カモシカとニホンジカの大接近

ニホンジカの個体数が近年かなり増えた。時を同じくしてカモシカの個体数が減った。植物食でどちらも同じような食性、生息地もほぼ同じ。そんな2種が競合してカモシカが減っているのではないかとよく聞かれるのだが、カモシカがニホンジカに生息地を奪われて追い出されているというようなことは全くない。追い出されるとしたらニホンジカの方ではないかと思う。これまでにカモシカがキツネやツキノワグマを追いかけて追い払ったのを見たことがある。カモシカは普段見るおっとりとした性格ばかりでなく、結構気性が荒い。追い払われるとしたらニホンジカの方だろう。

今回の映像で見るように、カモシカとニホンジカはお互いの生息を認識し、間近で出会っても争いになるようなことは起きていない。このビデオのニホンジカは、オレンジカモシカ母子に興味津々で、近づいて見たくて仕方がないようだった。しばらくは少し遠巻きに採食しながら様子を見ていたが、いよいよ意を決して近づいていった。恐る恐る近づくが、カモシカの方は大して気にも止めていないようだった。オレンジに近づいた後、子カモシカにも接近。



カモシカとニホンジカは競合という点では、問題はないようである。しかし、ニホンジカが増えるとほぼ同時にカモシカは減少している。これはただの偶然かもしれない。しかし、僕はニホンジカがカモシカの病原菌を運んだのではないかと考えている。その頃病気で死んだカモシカがたくさん見られている。
オレンジの周辺でも、たくさんのカモシカが見られたのだが、それらのカモシカが急にいなくなった。寿命の長い大型の哺乳類が急に姿を消したのは、病気が蔓延してバタバタと死んだのではないだろうか?病死の死体はいくつも目撃されている。
全てはまだ推測であるが…。

子カモシカはやんちゃ盛り

オレンジカモシカの子カモシカは生後2ヶ月を過ぎた。オレンジの行くところはもうどこでもついて行けると言わんばかりに意気揚々と歩いている。確かに少々の段差や岩場なども、小さいながらもうまく乗り越えて行く。

絶壁状の岩場をオレンジが足場を確保しながら降りてゆく。断崖に張り付くように生えている低木の葉を食べながらゆっくりと進んでいる。高さが50m以上はある絶壁なので、下まではたどり着けずに引き返してくるものと思っていたが、どんどん降りて行く。おそらく何度も通って降りられるルートを知っているのだろう。何の躊躇も行き詰まることもない。
子カモシカはオレンジが通っていない方向へ行こうとしたり身を乗り出して下を見たりと、こちらがハラハラとさせられる。足を滑らせでもしたら絶壁から墜落してしまうことを、子カモシカは分かっているのだろうか?と言いたくなるような大胆な行動だ。

そのうちに子カモシカはオレンジと少し離れた。オレンジは岩場を回り込んで子カモシカの下方に出て来たのだが、子カモシカは一直線に岩場を下ってオレンジのところへ行こうとしている。そんなことをしたら今度は本当に転落してしまいそうだ。
子カモシカが岩場をそろりそろりと降り始めた。すぐに4本の脚が岩場を滑り出した。これはやばいと思ったその時、子カモシカは滑りながら岩場を走り降りて、オレンジのいる狭い棚状のところでピタリと止まった。
ウーーム、子カモシカもやるな。これで岩場の難関は越えた。



絶壁を降りるオレンジカモシカの母子。子カモシカが岩場を滑り降りた