丘の上のアナグマハウス 5月16〜31日

巣穴に興味を持つのは、いつものようにタヌキとアナグマだ。アナグマは、巣穴に溜まった落ち葉や砂を外へと掻き出して、巣穴をいつでも使えるように手入れしている。一方、タヌキは自分では巣穴を掘らないので、アナグマが綺麗に手入れした巣穴の様子を見ては去って行く。
巣穴は、子育てやねぐらとしての利用など、必要な期間だけ利用する。そのうちにまたどちらかが居着くことになると思うが、アナグマが造った巣穴であっても、先に利用を始めたほうに権利が発生するのだろうか?

ネズミが子どもを連れて現れた。小さい子ネズミが、母ネズミに遅れまいと一生懸命駆けている姿が可愛らしい。
また、子どもを連れたイノシシも現れた。こちらは何か慌てた様子で足早に移動している様子だった。その間に、野犬2頭が近くをうろついているのがカメラに映っていて、イノシシの子どもを狙っているのではないかと思われた。
3日後に、同じ個体と思われるイノシシが現れた時には、子どもを連れていなかった。野犬にやられてしまったのかもしれない。

その他には、テンやカモシカ、ニホンジカが巣穴の近くを通過して行くのが見られた。



オレンジカモシカがアナグマを威嚇

オレンジカモシカの母子は元気に過ごしている。子カモシカの動きはしっかりとしてきた。これだけ力強く動けるようになると、イヌワシに狙われる心配はほぼ無くなった。しかし、ツキノワグマに襲われる危険性はまだ当分続く。
先日、やや大型の白い犬が山の中にいるのを見つけた。狩猟犬と思われるが、飼い主からはぐれて野生化している。その日にも、ニホンジカの子どもを捕まえたようだった。母ジカがその犬のまわりを回って、心配そうに様子を見ていた。

子カモシカには、まだまだ危険がいっぱいだ。母親のオレンジカモシカにピッタリとくっついて歩き、すぐにお腹の下に入ろうとする。すでに恐ろしい思いをしたのかもしれない。子カモシカがお腹の下に入ってくるので、オレンジは歩きにくそうだ。

オレンジが不意に立ち止まり、草むらにいる何かに威嚇し始めた。子カモシカもオレンジの横に来て、その辺りを見つめている。オレンジが飛びかかるように威嚇した時、草むらからアナグマが飛び出して転げ落ちるように斜面を下った。アナグマは、少し下りたところで草の中から顔を出してオレンジのほうを見ていた。

カモシカは、普段はおっとりとして大人しく見えるのだが、けっこう気性は荒い。以前、通りかかったキツネを追い払ったり、ツキノワグマを追いかけているのを見たことがある。


丘の上のアナグマハウス 4月21〜30日

巣穴のまわりにはいろんな動物がやって来る。今回新たにハクビシンとニホンリスが出現した。巣穴を利用するタヌキやアナグマは、巣穴に興味津々で、覗き込んだり少しずつ奥へと入ってみたりしながら、におい付けをして去って行った。
巣穴は、カマドウマが集団でねぐらにしている。夕方暗くなると穴から出て、四方八方へと分散して行く。明け方には巣穴へと戻って来る。これが毎日繰り返されている。
普通にビデオを再生している時には、カマドウマに気づかなかったのだが、50倍速くらいで早回しすると、続々と巣穴から出て来たり帰って行くのが見えてくる。
カマドウマを狙って、コウモリが毎日のようにやって来る。カマドウマを捕食しているのはコウモリだけでなく、タヌキも食べていた。
タヌキは4月18日にも現れた、1頭が左後脚を怪我している夫婦だ。恐る恐るではあるが、体全体が隠れるまで巣穴に入って様子を見ていた。


丘の上のアナグマハウス 4月16〜20日

4月16〜20日の間にキツネ・アナグマ・ノウサギ・タヌキが巣穴近くに現れた。
キツネは4月11日の個体と同一で、右前脚を怪我している。
アナグマは、夜と朝に出現した。巣穴のまわりに下腹部を擦り付けるようにマーキングし、巣穴を覗き込んで去って行った。
ノウサギが丘の上を通過した。
夫婦と思われるタヌキが交互に巣穴に入ってしばらく様子を見て去って行った。巣穴をかなり気にしている。


丘の上のアナグマハウス 4月11〜15日

伊吹山山麓にあるアナグマの巣穴を無人カメラで観察。
巣穴は10mほど離れたところにもう1つあって、近くにはさらに2〜3ヶ所、崩れて塞がりかけている穴もある。これらの穴は地中で繋がっている。
アナグマは、地中深く掘り進んだ穴の中で冬眠をして子どもを産み育てる。
今年は利用しなかったが、アナグマはもちろん、巣穴を利用するキツネやタヌキも時々様子を見にやって来る。

4月11〜15日の間にヤマドリ・キツネ・カケス・ニホンジカ・ネズミ類・アナグマが巣穴近くに現れた。
キツネは巣穴が気になる様子で、中を覗き込んで去って行った。右前脚を怪我している。先端部分が切断されている。ニホンジカの有害捕獲のために仕掛けられたくくり罠にかかり、暴れまわって脚先がちぎれて、どうにか抜け出して来たのだ。近年、こうした脚先のない野生動物をたびたび見かけるようになった。
アナグマは朝明るくなって現れた。巣穴を気にして覗き込んでいた。


アナグマの真昼の決闘

僕のいる近くの山の急斜面から、何やらガサガサ音がして小石も転がり落ちている。音源を探すとアナグマが3頭いた。2頭が睨み合って頭を上下させた後、相手に噛み付こうとして転げ回っている。1頭が走って逃げると追いかけ、また同じように睨み合って戦うことを繰り返している。

アナグマは日中でもよく姿を見かけるのだが、これだけ大胆に暴れまわっているとよく目立つ。雌を獲得するための雄同士の戦いなのか、単なる兄弟喧嘩なのか、はたまた食物を巡る争いなのか?理由ははっきりしないが、交尾期なので雌を巡る争いの可能性が高い。執拗に追いかけ争っている。
小さな尾根の裏側へと姿を消したが、まだ争いは続いているようでガラガラと小石が崩れ落ちる音が聞こえている。



アナグマの真昼の決闘。ゴロンゴロンとでんぐり返り、まるでレスリングを楽しんでいるようだ

脚を失った野生動物。くくり罠との関係

近年、脚の先端部が無い野生動物を時々見かける。キツネやタヌキ・アナグマなどの中型哺乳類のほか、大型のニホンジカも片脚のないものがいた。こうした野生動物をちょくちょく見かけるようになって、その原因として気になったのがくくり罠だ。

ニホンジカが増えて農作物や林業の被害、山の植物が食べられて裸地化するなど深刻な被害が発生している。それに伴ってニホンジカの有害捕獲が盛んに実施されるようになった。銃器や檻、くくり罠などで捕獲する。くくり罠はワイヤーなどで動物の脚を締め上げて捕獲するのであるが、目的のシカだけではなくいろんな動物を捕獲してしまう。実際にタヌキがかかっているのを見たことがある。また罠の近くで死んでいるキツネやタヌキも見た。

くくり罠で誤捕獲した場合、生きたまま逃してやることは難しく、逃がせたとしても締め上げられた脚は骨折や脱臼などで使えなくなっている。
脚を切断して逃げてどうにか生き延びてきたのが、今回の映像に映っている動物たちではないだろうか?自然状態では、脚を切断するような怪我というのは、めったに起こるものではないだろう。

くくり罠は簡単に設置できるので相当な数が仕掛けられている。罠は改良が加えられて誤捕獲しにくいような工夫がされてきているが、目的の動物以外のものが捕獲される可能性はまだまだ高い。特定の動物を捕獲するはずが、無差別的な捕獲となっている。



アナグマ・キツネ・タヌキ・ニホンジカの脚先がなくなっている。キツネは右前脚と左後脚がない

アナグマ、雨上がりの田んぼで餌探し

朝からいい天気なので山に登って林の中を散策した。春先の新緑の林は気持ちがいい。夏鳥たちの声が賑やかだ。キビタキが近くの木にやって来た。鮮やかな黄色い背中がよく目立つ。時折小さな虫を捕まえて食べている。

沢を挟んだ対岸から岩が転げ落ちる音が聞こえてきた。何か動物が歩いているのだろう。音のする方向を探す。いたいた、ツキノワグマだ。急峻な斜面を登っている。クマはすぐに林の中に入って見えなくなった。

午後からは雲行きが怪しくなってきた。下山途中から雷雨となった。スギの木の下で雨宿りするが、ここも間も無く雨漏りし始めるだろう。車まではもう少しなので、雨が小止みになった時に駆け下りる。

家に戻って前の田んぼに目をやると、何かがもぞもぞと動いている。アナグマだ。鼻先を地面に突っ込んで地中にいるミミズや昆虫などの幼虫を探して食べている。ちょこまかと忙しく動き回ってほとんど動きが止まらない。行動を見ていると、鼻先で地面を触っただけで地中に何かがいるかどうかを見分けているようだ。いない場合はすぐに別の場所へと鼻先を持って行く。いるとみれば鼻先を深く地面に突っ込んで探す。

土の塊を鼻先で砕いた時に、トンボのヤゴのようなものが出て来たのが見えた。アナグマはすぐにそれをくわえてパクパクと食べた。何を食べているのかこちらからは見えないことが多いが、時々慌てて何かを捕まえて食べている。
アナグマが見えない所へ去ってすぐに、別の田んぼに別のアナグマが現れた。同じように食物を探して歩き回っている。

雨上がりはアナグマの食物探しに都合がいいことがあるのか、それとも2頭が出て来たのは偶然なのか、何れにしても2頭のアナグマをじっくりと観察できた。



真上から覗かれていることに気づかないアナグマ

山からの帰り、薄暗くなり始めた林道を車で走っていると前方の林道脇からアナグマがこっちに向かって走り出した。アナグマは車の少し手前で危険を察知して、林道のコンクリートの法面から下を覗き込んで思い切って飛び降りた。僕は車から降りて、足音を忍ばせてアナグマを探しに近づいて行った。アナグマが飛び降りたところからそっと下を覗き込んで見ると、約1.5m下でコンクリートの壁に寄り添うように座っている。僕が近くにいることにはまったく気づかず、車が通り過ぎるのを待っているようだ。

上から覗いている人間に気づかずに、隠れているつもりのアナグマ

コンクリートの壁からは水抜きの土管が出ている。アナグマはちょうどその横にいる。いざとなればその土管に逃げ込もうと考えているのだろう。余裕綽々といった風で、お気楽そうに見える。アナグマの目は良くないので、僕はわざと身を乗り出してアナグマを見た。上半身は明らかにアナグマから見えているはずだ。たまに頭をあげてこちらを見ている風だが気づかない。鼻を上げて臭いも嗅いでいる。臭いには敏感であるが、人間は車のところにいるので慌てて逃げ出す必要はないと判断しているのだろう。

真上からそっとアナグマのほうへ手を伸ばしてみる。アナグマまでは1mほどだ。アナグマは下を向いている。いつになったら気づくだろう。真上から覗き込んだまま様子を見る。臭いがあまりにも近くからするので、そのうちに逃げ出すはずだ。

5分くらい経った頃、なんの前触れもなくばね仕掛けのように素早い動きで向きを変えて土管に逃げ込んだ。なんとなく危険な気配を強く感じるようになって、逃げ出すタイミングを計っていたというような動きだった。

それにしてもアナグマの目はどのように物が見えているのだろうか?走っても木や岩にぶつかったりしないのに、動かなければ人間なのか木なのかは見分けられないのだ。

アナグマ君のニアミス

オオルリやクロツグミ・キビタキなど、夏鳥たちの囀りが賑やかだ。雄のヤマドリ2羽が羽毛を逆立てて、ガサゴソと草むらで戦っているのが見え隠れしている。

背後で枯れ草を掻き分ける音がかすかに聞こえた。そっと振り向くと十数メートル先にアナグマがいた。
鼻先を地面に突っ込んで食べ物を探しながらこちらに近づいて来る。
こちらが大きな動きをすると気づかれてしまうので、そのままの姿勢でポケットからiPhoneを取り出して撮影する。
6mほどのところまで来た時に、ようやく僕の臭いに気づいて鼻を上げて臭いを嗅いだ。
それでも大丈夫と判断したらしく、さらに近づいて来る。2mまで来た時、これ以上はヤバイと感じている様子だ。しかし、臭い以外に人間の気配がしないためだろう、アナグマは好奇心に駆られて2、3歩前に出ては戻ることを繰り返している。
それ以上近づく勇気は出ずに、やがて90度方向を変えて走り去った。



人間がいることに気付かずに大接近