伊吹山は日本のほぼ中央に位置し、北方系の植物や日本海要素の植物(日本海側が分布の本拠であるもの)などが生育しています。また、高山性の植物や特産種(伊吹山固有種)が多く、学問的にも貴重な山です。特に、伊吹山周辺部と姉川最上流部が、希少植物や自然林が多く重要なエリアです。
No. | 群落 | 説明 |
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1 | ミズナラ – コナラ群落 | ミズナラの樹高は8~10m、胸高直径35~36cm。ヒメモチ、ミヤマシキミ、ハイイヌガヤ、エソユズリハ、タムシバなどの日本海要素の植物を多く含む。昔、薪炭林として利用された。 |
2 | トチノキ – サワグルミ群落 | 北部の姉川源流域の多雪地帯の渓谷沿いに発達する自然林。リヨウメンシダ、ムカゴイラクサ、湿性植物が多く出現している。 |
3 | オオイタヤメイゲツ – サラサドウダン群落 | オオイタヤメイゲツの優占する中にサラサドウダンが生える。草木屑にはヒメモチ、ツルシキミ、オオバクロモジなどの日本海要素の植物が多い。 |
4 | ミズナラ群落 | ブナは樹高20~25m 胸高直径60~100cm。高木層にミズナラ、コシアブラが混生。亜高木・低木層にマルバマンサク、エソユズリハ、低木屑にヒメモチ、ツルシキミ、ミヤマシキミ、ムラサキマユミ、ハイイヌガヤなどの日本海要素の植物を多く含む。 |
5 | サラサドウダン群落 | 花崗岩質の尾根筋に見られる。ハイイヌガヤ、ミヤマシグレ、ミヤマシキミ、ヒメモチなどの日本海要素の植物が多い。 |
6 | オオバクロモジ – ブナ群集 | 胸高直径60cm前後のブナが生育し、林内にはオオバクロモジ、エソユズリハ、ハイイヌガヤ、タムシバ、林床にミヤマシグレ、ヒメモチ、オオイワカガミなど日本海要素の植物が多い。サラサドウダンの低木が混生する。 |
7 | ブナ – アカガシ群落 | 天然林に近く、極相林として今後も維持されるべき責重な社寺林。エソユズリハ、オオバクロモジ、ツルシキミ、タムシバなどの日本海要素の植物が生育する。 |
8 | ミヤマカタバミ – オオイタヤメイゲツ群集 | 石灰岩地質に特有の極相林。ハイイヌガヤ、チャボガヤなどの日本海要素の植物、北方系の植物を含む。ヒメザゼンソウが生育する。 |
9 | 山地草原植物群落(国・県指定天然記念物) | 「お花畑」として親しまれている広葉草原。メタカラコウ、クガイソウ、シモツケソウなどの高山植物が多数生育。コイブキアザミ、ミヤマコアザミなど固有種も多く見られる。 |
10 | ヤキ – チャボカヤ群集 | 排水が良く、地表が不安定な場所に発達する。亜高木層はクマシデが優占。低木層のメツクバネウツギ(スイカズラ科)は稀産種。 /td> |
11 | ブキヒメヤマアザミ群落 | スキー場として草刈りされている草地に生育。イブキヒメヤマアザミは固有種。 |
12・13 | アベマキ – コナラ群落 | 高木層にアベマキが優占し、亜高木層にソヨゴが生育する薪炭林。多様性に富み、野生動物の餌になる樹種が多い。里山として維持すれば自然観察や森林浴に利用できる。 |
14 | ハンノキ群落 | 伊吹町ではハンノキ林の分布は限られている。草本暦はアオミズ、アシボソ、ミゾソバ、ツボスミレ、ドクダミなどの好湿性の植物が出現する。 |
イブキコゴメグサ(ゴマノハグサ科) |
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伊吹山の固有種。日当たりのよいガレ場の草地に生える。米粒のような白い花を咲かせる。
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イブキトラノオ(タデ科) |
山地および高原の草原に生える。伊吹山で最初に発見され、多数産することから「イブキ」の名がついた。
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イワウチワ(イワウメ科) |
日陰の岩場に生える。産地により葉の形状に差が見られる。
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エゾフウロ(フウロソウ科) |
北方系の亜高山性植物。伊吹山三合目以上のお花畑で見られる。伊吹山が分布の西南限。
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オオイタヤメイゲツ(カエデ科) |
日本の固有種。高さ10~15mになる落葉高木。初夏に淡黄色の花が房状に咲く。滋賀県内の石灰岩地帯では、ブナに代わって優占種となり、極相林を形成する。伊吹山では、標高900~1200mに多い。
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カタクリ(ユリ科) |
山地の草原、落葉樹林などの下に群生する。早春、他の植物が葉を出して林床に光が届かなくなる前に、開花・結実する。
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キバナノレンリソウ(マメ科) |
織田信長時代、ポルトガル宣教師が伊吹山に開いたと伝えられる薬草園に、ヨーロッパから移植した薬草に紛れて来たと考えられ、伊吹山のみに帰化。
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クサンカメバヒキオコシ(シソ科) |
日本海要素の植物で、伊吹山が西南限。北尾根や南尾根の湿ったところに生える。石川県白山で発見された。葉がカメの形に似ている。
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コイブキアザミ(キク科) |
伊吹山の固有種。石灰岩地で、表土が乾燥し、風当たりの強いところに適している。山頂のお花畑で多く見られる。
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ニリンソウ(キンポウゲ科) |
二つの花をつける場合が多いので、一輪草に対して、二輪草と名付けられている。
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ユウスゲ(ユリ科) |
伊吹山三合目の草原に群生する。夕方から開花するのでこの名がついた。
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リンドウ(リンドウ科) |
秋の代表的な草花。イ尹吹山山頂のお花畑に非常に多い。根は漢方薬で、腹痛や消化不良に効く。
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ルリトラノオ(ゴマノハグサ科) |
吹山山頂のお花畑に自生する固有種。古くから観賞用として栽培されている。花穂がトラの尾のように長く、花が瑠璃色。
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伊吹山のお花畑 |
伊吹山は大部分が石灰岩質で、標高1200m以上の山頂部には、高山植物の混じったお花畑が広がっている。7~8月には、シモツケソウ(写真:桃色)やクガイソウ(紫色)、メタカラコウなどが一面に咲き乱れる。
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