Vol.30 アフリカ撮影記 Ver.7

シロサイの糞を割って見せてくれるパトリック

キャンプでの生活は、非常に快適なものであった。ロッジは掃除が行き届き気持ちが良いし、ここの人たちはいつもやさしい笑顔で挨拶を交わしてくれるので安心して滞在ができる。

食料やガソリンが手に入りにくいジンバブエで三食と送迎が付いている。早朝に車で撮影地の近くまで行く。そこからガイドのパトリックが昼食を持ち、我々は機材を持って撮影場所までの登山である。

パトリックは優秀なインタープリターである。野生動物はもちろんのこと、植物やブッシュマン・岩やケーブのことなど、この地域のあらゆるものについて豊富な知識と経験を持っている。しかし今回、我々のガイドをするのはいつもとは勝手が違っていたであろう。

いつもならばパトリックが知っている場所にお客を案内して回るのだが、今回は我々が行くところへ付いてきてもらった。撮影場所では静かにして目立たないようにしながら夕方まで待機である。普通の人なら退屈しそうなものだが、パトリックはいやな顔ひとつしていない。それどころか、そこから野生動物を探して小声で我々に教えてくれたり、ブラックイーグルの動きを追跡して必要な時に教えてくれたりと、非常に楽しそうに過ごしている。パトリックは根っからの自然好きなのだ。野外での一日の過ごし方を心得ている。

ガイドが時間を持て余してしまって、我々が気を使わなければならなくなるのではないかという当初の不安は無くなった。一日中同じ地点から動かない撮影に、我々と同じ気持ちで付きあえるガイドは少ないだろう。

撮影が順調に進み少し余裕ができると、周辺地域の野生動物や何ペアものブラックイーグルの繁殖状況を見て回った。こうなるとパトリックの出番だ。ブッシュの陰に潜むシマウマやヌー・クドゥー・エランドなどを、車を走らせながらも一瞬のうちに見つけ出してしまう。

すばらしい視力だ。しかしながら、僕も負けてはいられない。野生動物を見る目には自信がある。パトリックが動物を見つけた時は、僕が「オーすごい」と唸り、僕が見つけた時には、パトリックが「オーすごい」と唸る。お互いに意識しながら動物探しが続く。

パトリックは時々車を止めて、地面に着いた動物の足跡を調べている。砂地に着いた足跡から、動物の種類やいつごろ通ったものかなどの詳細な情報を読み取っている。動物の糞をひとつひとつ手に取って、解説してくれる。シロサイとクロサイの糞の外観は似ているが、内容物で見分けることができるらしい。シロサイは草本植物を食べているので糞の中は柔らかい繊維だけであるが、クロサイは木の葉を食べるために堅い木の枝が糞の中に含まれている。

見せてもらったクロサイの糞の中には細い木の枝がたくさん入っていた。

僕が数年前に最初にジンバブエを訪れた時に見つけた、20巣以上のブラックイーグルの巣も一緒に見てまわり繁殖状況をチェックした。昨年繁殖に成功したペアの多くが今年は繁殖していない。繁殖成功率は50%前後であろうと想像された。

野生動物がたくさんいて、ブラックイーグルの獲物となるダッシーもたくさんいるこの地においても、逃げ足の速い獲物を捕獲することは非常に難しいようである。ブラックイーグルが、ヒナを育てている巣に運んでくる獲物の量に余裕はない。