オレンジカモシカ母子がツキノワグマの追跡を受ける

朝、山に登って間も無く、遠くでカモシカの警戒声が聞こえた。何に警戒しているのかと気になったが、姿は見つからない。しばらくして斜面を登っているオレンジカモシカを発見した。子カモシカも一緒にいる。オレンジは時々後ろを振り返って様子を見ている。斜面に突き出た岩の上から、下の斜面を注視している。やがて歩き出して尾根の林の中へ入って見えなくなった。
ツキノワグマが追っている。僕は直感だが確信を持ってそう思った。オレンジ母子が消えたあたりを注視してクマが現れるのを待つ。しばらくしてやはりクマが現れた。クマは尾根付近で立ち止まり、座ってくつろいでいるように見えるがブッシュに隠れて詳しくは分からない。歩き出して林の中へ消えた。

30分ほど経った頃、200mほど尾根を登ったところにオレンジ母子が現れた。近くにニホンジカも1頭現れた。ニホンジカは尻の白い毛を逆立ててものすごく興奮して警戒している。クマが近くまで来ているのだろう。ニホンジカは去り、オレンジ母子は斜面を少し進んだ岩場で立ち止まって後ろを見ている。
オレンジ母子がばね仕掛けのように飛び跳ねて走り出した。一気に斜面を駆け下りていく。200mほど下ったところで少し落ち着いて歩き始めた。尾根のほうに目をやるとクマが呆然として立っていた。オレンジ母子がいち早く全速力で逃げ出したので、クマは襲いかかるタイミングを失ってしまったようだった。クマはやがて気を取り直して、あまりに距離が離れてしまったオレンジ母子の追跡を諦め、違う方向へと歩いて行った。



ツキノワグマが近づき、全速力で逃げるカモシカの母子。クマは追跡を諦めた