伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年2月



12月と1月は一昨年にニーナが育った巣へ雄ワシが盛んに巣材を運んだが、2月になって巣場所を変更した。
雌雄揃って何度も巣材を運んでいる。

2月26日には抱卵交代の行動が観察できた。25日は雄ワシだけしか確認できなかったことから、雌ワシはすでに抱卵していた可能性が高い。一昨年のニーナの時には2卵とも夕方遅くに産卵しているので、今回も夕方、おそらく24日に産卵したのではないかと推測している。

イヌワシの営巣エリアから少し離れたところでクマタカが営巣している。普段はあまり目立たないように行動しているが、28日にはゆっくりと旋回上昇して現れた。これだけ目につく行動をするとすぐにイヌワシが攻撃してくるだろうと見ていると、案の定、雄ワシが急降下でクマタカに攻撃を仕掛けてきた。クマタカは慌てて林内へと逃げ込んだ。
そのあとクマタカは上空をかなり気にしながらも長い枝を巣に運んで行った。この時期クマタカは造巣期で3月中旬には産卵するだろう。

イヌワシは雌雄ともにこのところそのうがいつも膨れている。良い具合に獲物は捕獲できているようだ。
今年も繁殖がうまく行って幼鳥が巣立つことを願っている。

伊吹山のイヌワシペア産卵

巣材を運ぶ雌ワシ

一昨年にニーナが巣立った巣でのライブ配信を今年1月から開始し、巣造りの様子を観察することができました。しかし、雄ワシが一生懸命巣造りしているのに対して雌ワシは滅多にこの巣を訪れることはありませんでした。雌ワシは一昨年の子育て中に起きた落石を恐れているようでした。
1月末からは雄ワシもこの巣に巣材搬送しなくなりました。

2月14日には別の巣へペアで巣材搬送しているのを確認しました。遠方からの観察で巣を直接見ることはできませんが、26日には雌雄が抱卵を交代したと考えられる巣付近への出入りを何度か観察できたことから、産卵していると推測されます。

ニーナが巣立った巣のライブ配信は2月28日で終了します。

今年も繁殖が順調に進み雛が巣立つことを祈って、今後は繁殖の様子を随時お知らせしていきます。

伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2025年2月1日 親子3羽で過ごす



サーナはまだ両親のそばで暮らしている。朝から午前中いっぱい、親子で一緒に過ごしていた。サーナは自力での狩りはなかなか困難なのだろう、両親のそばで時々コールして獲物を要求していた。
ペアが2回交尾するのを観察した。今年の繁殖に期待が高まるが、交尾と産卵はあまり関係がない。

父ワシのそのうが少し膨れている。この枯木に親子が止まり、沢への飛行を何度も繰り返したことから想像を巡らせると、昨日くらいに捕獲した獲物の残骸が枯木から見える沢部にあるのではないか。枯木と残骸を何度も行き来するが、獲物は骨と皮だけになってもう食べるところはない。
この日はそのような状況だったのではないだろうか?この予想が当たっているかどうか、あと1時間雪山を歩いて予想の真偽を確かめに行きたい衝動に駆られたが、残骸があるかもしれない場所が絞り込めないので見つけられる可能性が低く諦めた。

正午近くになって、サーナと両親は別々の方向へ飛び去り、それぞれの活動を開始した。

伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2025年1月5日 雪山を登り母ワシに甘える



今冬は雪が少ないとはいえ、山は雪に覆われた。白銀の斜面の反射を受けてイヌワシの飛翔が輝いている。

雌ワシは相変わらずまだ巣造りに参加していない。今日は巣から離れたところで長時間止まって過ごしていた。午後になって雄ワシを見つけて飛び立ち、合流して一緒に飛行。雄ワシが雌ワシを攻撃する様に接近して、雌ワシは反転してそれを受け止める。ペアのディスプレイフライトだ。

ペアが雪の上に止まった。普段は岩や木の上に止まるのだが、雪が積もると雪の上にもよく止まる。雪の上だとよく歩き回ることがある。
雄ワシが少し歩いて雪上の何かを嘴で摘んだが何かは分からなかった。

ペアが止まっているところにサーナが現れた。すぐそばを通過するが、そこには止まらずに少し離れて止まった。
サーナのそのうは大きく膨れている。獲物を食べて来たらしい。両親ワシのそのうは膨れていないので、もしかしたらサーナは自分で獲物を捕らえたのかもしれないが、確認はできない。

サーナは両親がいる所へと雪上を登り始めた。両親の様子を見ながら徐々に距離を縮めている。頭を下げた低い姿勢で、尾羽を少し立たせて母ワシを小突く。満腹のはずなのにさらにおねだりなのか、それとも別の何かを訴えているのか?理由は分からないが執拗に何度も小突く。
どういう行動なのか知りたいが、それ以上は分からない。
サーナの目標はなぜか母ワシだけだ。父ワシのほうへは向かわない。母ワシはどっしりと構えて取り合わないが、迷惑そうに少し離れる。父ワシのほうは、サーナが接近したり父ワシのほうを見ただけでもいち早く距離を取っている。
飛び去った両親を追ってサーナも飛び去った。

サーナと両親は少し距離を置き始めているように感じる。サーナは時には両親から追い出しを受けているかもしれない。追い出し行動は日替わり的な面があって、追い出し行動をしたかと思うと翌日には獲物を渡したりすることもある。
少しづつサーナの独り立ちの時が近づいている。

伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年12月



来年に向けての巣造りは、今のところあまり活発ではない。昨年ニーナが育った巣へ時々雄ワシが巣材を運んでいる。他の巣への巣材搬送はない。
雌ワシはまだ巣造りをしていない。

YouTubeにアップした映像以外に、10日にも1回だけ雄ワシが巣に来ている。12月の巣材搬送は5日間だ。1日に1〜2回だけしか巣に来ていないので巣はまだ整備されてはいない。
1月からは巣造りが少しは本格的になると思うのだが、2年連続の子育ては難しいかもしれない。

1月1日6時からニーナの巣をライブ配信します。
まだイヌワシが巣を訪れる頻度は少ないかもしれませんが、「伊吹山のイヌワシ子育て応援プロジェクト」として皆んなで見守りましょう。

伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2024年12月9〜18日 雪の季節がやって来た



山では雪の降る日が多くなった。標高1,000m以上はこのまま根雪となるだろう。雪の上には動物たちの足跡が残り、行動を想像しながら山歩きを楽しむことができる。

12月9日にはクマはまだ活動している。雪の上に足跡を残して悠々と歩いていた。キツネは左右にブレない歩きで足跡を残して行った。

サーナは両親のそばでの生活が続いている。まだまだ獲物をねだって親ワシを追いかける姿が見られたが、親ワシたちは次の繁殖準備のためにサーナへの獲物の供給は少なくなっているのではないだろうか?
心なしか親子の距離感が広がった様に感じられた。

伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2024年12月5日 獲物は親ワシ頼み

山麓部に残る紅葉

このところ山頂部は度々うっすらと積雪している。木々は落葉して林床が見通せるようになってイヌワシの狩場として利用しやすくなった。今は山麓部に残った紅葉も最終段階となている。

11月28日にサーナを目撃した時には獲物をせがんで母ワシを追いかけていた。その後は親ワシの出現はあるがサーナの姿を確認できなかった。親の元を離れて独り立ちする時期が近くなってきているので、サーナはもしかして早くも伊吹山を去ったのかと気になっていた。

12月5日、サーナを確認すべくサーナがよく利用する場所を広く見渡せる地点に腰を据えて観察を開始した。
昼を過ぎてもサーナの姿は見つからない。雄ワシが2回出てきただけだ。まだ独り立ちするには少し早いと思いながらも、サーナが伊吹山を離れた後に行く場所を予想して、親ワシたちの行動圏の周辺部にまで範囲を広げて観察しなければと考え始めていた。
13:14、僕の勝手な心配?を見事に裏切ってサーナはいつもと変わらぬ様子で現れた。小さな沢に入って見えなくなった。どこから見ていたのかまもなく父ワシが現れ同じ沢へ入って行った。

両翼の白斑を輝かせて飛行するサーナ

父ワシが再度現れて木に止まった。サーナも隣に止まって獲物をねだっている。飛び立ったサーナは植物の塊を拾い上げ、強い西風に乗って「苔玉落とし」を始めた。落とした塊を素早く急降下して空中でキャッチする。夏頃と比べると安定してうまくキャッチするようになった。

苔玉を掴んで飛行

  

落下する苔玉を追いかける

落下する苔玉を追いかける

  

見事にキャッチ

14時前には、親子3羽で現れてしばらく同じ木に止まった。両親ワシが飛び立ち狩りに出かけるのを追ってサーナも一緒に北尾根に向かった。
まだまだ親ワシたちに食物を頼っている。サーナの独り立ちはもう少し先になりそうだ。

親ワシたちについて狩りに出かける(右上がサーナ)

『サーナの独り立ちを応援する会』開催 2024年11月23・24日

サーナは親ワシの元で元気に暮らしています。あと2ヶ月ほどでサーナは親ワシと別れ、独り立ちして伊吹山を離れて行きます。
11月23、24日、伊吹山ドライブウェイの最終営業日に、皆さんと共にサーナの独り立ちを応援し見送りたいと思います。
サーナを間近に観察できる最後のチャンスです。

両日とも、僕は朝からドライブウェイのいつもの観察会の開催場所(No.38退避所)で観察しています。場合によっては1つ手前の北尾根入口(No.37退避所)に変更になります。
参加には申し込みは必要ありません。各自が自由に立ち寄って一緒にサーナを応援しましょう。

電車利用の方は、最寄駅から友人知人の車に便乗などでお越しください。

当日はドライブウェイが大変混雑する可能性があります。
山はかなり寒くなってきています。防寒は十分にして来てください。

皆様とお会いできるのを楽しみにしています。

伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2024年10月2〜21日 狩りに励む



サーナは目につく動くものが気になって仕方がない。捕まえられるかどうかは別として、思わず襲いかかってみたくなるようだ。
まだまだ獲物を捕えるだけの技術はなさそうだ。親ワシにとっても狩りはなかなか大変だ。狩りに成功するよりも失敗するほうが多い。
サーナも親ワシも見つけた獲物に襲いかかることを繰り返している。

第8回伊吹山イヌワシ観察会 報告

10月19日が雨のために、翌20日に観察会を開催した。朝から晴れ渡って伊吹山がすっきりと見えている。
参加者36名を乗せて、バスは伊吹山ドライブウェイを走り、山頂駐車場でトイレに寄ったあと9:40に観察地点に到着し観察開始。
風は少ないが晴れ渡って視界は良好だ。サーナの登場に期待が膨らむ。午前中は順光で観察できるので、できるだけ早く姿を見せてほしい。僕は「イヌワシは近くにいると信じて探索してください」と伝えた。そのように考えるかどうかでイヌワシの発見には大きく影響するからだ。参加者全員が真剣にイヌワシを探す。

10:43、観察開始から1時間後にサーナが旋回しながら姿を現した。青空をバックにサーナは白斑を輝かせてゆっくりと旋回上昇後、滑翔して尾根裏に消えた。1分足らずだが、皆が観察できるだけの余裕があった。
次の出現は10:49、ゆっくりと旋回後、滑翔してこちらに近づいて来る。我々の背後の丘の後ろに飛び去った。

次はどこから出て来るだろうか?
11:10、先ほど消えたところとは正反対の西側1.2kmほど離れた木に止まっているサーナを発見。我々の視界の範囲を通過して行ったのは間違いない。36人の目を掻い潜って止まり場に移動していたのだ。
我々は視界があれば見えていると思いがちだが、見えていないことは多い。イヌワシの目ならば見逃すことはないかもしれない。

数分後、サーナは飛び立ち急降下、300mほど下の沢に飛び込んだ。獲物を狙ったのだろうか?止まっていた場所からその沢は見えないはずだ。
30分ほど経って、サーナが飛び込んだ沢付近から母ワシが出現した。歩人倶楽部さんの写真からそのうが大きく膨れているのが分かった。一連の行動から推測できることは、「母ワシが獲物を持って沢部に入り、母ワシを追ってサーナがそこへ飛び込んだ。サーナは獲物を食べ、母ワシはそれを見届けて飛び去った」というストーリーだ。
このストーリーを補強するためには、次にサーナが出てきた時にそのうが膨れている必要がある。
1時間後、サーナが出て来た。すぐに見えなくなってそのうの確認はできなかった。13:42、サーナがゆったりと旋回上昇。そのうが中くらいに膨れている。やはり獲物を食べていた。予想したストーリー通りの展開だった。

今日の出現は、サーナは8回、母ワシ1回、父母不明が1回だった。
サーナは観察会を終了してバスに乗り込む時にも、枯れ木に止まって我々を見送ってくれていた。

サーナの第一発見者に送る「ファーストディスカバリー賞」は、歩人倶楽部さんでした。歩人倶楽部さんはいつも観察会に駆けつけてスタッフとして参加していただいています。賞はスタッフを除くことにしていますが、今回は特別にこれまでの感謝の意を込めて、第一発見者としてイヌワシ額入り写真をお贈りしました。

今年4回実施した観察会に全て参加いただいた、中辻 喜久子さん、松山 真由美さん、南 陽子さんの3名が皆勤賞(写真入りクリアファイル5種類セット)でした。

今回は特別に、歩人倶楽部さんから鳥海山のイヌワシ未来館のグッズを観察会の景品としていただきましたので、重要な発見をした2人に景品を贈りました。
サーナへの獲物受け渡しの手掛かりとなった母ワシ発見者の青柳 咲絵子さんと、サーナのそのうが膨れていることの確認に繋がる飛行を発見された柴田 果菜さんに、歩人倶楽部さんから可愛いイヌワシイラスト入りの手提げが手渡されました。

ファーストディスカバリー賞


皆勤賞

歩人倶楽部 特別賞


今年のイーグレット主催の観察会はこれが最終回でした。
11月には米原市主催でイーグレットと協働で「伊吹山イヌワシ観察会」を開催します。参加費2,000円です。
募集15名で今回は少人数開催です。今のところ若干名の空きがあります。

来年ドライブウェイ開通後に、どのような形になるかは決まっていませんが、観察会は継続する予定です。