るかもしれない。巣立ちは本州では7月中旬頃、北海道でも7月下旬から8月上旬とされているから、この鉄塔営巣のクマタカは遅い巣立ちの日本記録になるかもしれない。
鉄塔営巣と遅い巣立ちの両方で日本記録樹立となりそうだ。しかし、巣立ちが遅いのは、クマタカの生息状況が良くない場合が多いので喜んではいられない。



鉄塔に営巣するクマタカの育雛。親鳥が今回もモモンガを運んで来た

オレンジカモシカ、今年は出産せず

オレンジカモシカは、2015年に初めて子どもを産んでから4年連続で出産し、子カモシカを育てて来た。しかし、5年目の今年は出産しなかった。
そのせいか独り立ちして暮らしている昨年の子カモシカが、時々オレンジのところに戻って来て一緒に行動している。

7月のある日、昨年の子カモシカがオレンジを見つけていつものように近づいて行った。子カモシカは早足でオレンジのところまでルンルン気分で駆けて行った。ように見えた。オレンジの直前で立ち止まり、そこから先は恐る恐るオレンジの様子を見ながら近づこうとしている。その時、オレンジが下から頭を振り上げるようにして「近寄るな!」というような行動をとった。子カモシカは呆然として立ち尽くしている。オレンジは子カモシカと反対方向へ採食しながらゆっくりと歩き始めた。子カモシカは悔しそうにススキに八つ当たりした後、オレンジとは反対方向へゆっくりと歩を進めた。

もう別々に暮らす時期だということなのだろうか?人間的には、時々戻って来てしばらく一緒に暮らしていてもいいのにと思えるのだが、カモシカの世界ではそうではないらしい。厳しいが、そこには野生で生き抜くための知恵が隠されているのだと思う。



鉄塔営巣のクマタカ。巣立ちまでもう少し

早ければもう巣立っているかもしれないと思いながら、鉄塔の巣を望遠鏡の視野に入れる。巣の端っこに座っている雛が見えた。8月6日の時点で羽毛が生え揃い、一見立派なクマタカとなっている。しかし、立ち上がった姿を見ると尾羽がまだかなり短い。巣立ちまでにはあと10日くらいかかるだろう。

いい風が吹くと、翼を広げて羽ばたきの練習をし、親鳥が持ち帰った獲物に飛びつき、翼で覆い隠して押さえ込むなど元気に動き回っている。今日の獲物は鳥類(種不明)と大きなヘビだった。どちらもすぐには食べなかったが、しばらくして鳥のほうを食べ始めた。鳥をすべて食べ尽くしてもヘビのほうは食べずにいる。ヘビより鳥のほうが好みなのかもしれない。夕方までにはヘビも少しだけ食べた。

35度以上の猛暑が続いているが、日陰のほとんどない鉄塔の巣で雛は元気に育っている。明後日ごろに超大型の台風が西日本に上陸するとの予報だ。巣ごと吹き飛ばされないことを祈っている。



鉄塔営巣のクマタカ。雛の羽毛が生え始めた

鉄塔営巣のクマタカは順調に雛を育てている。雛の翼には羽毛が少しずつ伸びてきた。雛は羽毛の伸び具合から生後42日程度(7月6日時点)と推測される。雛が孵化したのは5月25日頃であろう。結構遅い孵化日である。僕がこれまでに観察した中で早いものでは4月下旬に孵化しているから、それと比べるとちょうど1ヶ月遅い。しかし繁殖の始まりは気温や雪の量など地域によって違いがあるので、このペアの地域ではこれがスタンダードなのかもしれない。

雛が生後1ヶ月ほどになると、日中は保温の必要がないので親鳥は巣から離れ、雛だけで過ごす時間が多くなる。しかし、雌親は巣が見える場所から雛の様子を見守っている。
繁殖の妨げにならないよう、これまでは遠くからの観察にとどめていたが、今日は親鳥がいない間にブラインドに入り、少し近くから観察する。案の定、巣にいるのは雛だけだ。それでも雌親はそう遠くないところにいる可能性が高いので、林の中に隠れてそっとブラインドに入る。
10時半頃、近くで親鳥2羽が鳴き交わしているのが聞こえてきた。雄親が獲物を持って近くまで来たのだろう。雛も鳴き始めた。間も無く雄親が獲物を持って巣に入った。雛は激しく鳴きながら雄親の足元に飛びついて獲物を押さえ込む。雄親はすぐに巣から出て行った。

雛は両翼を広げて獲物を覆い隠して押さえ込んでいる。しばらくして雌親がその獲物を雛へ給餌するために巣に戻って来た。その時にマツの青葉も持ち込んで巣に敷き込んだ。針葉樹の青葉には殺菌作用があるので、巣を清潔に保つためには欠かせない。生肉を食べる猛禽類の多くが、巣に度々青葉を運び込む。

雌親が獲物を持ち上げると、それはモモンガであった。引きちぎっては雛に与え、時々雌親も食べる。ものの15分ほどでモモンガ1頭を食べ終えた。
夜行性のモモンガが、早朝にまだうろついているところを襲われたのだろう。クマタカは小さなものではネズミ類や小鳥、大きなものではノウサギやタヌキ・キツネの子どもなども捕らえる。小さなものから大きなものまで、いろんな獲物を捕獲する俊敏さがクマタカの強みである。



子ジカを探して授乳する、ニホンジカ

ニホンジカは、子ジカを藪の中において、授乳の時だけ子ジカのところにやって来る。これは逃げ足の遅い子ジカが外敵に見つからないようにするためだが、母ジカが来るまでに子ジカは多少移動しているので、母ジカは子ジカがいた場所まで来てまわりを探すことになる。

母ジカは夕方に子ジカのところへやって来ることが多い。両耳をアンテナのように広げて、子ジカが立てる物音をキャッチしようとあたりを見回す。そして母ジカは、登山者など人が近くにいる場合でも警戒しながら子ジカを探して歩いて行く。普段ならそんなに人間に近づくことはしない。
まもなく子ジカが母ジカに気づいて駆け寄って来るのだが、時にはなかなか見つからないこともある。それでも母ジカは根気よく探して子ジカを見つけ出す。子ジカはお腹を空かしているので、すぐに母ジカの腹の下に入って乳を飲み始める。十分に乳を飲んだ子ジカは、しばらくは母ジカのそばにいるが、そのうちに茂みに隠れ、母ジカは他のシカたちと採食しながら去って行く。

このような生活が1ヶ月ほど続き、子ジカが少し大きくなって素早く走り回れるようになると母ジカと行動を共にするようになる。5〜6月に生まれた子ジカたちは、今では徐々に母ジカと行動を共にするようになっている。



子ジカを探す母ジカ。子ジカが母ジカを見つけて駆け寄り、乳を飲む

鉄塔営巣のクマタカ、雛が孵化。繁殖順調

鉄塔に営巣しているクマタカの繁殖は順調に継続している。5月中旬には、まだ抱卵であったが、月末には雛が孵化していた。遠方からの観察なので雛の姿は確認できなかったが、雌親が獲物を引きちぎって給餌している姿が確認できた。

鉄塔は周りの林から飛び出て高いので、森の中の営巣と違って直射日光や雨や風を遮るものがない。以前樹木で営巣していたクマタカの雛が、台風の強風で吹き飛ばされて地上に落ちて死んでいたことがあった。鉄塔の上ではさらに強い風が吹き付けるだろう。強い陽射しもまた小さな雛にとっては致命的だ。親鳥が翼で覆って日陰を作って凌ぐしかない。新しい環境での心配事は次から次へと思い浮かぶのだが、新世代クマタカはそれらの問題をいとも簡単に克服するに違いない。



鉄塔に営巣するクマタカ。
雌親は獲物を引きちぎって雛に与え、時々自分も食べる

脚を失った野生動物。くくり罠との関係

近年、脚の先端部が無い野生動物を時々見かける。キツネやタヌキ・アナグマなどの中型哺乳類のほか、大型のニホンジカも片脚のないものがいた。こうした野生動物をちょくちょく見かけるようになって、その原因として気になったのがくくり罠だ。

ニホンジカが増えて農作物や林業の被害、山の植物が食べられて裸地化するなど深刻な被害が発生している。それに伴ってニホンジカの有害捕獲が盛んに実施されるようになった。銃器や檻、くくり罠などで捕獲する。くくり罠はワイヤーなどで動物の脚を締め上げて捕獲するのであるが、目的のシカだけではなくいろんな動物を捕獲してしまう。実際にタヌキがかかっているのを見たことがある。また罠の近くで死んでいるキツネやタヌキも見た。

くくり罠で誤捕獲した場合、生きたまま逃してやることは難しく、逃がせたとしても締め上げられた脚は骨折や脱臼などで使えなくなっている。
脚を切断して逃げてどうにか生き延びてきたのが、今回の映像に映っている動物たちではないだろうか?自然状態では、脚を切断するような怪我というのは、めったに起こるものではないだろう。

くくり罠は簡単に設置できるので相当な数が仕掛けられている。罠は改良が加えられて誤捕獲しにくいような工夫がされてきているが、目的の動物以外のものが捕獲される可能性はまだまだ高い。特定の動物を捕獲するはずが、無差別的な捕獲となっている。



アナグマ・キツネ・タヌキ・ニホンジカの脚先がなくなっている。キツネは右前脚と左後脚がない

アナグマ、雨上がりの田んぼで餌探し

朝からいい天気なので山に登って林の中を散策した。春先の新緑の林は気持ちがいい。夏鳥たちの声が賑やかだ。キビタキが近くの木にやって来た。鮮やかな黄色い背中がよく目立つ。時折小さな虫を捕まえて食べている。

沢を挟んだ対岸から岩が転げ落ちる音が聞こえてきた。何か動物が歩いているのだろう。音のする方向を探す。いたいた、ツキノワグマだ。急峻な斜面を登っている。クマはすぐに林の中に入って見えなくなった。

午後からは雲行きが怪しくなってきた。下山途中から雷雨となった。スギの木の下で雨宿りするが、ここも間も無く雨漏りし始めるだろう。車まではもう少しなので、雨が小止みになった時に駆け下りる。

家に戻って前の田んぼに目をやると、何かがもぞもぞと動いている。アナグマだ。鼻先を地面に突っ込んで地中にいるミミズや昆虫などの幼虫を探して食べている。ちょこまかと忙しく動き回ってほとんど動きが止まらない。行動を見ていると、鼻先で地面を触っただけで地中に何かがいるかどうかを見分けているようだ。いない場合はすぐに別の場所へと鼻先を持って行く。いるとみれば鼻先を深く地面に突っ込んで探す。

土の塊を鼻先で砕いた時に、トンボのヤゴのようなものが出て来たのが見えた。アナグマはすぐにそれをくわえてパクパクと食べた。何を食べているのかこちらからは見えないことが多いが、時々慌てて何かを捕まえて食べている。
アナグマが見えない所へ去ってすぐに、別の田んぼに別のアナグマが現れた。同じように食物を探して歩き回っている。

雨上がりはアナグマの食物探しに都合がいいことがあるのか、それとも2頭が出て来たのは偶然なのか、何れにしても2頭のアナグマをじっくりと観察できた。



クマタカが鉄塔で営巣

クマタカの営巣の多くはマツやスギなどの針葉樹が多く、場所によってはブナやトチなどの落葉広葉樹にも見られる。外からは見えにくいところに巣をかけるのが普通である。ところが、まわりがひらけた見晴らしのいい鉄塔の中腹に営巣しているクマタカペアを先日発見した。このような例はこれまで聞いたことはなく、調べてみても見当たらない。おそらくこれが初めての事例だと思う。

鉄塔を利用した営巣は、同じタカの仲間ではミサゴで時々確認されている。ミサゴはもともと木の頂上などのひらけた見晴らしのいいところに営巣することが多いので、鉄塔もまた似たような環境といえる。しかしクマタカにとってはかなり違った環境となってしまうのだが、これも新世代クマタカのなせる技なのかもしれない。

雄クマタカがヘビを捕まえて巣の近くに戻って来た。巣の脇の鉄塔の横棒に止まり、抱卵中のメスに獲物を持ち帰ったことを知らせている。抱卵期には、持ち帰った獲物を巣には持ち込まない。雄はヘビを持って飛び立ち、近くの林の中へ入って行った。すぐに雌が巣から立ち上がり、雄の後を追って林へと消えた。そこで獲物を雌に受け渡した後、雄は巣に戻って抱卵を開始した。雌が獲物を食べている間、雄が交替して抱卵を受け持つのだ。

今のところ順調に繁殖が続いているが、まわりの見晴らしがいいだけに多くのリスクがある。人間の接近によって営巣を放棄したり、カラスや他の猛禽に卵や雛を取られたりする可能性が高くなる。また、鉄塔は定期的にヘリで飛行して点検しているので、ヘリの接近でクマタカが驚いて巣から飛び出してしまうかもしれない。その際慌てているので卵を蹴り落としてしまう危険性もある。

そんなことを考えている時、偶然にも巡回のヘリが爆音を立てて近づいて来た。クマタカがどのような行動に出るだろうか? ヘリは鉄塔の電線に沿って低空を飛行して近づいて来る。クマタカが営巣している鉄塔の間際を飛行して通り過ぎて行った。クマタカはじっと伏せてヘリが通過するのを見送った。

今回は何事もなく終わったが、ヘリが鉄塔の所でスピードを落としてホバリングすることがあれば、クマタカの行動は違ったものになっていただろう。いろんな心配は尽きないが、繁殖が成功することを祈って今後も静かに観察を続けて行きたいと思う。



鉄塔に営巣するクマタカ。
雄がヘビを持ち帰った。
近くの林に入り、雌に獲物を受け渡した後、雄が抱卵に入る

子カモシカに体色の変化

オレンジ色のカモシカは、これまでに4回出産している。父カモシカと同じグレーの子カモシカばかりが生まれている。オレンジ色をした子カモシカは生まれていない。

昨年の子カモシカもグレーであった。昨年11月ごろまでは。その後、オレンジとは別に過ごすようになってしばらく姿を見せなかった。2月になって久しぶりに子カモシカが現れ、オレンジと合流して一緒に行動しているのを見た。11月までの全身グレーの体色から少し毛色が変わっている。肩から頭までが淡い色で白っぽくオレンジがかった毛色になっている。肩のあたりを境にして、頭側と尻側で明確に毛色が違っている。他のカモシカにはない特徴的な体色なので、この子カモシカは個体識別して今後追跡できそうだ。

この子カモシカは、その後も時々オレンジの行動圏で過ごしているのを見かけるが、オレンジと合流することなく別々に生活している。体色は徐々にオレンジ味が強くなっているように思う。母カモシカのオレンジ色を受け継いでいるようだ。