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イヌワシの巣造り、子育てライブ映像ダイジェスト2

昨年末から、巣には雪が降り積もり、巣造りができない状況が続いている。雌雄が鳴きかわしている声が巣の近くで聞こえるが、雪がこんもりと積もった巣には滅多に入って来ない。

1月17日、雄が巣にやって来た。巣の縁の雪のない部分に止まって、さかんに鳴いている。近くに雌がいるのだろう。その方向を注視しているが、雌は巣には来なかった。

イヌワシの産卵は、近畿地方では2月上旬頃が多い。伊吹のワシは早い時には1月下旬に産卵することもあり、周辺の他のワシより若干早めにに繁殖が始まる。しかしここ数年、伊吹では2月下旬に産卵している。遅くなっている理由は分からないが、産卵が遅くなるのは生息状況が悪化している場合に多いように思う。伊吹のワシの将来を少し不安に思う。
産卵が遅いので、巣造りはこれからが本番となるだろう。今年の繁殖がうまくいくことを祈っている。

2月頃からライブ配信の予定です。
イヌワシは、今年の繁殖活動を開始しています。営巣地やその周辺の人の動きなどに敏感で神経質な時期です。
営巣地に近づくことがないようにお願いします。
ライブ映像でイヌワシの繁殖を見守ってください。



雪の積もった巣でコールする

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イヌワシの巣造り、子育てのライブ映像配信

新年おめでとうございます。

今年から、イヌワシの巣造りから子育てまでをライブ配信する予定です。
これまで僕のライフワークであるイヌワシについて、ネット上ではほとんど発信していませんでした。発信することで、たくさんの人たちがイヌワシの生息地を訪れることになり、警戒心の強いイヌワシの繁殖や生活に影響を及ぼしてしまうことを懸念しているからです。

伊吹地域に生息するイヌワシを、これまで40年間ひっそりと見守ってきましたが、近年では多くの人の知るところとなり、イヌワシを狙う多くのカメラマンが集まるようになっています。それぞれが思い思いの行動をとることで、イヌワシの生活を狂わせつつあります。餌となる動物の死体などを持ち込んで写真を撮ろうとする人がいたり、巣立った幼鳥を追いかけて、普段は人が立ち入らない山中のあちこちにカメラを構えた人が居座っていたり、また巣の近くまで行ってカメラを構えているために、親鳥が巣に戻れない事態も起こっています。

情報が瞬時に拡散する現代では、僕が情報を発信しないことだけでは人の集中を避けることはできません。人が集まるところでは、自然観察のルールが必要だと思います。僕がよく訪れるアフリカの国立公園にもルールがあります。野生動物に餌を与えない、観察路や道路から外れて動物たちを追いかけない、動物の行動を阻害しない、などです。日本でも人が集中する場所では、こうした自然観察のルールが必要になってきています。

今回のライブ配信では、普段見ることができないイヌワシの巣造りや子育てを、イヌワシに影響を与えることなく観察できます。このような趣旨に賛同いただける方々と一緒にイヌワシを見守り、イヌワシの生活を脅かすことがないようなルールが、自然に出来上がることを期待しています。
ライブ配信は、2月頃から公開予定です。それに先立ち、繁殖状況のダイジェスト版を発信していきます。

今回は、12月下旬の巣造りの様子です。巣材運びが見られるようになりましたが、まだ本格的ではなく、巣は整っていません。何年にも渡って同じ巣を使用しますが、巣材の一部が崩れ落ちているので、これから新しい巣材を積み上げていきます。
雪が降り積もった巣の上に巣材を運んで、途方に暮れているようなイヌワシの姿もありました。



イヌワシの巣造り。雪の上に巣材運ぶ。ライブ映像ダイジェスト版2021年12月

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アナグマの真昼の決闘

僕のいる近くの山の急斜面から、何やらガサガサ音がして小石も転がり落ちている。音源を探すとアナグマが3頭いた。2頭が睨み合って頭を上下させた後、相手に噛み付こうとして転げ回っている。1頭が走って逃げると追いかけ、また同じように睨み合って戦うことを繰り返している。

アナグマは日中でもよく姿を見かけるのだが、これだけ大胆に暴れまわっているとよく目立つ。雌を獲得するための雄同士の戦いなのか、単なる兄弟喧嘩なのか、はたまた食物を巡る争いなのか?理由ははっきりしないが、交尾期なので雌を巡る争いの可能性が高い。執拗に追いかけ争っている。
小さな尾根の裏側へと姿を消したが、まだ争いは続いているようでガラガラと小石が崩れ落ちる音が聞こえている。



アナグマの真昼の決闘。ゴロンゴロンとでんぐり返り、まるでレスリングを楽しんでいるようだ

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ニホンジカの子どもが元気に跳ね回る

ニホンジカの出産は5月が多い。しかし、生まれて間もない子ジカは、1日の大半をブッシュの中に隠れて過ごしているので、見つけるのは難しい。母ジカは授乳の時だけ子ジカのところにやってくる。
今年出産したであろう雌ジカを見極めて追跡することで、子ジカを見つけることができる。出産した雌の見極めは、体格が良く昨年生まれの若いシカを連れていない個体を選ぶとほとんど間違いはない。出産は隔年なので、昨年の子ジカがいる雌は今年は出産していない。

6月の半ばを過ぎると、子ジカは母ジカについて歩き回るようになる。こんなに子ジカがいたのかと、びっくりするくらいあちこちに現れる。走ったり飛び跳ねたりすることが楽しそうだ。突然母親から離れて一直線に100mも走り出したと思ったらUターンして全力疾走で戻って行く。
やんちゃ盛りの子ジカは、僕がいることに気づかずに、目の前まで走って来てびっくりして逃げ帰ったり、母ジカより先をどんどん歩いて僕に出くわしたりと無邪気なものだ。近づいた先がクマだったら子ジカの命はない。

子ジカが十分な警戒心と注意力を身につけるまでには、まだまだ時間がかかる。それまで生き残れる子ジカは半数もいないだろう。



冒険心が旺盛な子ジカが遠出。母ジカは子ジカを探す

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ツキノワグマの腐肉食

先月4月22日夕方、岐阜県の揖斐川源流部河岸にツキノワグマがいるのを見つけた。水際で何かを食べている。冬の間に死んで流されて来たニホンジカの残骸だ。もうすでに腐って、毛は抜け落ちている。
腹部のあたりに顔を突っ込んで、残っている内臓や肉片を食べている。人間はこんな腐肉を食べることは到底できないが、クマは平気で食べている。野生動物はたくましい。

1時間余り経ってクマは、すぐ脇のササ藪に入って座った。姿は見えなくなったが、ササが揺れなくなったことから休息しているようだ。15分ほどでササ藪から出て、シカの死体のところに戻って来た。死体をしばらくあさった後、満腹になったためかその横で寝そべった。トビやカラスがやって来て、肉片を横取りしていくので見張っているのだろう。暗くなるまで寝そべったままだった。

翌朝早く、クマの様子を見るためにそこを訪れたが、すでにクマの姿はなかった。一晩かけてシカの残骸を食べ尽くして、去って行ったのだ。そこにはシカの骨と皮だけが残されていた。



ニホンジカの腐肉を食べるツキノワグマ

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子カモシカの死

子カモシカが生まれた翌日から、3日間雨が降り続いた。今年は異常に早い梅雨入りとなった。生まれてすぐに雨続きなので、子カモシカが心配だ。ようやく雨が上がった日の早朝にオレンジ母子の様子を見に行った。
4日前と同じ所で座っているオレンジを見つけた。子カモシカは見えないが、オレンジの陰にいるのかもしれない。しかし、嫌な予感がする。4日間も場所を変えずにいるのは変だ。
やがてオレンジは立ち上がり歩き出した。しかし、子カモシカはいない。オレンジは足早に移動して行くが、子カモシカの姿はない。生まれたばかりの体に降り続いた冷たい雨で、体温を奪われて死んでしまったのだろう。残念だ。

オレンジは昨年も子どもを生んだが、1週間以内にいなくなっている。その子カモシカは、イヌワシに見つかって狙われていたので、オレンジから少し離れた隙に襲われたものと思われた。
自然界で生きることは厳しい。生き延びるためには運も必要だ。



足早に歩くオレンジの足元に子カモシカの姿はない

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オレンジ色のカモシカ6回目の出産

オレンジ色のカモシカは5月14日の早朝に子どもを生んだ。僕がオレンジを見つけた時には、足元にいる子カモシカを盛んに嘗めていた。
30分ほど経って子カモシカはヨロヨロしながら立ち上がったが、急斜面で木や草など障害物が多いので思うようにはまだ歩けない。それでもオレンジはしばらく経ってから移動を開始した。採食しながらゆっくりと斜面を登って行く。子カモシカもよろけながらなんとか離れずについて歩いたが、すぐに灌木に阻まれて進めなくなった。数メートル離れた子カモシカに気付いたオレンジは、慌てて元の場所へと戻った。子カモシカもオレンジの足元に戻った。

その後、オレンジは出産時の胎盤を拾い上げて食べ始めた。もぐもぐと噛みしだきながら少しづつ飲み込んでいった。なかなかの量があるので、食べ切るのに30分以上もかかった。全てを飲み込んだ後、ゲボッとなって苦しそうだった。
今日はこの場所から動かずに夕方を迎えた。



出産直後のオレンジカモシカ母子。胎盤を食べる

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鉄塔営巣のクマタカ。ようやく巣立った

雛は巣立っていた。巣やその周りの鋼材にも止まっていない。鉄塔から飛び出して近くの林の中にいるのだろう。雛は巣立ってしまえば雛とは呼ばずに幼鳥となる。
幼鳥は巣立ち後しばらくの間、巣に戻って親鳥から獲物を受け取ることが多い。戻って来るのを待つことにするが、2時間経っても何の動きもない。3時間ほど経過してようやく、巣から100mほど離れたあたりから幼鳥の鳴き声が聞こえてきた。3〜4声で鳴き止んでしまったが、幼鳥が無事に巣立って近くにいることが確認できたのでほっとした。巣に戻って来ることを信じてさらに待つ。

13時ごろ、鳴き声が聞こえたので巣を見ると、巣の上に幼鳥が戻っていた。尾羽が前回見た時よりさらに伸びて、見た目に立派なクマタカとなっている。巣の上を歩いて、水平に伸びた鋼材の上に移った。そこで親鳥が獲物を運んで来るのを待つことにしたらしい。夕方までその場を動かずに止まっている。
遠くを飛行する親鳥を見つけては数声鳴く。しかし、今日は獲物が捕れないらしく、親鳥は戻って来なかった。

巣と近くの林を行き来しながら過ごしている。今は巣のそばで親鳥が獲物を運んで来るのを待っている

羽繕い

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鉄塔営巣のクマタカ。まだ巣立たない

お盆に西日本を通過した台風の影響で、吹きさらしの巣ごと飛ばされるのではないかと心配したのだが、巣も雛も無事だった。雛は巣の上で落ち着いていて、まだ巣立つような仕草は見られない。尾羽や風切羽はまだ短く、これではもうしばらく巣立つことはないだろう。普通はこのくらいの日齢になると盛んに羽ばたきの練習をして、空中に浮き上がったりするのだが、この雛はほとんど羽ばたき練習をやらない。

その原因はこの巣の形状にあるのかもしれない。普通は直径1m近い丸い巣が樹木の枝に造られる。クマタカの雛はそこで思い切り翼を広げて羽ばたき練習をする。しかし、この鉄塔の巣は待避所のL字になった細長い網目状のところに細長く巣をかけている。その上、手すりのようになった鋼材が周りを囲んでいるので、翼を広げて羽ばたくと翼がその鋼材に当たりそうだ。

巣立ちが近くなると、巣から離れた枝先に止まったり上の枝に飛び移って止まったり、首を伸ばして巣の外を見て飛び出したそうな行動をしたりするものだが、この雛は全くそういう行動も見られない。
これらの行動をするかどうかは雛によって個体差がある。樹上営巣の雛でもあまり羽ばたき練習をしない個体もいるので、巣立ち前の行動が見られないのが鉄塔営巣の影響なのかどうかはわからない。

この雛の巣立ちは、8月末か9月に入るかもしれない。巣立ちは本州では7月中旬頃、北海道でも7月下旬から8月上旬とされているから、この鉄塔営巣のクマタカは遅い巣立ちの日本記録になるかもしれない。
鉄塔営巣と遅い巣立ちの両方で日本記録樹立となりそうだ。しかし、巣立ちが遅いのは、クマタカの生息状況が良くない場合が多いので喜んではいられない。



鉄塔に営巣するクマタカの育雛。親鳥が今回もモモンガを運んで来た

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オレンジカモシカ、今年は出産せず

オレンジカモシカは、2015年に初めて子どもを産んでから4年連続で出産し、子カモシカを育てて来た。しかし、5年目の今年は出産しなかった。
そのせいか独り立ちして暮らしている昨年の子カモシカが、時々オレンジのところに戻って来て一緒に行動している。

7月のある日、昨年の子カモシカがオレンジを見つけていつものように近づいて行った。子カモシカは早足でオレンジのところまでルンルン気分で駆けて行った。ように見えた。オレンジの直前で立ち止まり、そこから先は恐る恐るオレンジの様子を見ながら近づこうとしている。その時、オレンジが下から頭を振り上げるようにして「近寄るな!」というような行動をとった。子カモシカは呆然として立ち尽くしている。オレンジは子カモシカと反対方向へ採食しながらゆっくりと歩き始めた。子カモシカは悔しそうにススキに八つ当たりした後、オレンジとは反対方向へゆっくりと歩を進めた。

もう別々に暮らす時期だということなのだろうか?人間的には、時々戻って来てしばらく一緒に暮らしていてもいいのにと思えるのだが、カモシカの世界ではそうではないらしい。厳しいが、そこには野生で生き抜くための知恵が隠されているのだと思う。



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