伊吹山のイヌワシ幼鳥「サーナ」2024年6月24日



サーナは相変わらず元気に飛び回っている。先日19日に見た時にはギクシャクとしてぎこちない飛行だったのが、今日は堂々として滑らかな飛行になっている。それでも両親のように自由自在な飛行ができるようになるには、あと数ヶ月はかかる。
両親と一緒に飛んで行こうとはするものの、ある程度のところまで行くとUターンして戻って来る。遠いところはサーナにとってまだ未知の世界、恐ろしい場所なのだ。これはサーナだけでなく、どの幼鳥も同じだ。

15:20に父ワシが獲物を運んできた。獲物の種類を特定することはできなかったが、ノウサギのように見えた。サーナはすぐに父ワシを見つけて近づいていった。父ワシは旋回を繰り返し、どこで獲物をサーナに受け渡そうか場所を探している。母ワシも近くに来て旋回していた。
やがて高度を下げて沢に入って行った。サーナは獲物にありつくことができた。

伊吹山のイヌワシ幼鳥の名前が決まりました!

「サーナ」と命名

19日に巣立ちを確認したイヌワシ幼鳥は、昨日21日には親鳥からヘビをもらうなど巣立ち後も順調に生活しています。

2024年伊吹山のイヌワシ幼鳥を「サーナ」と命名しました。

健全な環境で元気に暮らしてほしいという思いを込めて、ラテン語で「健康・健全」を意味するsanaとしました。
今年はイヌワシにとって重要な場所にフェンスを張って人の立ち入りを制限し、イヌワシの観察や撮影をルールに従って行なったことで、イヌワシの生活が本来の健全な状態に近づき、雛が無事に巣立ちできました。
サーナには、まだまだこれから生きるための試練が待ち受けていますが、通常よりかなり早い思い切った巣立ちの勇敢さで乗り越えてくれることでしょう。

野生動物への名付けについて批判的な意見もあるようですが、多くの人に親しまれている動物に名前をつけることは自然なことと考えています。
ゴリラ研究者として知られる総合地球環境学研究所長の山極寿一さんが、新聞の「識者コラム」で「名付けがつくる動物の物語 日本流の自然観」として野生動物の名付けについて見解を示されています。「名前をつけるということは、動物を、個性を持った個体として見る行為である」と述べられ「その自然観を大切にしたい」と括られています。
各紙のデジタル版で読むことができます。ご一読いただきたいと思います。
引き続き皆様と一緒に、サーナや伊吹山の自然を見守っていきたいと考えています。

鉄塔営巣のクマタカ。ようやく巣立った

雛は巣立っていた。巣やその周りの鋼材にも止まっていない。鉄塔から飛び出して近くの林の中にいるのだろう。雛は巣立ってしまえば雛とは呼ばずに幼鳥となる。
幼鳥は巣立ち後しばらくの間、巣に戻って親鳥から獲物を受け取ることが多い。戻って来るのを待つことにするが、2時間経っても何の動きもない。3時間ほど経過してようやく、巣から100mほど離れたあたりから幼鳥の鳴き声が聞こえてきた。3〜4声で鳴き止んでしまったが、幼鳥が無事に巣立って近くにいることが確認できたのでほっとした。巣に戻って来ることを信じてさらに待つ。

13時ごろ、鳴き声が聞こえたので巣を見ると、巣の上に幼鳥が戻っていた。尾羽が前回見た時よりさらに伸びて、見た目に立派なクマタカとなっている。巣の上を歩いて、水平に伸びた鋼材の上に移った。そこで親鳥が獲物を運んで来るのを待つことにしたらしい。夕方までその場を動かずに止まっている。
遠くを飛行する親鳥を見つけては数声鳴く。しかし、今日は獲物が捕れないらしく、親鳥は戻って来なかった。

巣と近くの林を行き来しながら過ごしている。今は巣のそばで親鳥が獲物を運んで来るのを待っている

羽繕い