畑に現れ作物を食べるサル

土砂降りの雨の中、家の前の畑にニホンザルが現れた。当然のことながら畑の作物を目当てにやって来ている。さっそく畑の中で何かを食べ始めた。1頭が一抱えもある大きなカボチャを見つけて食べ始めた。まわりのサルたちも羨ましそうに少し距離を置いて見ている。右側から大きな雄ザルが近づいてくるのを見つけると、そのサルはカボチャを置いて立ち去った。大きな雄ザルはうまそうにカボチャにかぶりついた。
その雄ザルが去るとすぐに、別のサルが来てカボチャを食べ始めた。まわりを盛んに気にしている。人間への警戒と、仲間のサルの動きを見張っている。少し大きめのサルが近づいて来るのを見ると、おどおどとして落ち着きがなくなる。いよいよ逃げ出す時、さっとカボチャを抱え上げて、あたふたと薮の中へ消えた。
サルたちの行動を見ているのは楽しいものだが、農家の人たちの苦労を考えるとこのまま見過ごす訳にはいかない。何より問題なのは、このまま放っておくとサルたちの行動はますますエスカレートし、家の中にまで入って食物を取っていくようになる。このようなサルは有害獣のレッテルを貼られ、いずれ捕殺されてしまうことになる。
そうならないことを願いながら、僕はロケット花火を打ち上げてサルを畑から追い払った。



カボチャを食べる。逃げる時にはカボチャを抱えてあたふたと

イノシシの巣とウリ坊

先日の11日、クマが何度も出現したことはすでに書いたが、その日はイノシシについても新しい発見があった。
僕の背後十数メートルの所でガサガサッとススキをかき分けて何かが逃げる音がした。姿は見えなかったが、大型の獣であることに間違いはない。ニホンジカやカモシカなら警戒声を上げるのだが、声はまったくしない。おそらくクマかイノシシだろう。逃げた方向が見えるところまで行って探すが、もはや何もいない。さっき獣が逃げ出したあたりのブッシュの中に、ススキを刈り取って低く積み上げたようなものがあるのに気付いた。山歩きしている時に、このような植物を敷き詰めたものを何度か見たことがある。イノシシの休息所か寝床なのだろうと思って大して気にも留めなかったが、考えてみると毎日同じ場所で休息する訳でもないのに、こんなに大仰にススキを刈り集めて休憩場所を造るだろうかという疑問が湧いてきた。今回のものはススキが新鮮でかなり新しい。これは休息所ではなく巣ではないかと思い始めた。それも今使用しているものである可能性が高い。
この巣?を何度も横目でちらちらとチェックしながら他の動物を探して撮影を続けていた。16時過ぎに数頭の幼いウリ坊がこの巣?の上をうろついているのを発見。間違いなくこれは巣であった。1〜2分でウリ坊たちは巣の中へと入っていった。
巣はブッシュの中にあるので、ウリ坊たちは草の隙間からちらちらとしか見えず、うまく映像に捉えられなくて残念だった。しかし、イノシシの巣かどうかがはっきりしたのは良かった。
帰り際に巣の近くを通ると、ウー、ウーという威嚇のような声が聞こえた。もし親が戻って来ているとしたら非常に危険だ。いざとなったら飛び出して襲いかかってくるかもしれない。僕は足早にその場を立ち去った。



ススキ原の中にある巣とウリ坊

ツキノワグマとニホンジカのニアミス

今日は朝から獣の姿が見当たらない。いつもならあちらこちらでニホンジカが採食しているのだが…
8時過ぎになって僕から80mほどのところにツキノワグマが現れた。僕がいることには気付いていない。そのうちに僕の臭いを感じて一瞬顔を少しだけこっちへ向けた。それでもクマは動揺することなく悠々と歩いて僕の視界から消えた。
朝からシカの姿が見えなかったのは、近くにクマがいたから姿を隠していたのかもしれない。子連れの場合はなおさらだ。クマが視界から消えてしばらくしてから、ニホンジカがぽつぽつと現れ始めた。採食したり座って休息したりとくつろいでいる。
15時頃に、今度は少し小振りな3〜4歳のクマが現れた。アリの巣を見つけては石をひっくり返してアリを食べている。移動しながら次々とアリの巣を襲っている。近辺にいるシカは早くからクマに気付いてクマの動きをチェックしている。クマが雄ジカの近くにきた時、雄ジカは立ち上がり少しバックしてクマと距離をおく。雄ジカはクマから目を離さないが、遠くへ一目散に逃げることもしない。クマとの距離が縮まるとまた少し後ろへ下がる。クマのほうはシカにはまったく興味を示していない。アリの巣を探して歩きまわっているだけだ。この状況でシカの成獣に襲いかかったところで軽くいなされてしまうだけだ。
今度は1歳の雄ジカとその母親のいる近くを通った。やはり30mほどの距離になるとシカの母子は少し移動してクマとの距離を保つ。クマのほうはせっせとアリの巣を探しながら斜面を登って行く。下方の沢に小さな2歳のクマが現れ、同じようにアリの巣を探しながら斜面を登って行った。
これら2頭のクマが見えなくなった頃、尾根近くで雄ジカが首を伸ばして警戒体制をとっている。その視線の先には大きなクマがいた。クマが近づくと雄ジカは後ろへ下がる。やがて雄ジカは尾根裏へと消えた。
今日はクマとシカのニアミスが何度もあった。しかし、シカの成獣を襲うことはかなり難しいだろう。特に今日のようにクマが斜面の下にいたのでは襲いかかることはまったく出来ない。もしシカの成獣を捕えるとしたら、クマは斜面の上側にいてシカがクマに気付かずにかなり近くまで来ることが必要だ。シカのほうもそのことは十分に心得ていて、30m程度の距離があれば逃げ切れると確信しているようだ。



クマの接近に少しずつ後退するシカ

全速力で巣穴へ逃げ込む子ダヌキたち

子ダヌキたちはだいぶ大きくなった。毛色は茶色っぽくなり、目のまわりが黒っぽいタヌキ模様になっている。
10時頃に親ダヌキが巣穴の前に来ると、子ダヌキたちはすぐに巣穴から出て来た。親ダヌキについて歩く。巣穴から離れてどんどん歩いて僕からはブッシュで見えなくなった。しばらくすると子ダヌキだけが次々と戻って来た。最初はゆっくりと歩いていたが、巣穴まで7〜8mになると急に慌てて全力疾走で巣穴へ飛び込んでいく。子ダヌキにしてみれば、恐る恐る遠出をしたものの巣穴が見えると一刻も早く安全地帯に逃げ込みたくなるのだろう。その慌てぶりがなんともおかしくて、見ていると吹き出してしまいそうなのだが、子ダヌキたちは真剣そのものだ。
親ダヌキが戻ってくるたびに、子ダヌキは親ダヌキについて遠出する。そしてまた慌てふためいて戻って来るのだった。こんなことを繰り返しながら、子ダヌキたちは日に日に行動範囲を広げていくのだろう。



巣穴は子ダヌキにとって安全地帯だ。一目散に逃げ込む