第4回伊吹山のイヌワシ観察会

朝8時、米原駅を出発。曇りだが空は比較的明るい。普段なら伊吹山が見える場所を通るが、山のほうはどんよりと暗く雲がかかっている。
今年はドライブウェイのすぐ近くに営巣しているので、少しの霧の晴れ間があればイヌワシが姿を現してくれるかもしれない。なんとか視界が得られることを祈るしかない。

今回は米原市の平尾市長も観察会に参加され、一緒のバスに乗って伊吹山へ向かいました。出発前に市長からご挨拶をいただき、米原市のシンボル的な存在のイヌワシと伊吹山の自然環境への市長の熱い思いを聞かせていただきました。

米原市の平尾市長からご挨拶を頂いた

9:45頃、山頂駐車場に到着。まずはトイレに行く人と観察地点に向かう人に分かれて皆がバラバラに出発。トイレの方向と観察地点の方向を伝えたが、20m先が見えない霧の中で全員が観察地点に到着するのかさえ心配になってきた。

皆が観察地点に到着してホッとしたものの霧が晴れる兆しはない。巣は見えないが150mほど下で小雨と霧の悪天候に耐えて抱雛を続ける雌ワシに思いを馳せながら、我々もイヌワシと同じ空間を共有して待ち続ける。

霧の中での観察会

N Uさんが20回分ほどの入山協力金を投入されたのに驚きと感謝

残念ながら霧が晴れることなく正午前に観察を終了。雨足が強まって天候の回復は見込めないと判断して下山。麓にある伊吹山文化資料館でイヌワシ幼鳥の剥製(2019年に巣立ち後半月ほどで落鳥)を見学後、レクチャールームでイヌワシとアフリカの動物の話をしました。

イヌワシと野生動物の話

イヌワシ幼鳥の剥製展示

帰りにも伊吹山はすっぽりと雲の中に入ったままでした。次回こそは天候に恵まれ、元気に飛び回る幼鳥の姿が見られることを期待して、我々は伊吹山を後にしました。

伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年5月5日 雛の姿を確認



新緑が眩く夏鳥たちの囀りが賑やかな季節、雛は孵化後25日程度。そろそろ雛の姿が遠くからでも確認できるかもしれない。

抱卵期から育雛初期には、雄ワシは巣から少し離れたところに止まって周辺を監視していることが多かったが、今は雛の食欲が旺盛になって狩りに忙しいらしく、周辺に姿は見当たらない。
しばらく経って雄ワシが現れた。下を見て丹念に獲物を探している。今日はまだ獲物にありついていない。

雌ワシが巣の上に立って雛へ給餌を開始した。雛の姿が一瞬でも見えるかもしれない。超望遠レンズ越しに目が離せない。
給餌が一段落した頃、白い綿毛に覆われた雛の翼が一瞬巣の上に現れた。体のバランスを取るために翼をバタつかせているところを見ることができた。結構大きくなっている。黒い羽毛が伸び始めているようにも見えるが、遠くて不鮮明な画像なのではっきりと確認はできない。

巣から400mほど離れたところでツキノワグマが木に登っていた。芽吹き始めた新芽をガンガン食べ続けている。イヌワシの生息地にはクマも多い。イヌワシとクマの分布はほぼピッタリと一致している。どちらも豊かな自然環境が残された地域に暮らしている。スギやヒノキの人工林が増えた地域からイヌワシもクマも姿を消しつつある。

午後になって雄ワシが姿を表した時、獲物を食べてそのうが大きく膨れていた。巣への出入りを確認できなかったが、獲物を巣へ運んだ直後なのかもしれない。
雄ワシはお腹がいっぱいになっているが、食欲旺盛な雛がいるので獲物を探して忙しく飛び回っている。
探餌飛行を続けていた雄ワシが急降下を開始した。沢部の落葉広葉樹林の中へと降りて行った。最後はスピードを少し落として翼を少し広げ、エレベーターのように真下へ降下した。このような襲い方をするのは相手が哺乳類のことが多い。
林の中に消えてから待つこと20分。林の中から現れた雄ワシは脚にノウサギをしっかりと掴んでいる。手頃な風が斜面を吹き上げている。雄ワシは上昇気流に乗ってどんどん高度を上げて巣へ獲物を運んで行った。

今日は2回も獲物を捕獲した。雌ワシの給餌の時に雛の姿を3回見ることができた。元気に動き回って順調に育っている。