伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年5月15日 繁殖失敗

巣には雛も親ワシもいない。
繁殖は育雛中に失敗した

前回雛を確認したのは5月1日だ。撮影機材などを持たずに身軽に巣の見えるところまで行った。遠くてモヤモヤして雛が1羽なのか2羽なのかはっきりわからない。少なくとも1羽が動いているのがわかる。
やがて母ワシが給餌を開始して、雛は獲物の肉片を受け取っている。順調に育っている様子だった。

5月15日、繁殖状況を確認に行くと巣には何もいないように見える。巣までは遠いのと枝葉がかかっているので見えづらい。親ワシがいれば見えるはずだがいない。枝葉の向こうに白っぽいものが一部見えるが動く様子はない。
白っぽいものが動き出すのを期待して夕方まで待ったが動くことはなかった。親ワシたちも巣に出入りすることや近くを飛行することさえなかった。

繁殖は失敗している。
この2週間の間に何らかの原因で雛は死んでしまった。獲物が捕れなかったのだろうか、それともクマに巣を襲われたということもあるかもしれない。
せめて繁殖失敗の原因を知りたいが、もう知ることはできない。
今年も若ワシの飛行する姿が見られると信じていただけに非常に残念だ。

両親ワシは元気に飛行している姿を観察できた。
来年は繁殖成功することを祈る。

==番組のお知らせ==============

明日の「ダーウィンが来た!」は、琵琶湖のカワウがテーマです。
全国で人との軋轢が起きていることで知られるカワウですが、カワウの言い分にも耳を傾けてみようというコンセプトで制作されました。
撮影には、たくさんのカワウ研究者が協力し、イーグレット・オフィスも協力しました。ぜひご覧ください。

2025年5月11日(日)
午後7:30〜午後8:00

ダーウィンが来た!
「波乱万丈!水中の名ハンター カワウ」 https://www.nhk.jp/p/darwin/ts/8M52YNKXZ4/episode/te/4MMKNRM4JZ/

==イベントのお知らせ==============

本日、5月10日(土)、米原市主催のイベントにおいて、須藤一成が「伊吹山の動物」と題してミニ講演をおこないます。
他にも音楽ステージや月茶会など、楽しい企画がいっぱいです。
入場無料・予約不要。ぜひお越しください。

ティピの自然教室(森の方舟)
12:00-12:40
「伊吹山の植物」高橋滝治郎さん
13:00-13:40
「伊吹山の生き物」須康一成
14:00-14:40
「コンポストで土づくり!」ウエノチシンさん

2025年5月10日11:00〜16:00
伊吹薬草の里文化エンター・芝生広場

伊吹山植生復元プロジェクトイベント
「I am earth~伊吹山の未来を考えることは、地球の未来を考えること~」
https://www.city.maibara.lg.jp/mtibuki/syokusei_project/22194.html

第9回伊吹山イヌワシ観察会 参加募集間もなく終了

「第9回伊吹山イヌワシ観察会」にたくさんの参加申し込みをいただきありがとうございます。
あと数名で定員となります。定員になりましたら受付は終了します。

次回以降の開催予定は以下の通りです。日程の変更や開催の中止などがあるかもしれません。開催の案内を約1ヶ月前にイーグレットのブログ等に出しますので、参加希望の方はそちらから申し込んでください。

2025年6月以降の開催予定日:6/15、7/13、8/17、9/23、10/19、11/3

伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年4月下旬



今年2回目の巣の観察をした時、雛は孵化後2週間程度だった。順調に生育している。
巣の観察はイヌワシに警戒されないようにかなり遠くからなので、今回もボヤボヤでモヤモヤの映像でお届けします。

この日、2羽の雛がいるのを確認できた。1番目の雛と2番目の雛はかなり大きさが違う。2番目の雛は小さく母ワシが給餌する時に僅かに頭部が見えるだけだった。それでも1番目の雛が満腹になってから何度も給餌を受けた。
母ワシが巣から出た後、父ワシが巣に入った。雛を抱こうとしているのだが、どのように対応していいか分からずに戸惑っている。かなり時間をかけてようやく1番目の雛が懐に入った。2番目の雛は左端から動かない。このままでは保温されない。

母ワシが戻り、父ワシは巣から出た。母ワシもやはり2番雛を構うことはしない。巣の中央で1番目の雛を懐に入れて保温している。2番目の雛はかなり衰弱しているのかもしれない。

4月27日は伊吹山ドライブウェイ沿いから観察した。雄ワシは何度も出現して巣で待つ雛と母ワシのために獲物を探しているが、今日は獲物にはありつけなかった。
少し暖かくなった昼過ぎには、母ワシも巣から出て父ワシと一緒に飛行しているのが観察できた。
母ワシの出現が暖かくなった時間帯だけだったので、育雛は順調と推測した。

翌28日に巣の確認に行ったのだが、アプローチが長いので重い機材を背負って時間がかかってしまう。予想より早く雨が降り出した。白く霞んで遠方は見えなくなった。今日の確認は諦めてずぶ濡れになって帰路を急いだ。

第9回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

伊吹山から北方を望む。
北の山々はまだ雪に覆われている。右奥が白山

伊吹山から北方を望む。
北の山々はまだ雪に覆われている。右奥が白山

「第9回伊吹山のイヌワシ観察会」を2025年5月25日(日)に開催します。

2024年に巣立った幼鳥サーナは、今年2月に伊吹山を離れて独り立ちしました。
その後イヌワシペアは巣造りから産卵、孵化へと順調に繁殖を続けています。観察会の時には雛は生後45日くらいになっています。ちょうどニホンジカの出産シーズンで子ジカが獲物となることが多い時期です。
親ワシが獲物を運ぶ姿が観察できればと期待しています。

この冬は雪が多かったので、まだところどころに雪が残っています。観察会の時には雪も消えていると思いますが、天候によってはかなり寒くなりますので防寒は十分に準備してお越しください。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第9回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内

参加申込書
参加申込書(Excel)
参加申込書(PDF)

伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年4月18日

昨日17日に南アのカラハリから日本に戻りました。空港からの帰路、その足で山へ出かけた。イヌワシの巣を遠くから見られるのではないかと見当をつけていた場所へと山を歩きました。

案の定、巣が見えた。雌ワシが立ち上がり何かゴソゴソと動いている。その脇で白いものが蠢いている。雛と給餌する雌ワシだ。
「よーし、やったー。」今年も雛が孵化している。白く蠢くものは2ついるようにも見えるが、どうにも遠くてそれ以上ははっきりと確認できない。今年の繁殖は抱卵から、次の段階の育雛に入ったことは間違いない。

産卵するかどうかの第一段階をクリアし、雛が孵化するかどうかの第二段階も突破した。あとは獲物が順調に確保できて雛が育つことを祈るだけだ。

今回はその映像は撮影できていない。今後は昨年同様、いや昨年以上のモヤモヤ映像で繁殖状況をお伝えすることができるならお伝えしたいと思います。

昨年、イヌワシの繁殖の妨害とならないように設置したフェンスは、今年さらに貴重な植物を守るために延長される予定です。もともと希少植物保護エリアとして立ち入りが禁止されている場所を守るために延長されます。
待避所内(ガードレールの外側に出ない)でのルールを守った撮影をお願いします。

African wildlife April 6-8, 2025



Nossobキャンプで宿泊予約が取れたので2泊3日で行くことにした。カラハリの南アのゲート(Twee Revieren)から162km、オフロードで水溜りもあるからかなり時間がかかる。特に今回はこの期間中が一番よく雨が降った。
いつものマーシャルを撮影してからゆっくり行けると考えていたのが、朝の道路状況を見てあまりゆっくりはしていられないと判断した。水たまりがかなり広く深くなっている。

Martialの撮影をほどほどに先を急いだ。予想通り水たまりが多く、200m以上も続いているところが何箇所もあった。そんなところは道から外れて迂回路ができていたが、その迂回路でさえぬかるんでいてぬるぬると滑り、ハンドルも効かないような場所もあった。
迂回路より水の中を行ったほうがいいのではと思い、水たまりに入って行ったこともあったが、深くなってバックする羽目になった。スタックせずに到着できるのかかなり不安になる。

途中で動物を探すこともあまりできなくなって、道路の状況を確認することに集中していた。ピクニックサイトを過ぎたあたりからは道路状況もまだマシになって少し周りを見る余裕もできてきた。Tawny EagleとBateleurがものすごく多いエリアがあった。
しかし、いつものエリアを過ぎてからはMartialに出会えていない。一度だけぬかるみを通過中に飛んでいたのがMartialだと思うが十分確認ができなかった。

雨で増水している初めての道でハラハラドキドキの連続だった。無事16:30くらいにNossobキャンプに到着してホッとした。
ここにはレストランがなかった。当然あると思って確認していなかった。ここではレストランで食べるつもりだったので急遽ショップで買い出して何か作らねばならなくなった。と言っても選択肢はそれほどない。いつも通りパスタだ。パンも買った。卵を見つけたので購入して、ゆで卵にしておけば明日からの昼間に持って行ける。
翌日はさらに北へ車を走らせたが、雨で動物たちの動きもなく早めにキャンプ戻った。

雨が降り続くので帰りの3日目もゆっくりとはしていられない。少しだけ撮影しながら帰りを急いだ。行きに通った道路はさらに増水しているから、途中から丘を横断してAuob川へ出る道にした。

今回のNossobキャンプ旅は雨に降られて動物は今ひとつだった。オフロード走行は緊張しながらも楽しむことができた。

おまけで、最終日の映像を追加しました。
翌日早朝の出発に備えてパッキングがあるのであまりゆっくりはしていられない。それでもいつもの造巣Martialペアも幼鳥も出て来てくれた。
特にMartialの幼鳥は偶然とは思えない巡り合わせだった。ちょうど僕が通りかかった時、幼鳥が200m離れた木から飛び立って、僕が慌てて車を止めた横の木に止まったのだ。幼鳥がさよならを言いに来てくれたとセンチメンタルになってしまいそうだ。ただの偶然だとは分かっていてもすごいタイミングだ。幼鳥が飛び立つのが数十秒遅かったら逆光のその方向は見逃していただろう。
今回撮影に付き合ってくれたMartialペアと幼鳥に最終日に揃って出会えてよかった。

アフリカで野生動物たちを見ていると、身近でじっくりと観察できるだけに日本では気づかなかった野生動物と人間の生活について考えさせられることが多い。
ライオンやすべての野生動物が泥水を飲んで暮らしているのに、人間はいつから泥水を飲めなくなってしまったのだろう。泥水を飲まないことで病気のリスクを下げ長寿を得たのかもしれない。
人間が野生動物や自然の一員として振る舞うことができなくなったのは、泥水を飲まなくなった頃からではないだろうか。野生動物の中に入れなくなったとしても、私たちは野生動物や自然と共に暮らしていく方法を考えなければならないと思う。
私たちは自然環境を破壊する力を持ち過ぎたが、その力をセーブできるのも我々人間だけなのだから。

皆さんにはたくさんのコメントで元気づけられながら、今回のカラハリ撮影行を無事に終えることができました。
ありがとうございました。
日本に戻ったら今度は伊吹山のイヌワシペアの動向を観察して状況をお知らせしていきます。
「伊吹山のイヌワシ観察会」を5月中下旬に予定していますが、今後のイヌワシの状況を見て実施の有無を連絡させてもらいます。

伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年4月12日

伊吹山のイヌワシが抱卵に入ったことはすでにお知らせしましたが、その後、僕がアフリカに来たことで繁殖状況の報告ができていません。今年の営巣場所が観察しづらい場所であり、確実な情報を得ることが難しい状況ですので無理せず追跡をしていきます。

そのような状況の中で、イーグレットオフィスから朗報が入りました。
4月8日に巣への出入りが確認でき、繁殖は継続していることがわかりました。今年の産卵は早ければ2月24日と推測されることから、4月8日に雛が孵化している可能性があります。
雛が孵化しているかどうかは、巣が直接見えないので餌運びを確認する必要があります。また無精卵で雛が孵化しないという可能性もあります。

今後新たな情報が分かりましたらお知らせします。

African wildlife April 9-10, 2025



狩りをする動物たちが食糧を得るのは大変だ。カラハリでは樹木やブッシュが少ないので獲物を探しやすい。森林に覆われた日本では獲物を見つけるのが難しい。
Martial Eagleは獲物となる相手を頻繁に見つけているのがその行動から分かる。特定の方向を首を伸ばしたり頭を左右に動かしたりしながら注視するときは獲物となる動物を見つけている可能性が高い。
見つけたらすぐに攻撃を仕掛けるわけではない。相手を見つけやすいということは相手からも見つかりやすいということだ。正面から挑んでは無理だろう。
近づいて来る時は通り過ぎるのを待って攻撃を仕掛けるのが賢明だろう。そして近くに逃げ込む巣穴や灌木などがないことも重要だ。これらの見極めは経験だ。未熟な幼鳥は見極めができないのでやたらと攻撃を仕掛けては失敗している。

今回見たOstrich親子は雌雄の親が雛を挟むようにガードしていた。そしてMartialに最も近づいた所で木の上に止まっているのを見事に見つけ出した。
Martialにチャンスはなかった。無理に攻撃を仕掛けることもなかった。
たくさんの雛を連れたOstrichの親子を見ていると、これをMartialが見つけたら簡単に狩りが成功するだろうにといつも思っていたのだが、そんなに簡単なことではないことが今回の一部始終を見てよく分かった。

植物が少ないカラハリでは獲物を見つけやすいが、獲物からもいち早く見つけられやすく、襲いかかるにも隠れるものがない。これはこれで大変なことなのだ。
日本のイヌワシが森林の多い所で獲物を探して狩るのが大変なのと同じくらいのリスクがあるかもしれない。カラハリでも日本でもたくさんの動物がいないとチャンスは巡って来ないのだ。

日本から遠く離れた全く違う環境のワシのことを知ることでより深く日本のイヌワシのことを知ることができた。

映像を撮影することを主目的として来ているが、動物たちのことをいろいろ知りたくなるから映像が撮れなくてもそこに居続けてその動物の行動を見てしまう。サファリではいろんなたくさんの動物に会うために、1つの動物のところに長居することはほとんどない。僕は誰もが見向きもしない遠くのMartialを見続けている。高く高く上昇して飛び回っているのはどのくらいの範囲だろうと1時間以上もゴマ粒より小さいMartialを双眼鏡で追い続けたり、映像には映らないような遠くに止まっているのを何時間も待って次の行動を観察したりしているので、通りかかる人たちにあの人は何をしているのだろうと不思議に思われている。
何か大物(LionやCheetahやLeopardなど)がいるに違いないと思われて、何を見ているのかと尋ねられる。Martialが近くにいる時はすぐに納得してもらえるが、遠い場合だと説明のしようもない。
遠くを飛んでいる時などは、それで見失ってしまうことも多かった。
車に「バードウォッチング お先にどうぞ」の目立つ看板を付けておくのがいいのかもしれない。