ドローンで空から訪問。ニホンジカの群れ

上空から見るとシカに食い荒らされて草地がパッチ状になっているのがよく分かる。以前は膝から腰あたりの高さまで植物に覆われていた草地が、今では背の低い植物がパッチ状に生育しているだけになっている。シカが日中に隠れている林の中は草地以上に林床の植物がなくなっている。数十頭のシカが毎日食べているのだから、植物の成長がとても追いつかない。
ドローンで手軽に上空から観察や撮影ができるようになったのだが、野生動物にとってはかなり迷惑なものになりかねない。シカはこれまで遭遇したことのないドローンにかなり警戒している。100mほどに近づくとドローンのプロペラ音に反応して警戒し始める。さらに接近すると、ある程度の距離を保とうと少しずつ逃げ始める。
スピードを上げて一気に接近しようものならパニックになって逃げ惑う可能性がある。撮影するつもりが動物たちを追い回すことにならないように、自分自身も十分注意しなければいけない。ドローンの接近によって営巣中の鳥が営巣放棄したり、幼い子連れの獣などは親子がはぐれてしまったりすることも起こりうるからだ。



P.S. 今日からアフリカへ撮影に出発します。今回は1ヶ月あまりを南アフリカのクルーガー国立公園で過ごす予定です。多くの場所でWiFi環境があるので、アフリカの様子を随時発信する予定です。

80頭ものニホンジカが現れた

ニホンジカは全国的に個体数が増えている。伊吹山でも同様で、かつてはその姿を見ることは滅多になかったけれど、現在は山の斜面に何頭ものシカをすぐに見つけることができる。
シカは、登山者など人間の山への出入りが少なくなる頃に、林の中から一斉に草地へ出て来て植物を食べる。数十頭ものシカが毎日のように夕方になると出て来るのだから、植物がほぼ食い尽くされて裸地化している場所があちこちに点在している。



80頭ものニホンジカが、林の中から草地に出て来た

このビデオの画角の中だけで80頭近いシカがいる。僕の視界の中にはこれ以外にも何十頭ものシカが見えているのだからすごい数だ。昨年の11月に撮影したものだが、その頃には毎日これだけのシカが夕方になると草地に現れた。今年はこれほどの大群ではないが、40〜50頭が毎夕現れる。
草地が裸地化したところは遠目にもよく分かる。外からでは分からない林の中でも、林床の草や低木が食べられて、大木を残して裸地化が進んでいる。人間が山仕事に入らなくなってから山が藪化していたのが、シカによって再び林内の見通しが良くなった。
シカの増加により、裸地化が進行し雨で土砂崩れが起こりやすくなったり、樹皮を食べられて植林木が枯れてしまったり、お花畑の花が減少したりと心配な面もたくさん出てきている。

雄カモシカ、オレンジに接近

久しぶりに雄カモシカが現れた。オレンジに接近して匂いを嗅いだり擦り寄ったりしてくるので、オレンジは迷惑そうだ。
今年もカモシカの発情期が近づいて来たのだ。雄は子育てにはまったく関与せずにオレンジ母子とは離れて行動していたのだが、今日はずっと近くにいる。
これから親子3頭水入らずの生活がしばらく続く。いやオレンジ母子にとって雄カモシカは水入りなのかもしれないが…



乳を飲もうとする子カモシカ。雄カモシカが現れオレンジにまとわりつく

オレンジカモシカの子育て順調

9月に入ってかなり涼しく過ごしやすくなった。撮影中はまわりの木でセミの大合唱が続いている。夏の初めにヒグラシで始まり、暑さ厳しい盛夏の頃にはミンミンゼミ、そして今はツクツクボウシが賑やかだ。
8月初めの台風による大雨で姉川が氾濫し、山のあちこちで林道が崩壊した。沢からは土砂が流れ出している。斜面にも大水が流れたらしく、あちこちに深い溝ができている。ブッシュの陰で見えにくいので足を突っ込んでしまうと危険だ。
そのような凄まじい豪雨を野生動物たちはいとも容易く(僕にはそう見える)やり過ごして、いつもと変わらぬ元気な姿を現してくれた。オレンジカモシカ母子もどこで風雨をしのいでいたかは分からないが、大雨の3日後には元気な姿を見ることができた。
子カモシカは独り立ちする日が近づいているのかオレンジから少し離れて行動することが多くなった。小さいながらも角が伸びてきている。



オレンジカモシカ母子。子カモシカにも角が伸びてきた

クマも木から落ちる

今春はいろんな花が咲くのは例年よりかなり遅かった。サクラは1週間から10日遅れで、山のタムシバは10日以上も遅れて4月下旬に満開になった。毎年この白い花を食べにクマが木に登る。

一月近く前のことになるが、今年も満開のタムシバの木に親子のクマが現れた。ガバガバと花を食べながら枝先へ登っていく。枝がしなり、クマは一旦躊躇したものの花の誘惑に負けて一歩踏み出した途端に木から落ちてしまった。しかし、枝に片手でぶら下がって地上まで落ちずに止まった。落ちていく重い体重を片手で受け止めるとは、クマはやはりすごい。
1歳を過ぎたばかりの子グマのほうも不安定な細い枝の上でフラフラよろけている。そのうちに子グマも落ちた、が、同じ枝に前肢で掴まってぶら下がっている。雲梯のように前肢を交互に動かして、枝の太いところまで戻った。

クマの木登りを見ていると、時には落ちることもあるだろうといつも思っていたのだが、やはり落ちるらしい。しかしこの運動能力なら怪我をすることはほとんどないのだろう。



クマも木から落ちる。タムシバの花の誘惑

オレンジカモシカ3年目の連続出産

オレンジカモシカの出産を今か今かと待っていた。ついに今日、生まれて間もない子カモシカを確認した。灌木の藪の中にオレンジと一緒にいたので、小さな子カモシカの姿は木々の間からチラチラとしか見えない。オレンジはガシガシと木の新芽を食べている。その足元でヨロヨロとうごめいている。
昨日の昼には、オレンジは子カモシカを連れていなかった。昨夕から今朝にかけて出産したのだ。子カモシカを気遣って、オレンジはほとんど移動せずに近くの木の葉を食べていた。



オレンジカモシカの足元で、ヨロヨロとうごめく生まれて間もない子カモシカ

ニホンジカも出産の季節だ。1週間ほど前から時々子連れの母ジカの姿を見かけるようになった。ニホンジカの場合は、子ジカを藪の中に置いて採食に出て行くので出産しているのかどうかは分かりにくい。

ニホンジカ、侵入防止策の向こうで…

集落に張り巡らせてある野生動物の侵入防止柵の向こうで、一頭の若い雌ジカが恨めしそうに田畑を眺めている。今の季節、田畑はまだ雪に覆われていて食べるものはほとんどない。食物を求めているのではなく、行く先にフェンスがあって阻まれたのでボーとしているだけなのかもしれない。
時々下にある草を食べながらゆっくりとフェンスに沿って移動していった。



農地を囲むフェンスの前でたたずむニホンジカ

侵入防止策が張り巡らされると、そこを行き来できなくなった大型獣はフェンスに沿って歩いていることが多い。フェンス沿いにはシカの足跡が道のようになって続いている。ところどころフェンスと地面の隙間を広げてイノシシが侵入した痕跡がある。
しかしながらフェンスができてシカやイノシシの農地への侵入は格段に少なくなった。

雪解けに合わせて高標高地へシカが戻り始めた

雪とともに低標高地へと移動していたニホンジカが、雪解けとともに高標高地へと移動している。雪解けの早い南斜面や急傾斜地では、山肌があちらこちらで露出している。シカたちは素早くそういうところへ進出して、雪に埋もれていた植物を食べている。

一方、積雪期も山を下ることなく生活していたカモシカは、同じような植物食のシカが戻って来たことで迷惑しているのかもしれない。
オレンジカモシカは、そんなシカをどのように思っているのか分からないがじっと見つめていた。そしてふと我に返り、雪を舐めて喉を潤し松葉を食べていつもの生活に戻った。



同じエリアで生活するカモシカとニホンジカ。
シカの生息密度は高く、カモシカの何倍もの数がいる

道路を渡りたかったカモシカ

県道を車で走っていると道路脇の雪の上にカモシカが立っていた。自動車が時折行き交う道路を横断して対岸の山へと行きたいらしい。集落内を通ってここまで出てきたのだ。道路を渡るとその向こうには川がある。川を渡ると林になっていて山の斜面に続いている。そこまで行くと安全地帯だ。

車を恐れているようには見えないので、通り過ぎてからUターンしてカモシカのところへ近づいて行った。スピードを落として近くまで行くと、カモシカは危険を感じたらく慌てて向きを変えて走り去った。
何台か車が通り過ぎても気にしていなかったのだが、スピードを落として近づくと恐怖を感じている。動物たちは人間の動きをよく観察している。自分に興味を持つ人間は危険だと思っている。田や畑で農作業をしている人の近くに鳥や哺乳類が出てくることはあるが、撮影しようと構えると動物は逃げて行くことが多い。自分に興味を持たれたことを素早く感じ取って逃げるのだ。

今回のカモシカも、道路を渡るタイミングを見計らっているうちに、このカモシカに興味を持つ人間が現れて一旦引き返さざるを得なくなったのだ。

雪に足を取られながら逃げるカモシカ

霧に覆われた1日

冬型の気圧配置が緩み、高気圧に覆われてきたので山に出かけた。早朝は快晴だったが、目的の場所に到着した頃には霧に覆われて視界が全くなくなってしまった。こういう時は平地では晴れ間が続いていて、山のそれも一部分だけに霧が発生していることが多い。しかし、自分のまわりは白一色で何も見えないので、世界中がこのような天気であるような気がしてくる。

マイクには霧の水蒸気が付着して霧氷となった。

太陽が当たらないので気温は上がらない。撮影地に到着してからは、動かずに待ち続けるので寒さがこたえる。南極でも使えそうな嵩高い羽毛服を着込んで霧が晴れてくれるのをひたすら待つ。

霧が晴れるのをひたすら待つ。

14時ごろ、今日の撮影は諦めて下山しようかと思った矢先、あたりが少し明るくなり、霧が一部分だけ晴れた。対岸の雪上にカモシカらしい足跡がある。足跡の先にカモシカ1頭を発見した。カメラをカモシカに向けようとした時には再び霧に覆われてしまった。

その後も霧は晴れず、耐寒訓練の1日だった。