子カモシカはやんちゃ盛り

オレンジカモシカの子カモシカは生後2ヶ月を過ぎた。オレンジの行くところはもうどこでもついて行けると言わんばかりに意気揚々と歩いている。確かに少々の段差や岩場なども、小さいながらもうまく乗り越えて行く。

絶壁状の岩場をオレンジが足場を確保しながら降りてゆく。断崖に張り付くように生えている低木の葉を食べながらゆっくりと進んでいる。高さが50m以上はある絶壁なので、下まではたどり着けずに引き返してくるものと思っていたが、どんどん降りて行く。おそらく何度も通って降りられるルートを知っているのだろう。何の躊躇も行き詰まることもない。
子カモシカはオレンジが通っていない方向へ行こうとしたり身を乗り出して下を見たりと、こちらがハラハラとさせられる。足を滑らせでもしたら絶壁から墜落してしまうことを、子カモシカは分かっているのだろうか?と言いたくなるような大胆な行動だ。

そのうちに子カモシカはオレンジと少し離れた。オレンジは岩場を回り込んで子カモシカの下方に出て来たのだが、子カモシカは一直線に岩場を下ってオレンジのところへ行こうとしている。そんなことをしたら今度は本当に転落してしまいそうだ。
子カモシカが岩場をそろりそろりと降り始めた。すぐに4本の脚が岩場を滑り出した。これはやばいと思ったその時、子カモシカは滑りながら岩場を走り降りて、オレンジのいる狭い棚状のところでピタリと止まった。
ウーーム、子カモシカもやるな。これで岩場の難関は越えた。



絶壁を降りるオレンジカモシカの母子。子カモシカが岩場を滑り降りた

ツキノワグマ、アリの巣を探して歩く

この時期、ツキノワグマはよくアリの巣を探して歩き回っている。先日、久しぶりにクマが出てきた時もアリの巣を探しているようだった。
鼻先を地上近くに近づけて臭いを嗅ぎながら歩いている。時々岩をひっくり返しながら移動して行く。

アリの巣を見つけてひとしきりアリやアリの卵を食べ終えると次の新しい巣を探して歩き出す。アリの蟻酸の刺激を求めているのか、卵の栄養に惹かれているのか?どちらにしてもクマにとってはあまりに小さい。お腹を満たすというよりも嗜好品なのだろう。



ニホンジカの白斑個体も出産

ニホンジカ白斑個体も今年出産した。一昨年に出産し、1年おいての出産だ。オレンジカモシカの子どもを確認したのと同じ5月16日に子ジカを連れているのを見た。

カモシカが子どもと離れずに四六時中寄り添って行動するのに対し、ニホンジカは子ジカを木陰などのブッシュの中において、母ジカは少し離れたところで採食や休息をしている。イヌワシやツキノワグマなどから子どもを守るためにはどちらがいいのだろうか?
カモシカ式だと母親と一緒に動き回るので目につきやすい。ニホンジカ式だとブッシュの陰でおとなしくしている限り見つかりにくいが、立ち上がって動き回るとイヌワシなどに見つかりやすい。母ジカと離れていて無防備なのですぐに襲われてしまうだろう。
一長一短、どちらが安全だとは言えない。しかし、今春少なくとも2頭の子ジカが伊吹山周辺でイヌワシに捕獲されている。子カモシカが捕獲されたのは確認できていないが、それだけでカモシカ式が安全とは言えない。カモシカよりニホンジカの生息数が圧倒的に多いために、捕獲される子ジカも多いのだ。

白斑の母ジカは、授乳の時になると子ジカの所へ近づいていく。そして授乳が終わるとまた少し離れて別行動だ。母ジカは離れていても常に子ジカの動きを把握している。子ジカが立てる物音には敏感に反応して子ジカを見守っている。今いる場所に危険を感じると、子ジカを連れて安全な場所へと移動していく。
今では子ジカはだいぶ大きくなって動きも素早くなり、イヌワシの捕獲対象ではなくなりつつある。



授乳中の親子ジカ。授乳が終わると子ジカは母ジカと離れて単独で過ごす

オレンジカモシカ,4年連続で今年も出産

オレンジ色のカモシカは、今年も出産した。5月16日に小さな子カモシカを連れているのを確認した。5月9日にはまだ生まれていなかったから、5月10日から15日の間に子カモシカは生まれている。昨年は5月17日、一昨年は5月15日前後だった。3年前の初産の時は5月20日前後と思われた。
子カモシカはオレンジの足元にまとわりつくようにして歩いている。



子カモシカは母親のそばを離れない

イヌワシがオレンジカモシカ母子の近くを飛行した際に、子カモシカを見つけて一瞬翻ったが、母カモシカに寄り添っているのでイヌワシは襲いかかることはなかった。母子はほとんど離れることなく行動しているので、イヌワシが襲いかかるチャンスはめったにないだろう。

春は駆け足でやって来た。タムシバ咲き,クマ現れる

今年の春は樹木の芽吹きや花の開花が例年より一週間以上も早い。山の斜面のあちこちに、早くもタムシバが雪のような白い花を咲かせている。昨年は同じ場所で4月21日ごろが満開だった。タムシバの花はツキノワグマが冬眠明けに好んで食べるのだが、こんなに早く咲いてしまったら、多くのクマが冬眠から目覚める前に花が散ってしまうかもしれない。そんなことを考えながら山の斜面に目を凝らし、真っ黒いクマの姿を探す。

しかし、なかなか見つからない。あと一週間ほど経たないと、冬眠から目覚めて活動を始めているクマは少ないだろう。2時間ほど経ってようやく、タムシバの木に登るクマを発見した。このクマは撮影する前に木から降りて見えなくなった。

少し離れた別の沢で斜面の林床を歩くクマを発見。木々に隠れてすぐに見えなくなった。結局4時間ほどで2頭の出現だった。今年初めて見たクマとしてはまずまずの成果だった。例年ならタムシバが咲く頃にはもっとクマを発見できるのだが、今年は開花が早すぎた。多くのクマが目覚める来週には、すでにタムシバの花はないかもしれない。

山の斜面に点々とタムシバの花が咲く

真上から覗かれていることに気づかないアナグマ

山からの帰り、薄暗くなり始めた林道を車で走っていると前方の林道脇からアナグマがこっちに向かって走り出した。アナグマは車の少し手前で危険を察知して、林道のコンクリートの法面から下を覗き込んで思い切って飛び降りた。僕は車から降りて、足音を忍ばせてアナグマを探しに近づいて行った。アナグマが飛び降りたところからそっと下を覗き込んで見ると、約1.5m下でコンクリートの壁に寄り添うように座っている。僕が近くにいることにはまったく気づかず、車が通り過ぎるのを待っているようだ。

上から覗いている人間に気づかずに、隠れているつもりのアナグマ

コンクリートの壁からは水抜きの土管が出ている。アナグマはちょうどその横にいる。いざとなればその土管に逃げ込もうと考えているのだろう。余裕綽々といった風で、お気楽そうに見える。アナグマの目は良くないので、僕はわざと身を乗り出してアナグマを見た。上半身は明らかにアナグマから見えているはずだ。たまに頭をあげてこちらを見ている風だが気づかない。鼻を上げて臭いも嗅いでいる。臭いには敏感であるが、人間は車のところにいるので慌てて逃げ出す必要はないと判断しているのだろう。

真上からそっとアナグマのほうへ手を伸ばしてみる。アナグマまでは1mほどだ。アナグマは下を向いている。いつになったら気づくだろう。真上から覗き込んだまま様子を見る。臭いがあまりにも近くからするので、そのうちに逃げ出すはずだ。

5分くらい経った頃、なんの前触れもなくばね仕掛けのように素早い動きで向きを変えて土管に逃げ込んだ。なんとなく危険な気配を強く感じるようになって、逃げ出すタイミングを計っていたというような動きだった。

それにしてもアナグマの目はどのように物が見えているのだろうか?走っても木や岩にぶつかったりしないのに、動かなければ人間なのか木なのかは見分けられないのだ。

雪の中、単独で暮らす子カモシカ

このところ雪の日が多い。里もすっかり冬の装いになった。山ではニホンジカが標高の高いところから積雪の少ない低標高地へと移り始めている。
カモシカは積雪が増えても一年中同じあたりで暮らしている。子カモシカが積雪の中を歩きながら雪の上に出た植物を食べている。母親であるオレンジカモシカとは別行動だ。

今年生まれの子カモシカは、母カモシカより一回りは小さいので頼りなげに見える。積雪と寒さの冬を乗り切れるのかといつも心配になってしまう。子カモシカとニホンジカが至近距離でばったりと出会った。お互いに警戒して見合っている。そのうちにニホンジカがピーッと鋭く大きな声で啼いた、と同時に子カモシカは一目散に逃げていった。大人のカモシカであればこのように脅かされて逃げることはないのだが、子カモシカは当分の間このように逃げ隠れしながら暮らさねばならないのだろう。

今日は子カモシカとオレンジを同時に見ることができたが、お互いは300mほど離れているのでどちらも相手には気づいていない。それぞれに採食したり座って休息したりしていた。母子が久しぶりに出会った時にどのような行動をとるのか非常に興味があるのだが、タイミングよくその場面に出くわすことは難しい。今日は子カモシカとオレンジが接近することはなかった。



雪の中で松葉を食べ、その後立ったまま反芻をする子カモシカ

秋晴れにサルもくつろぐ

伊吹山は先日からしばらく雪化粧して白くなっている。今日は久しぶりの快晴で、山麓では暖かく気持ちの良い天気だ。
田んぼにサルの群れが出てきて、稲刈り後の落ち穂を拾って食べている。畦の植物を食べる個体や座って気持ちよさそうに日向ぼっこをしているもの、若いサルは2〜3頭で元気にじゃれあって遊んでいる。

サルが田畑に出てくると、農家の人たちが手をかけて作った農作物が食べられてしまうので、普段は見つけるとすぐに追い払うのだが、今日はあまりにもサルたちが心地よさそうにしているので、追い払いはやめて僕ものんびりと観察することにした。冬を目前に控えて畑にはほとんど作物がないので、サルたちが悪さをすることもない。

20頭余りのサルがいる。時折車が近くを通ると、サルたちは山手の林の中に姿を隠す。車が通り過ぎるとすぐにまた姿を現す。そんな風に2時間ほど過ごした後、別の場所へと移動して行った。
秋晴れの暖かな日差しのもとで、サルたちはいつもよりくつろいでいるような気がした。



秋晴れの1日、サルたちはのんびりと採食し、じゃれあって過ごす

雄ジカは雌ジカより大胆or鈍感?

ニホンジカの聴力は人間とは比べ物にならないほど優れている。人間の僅かな足音を鋭くキャッチして、いち早く逃げていく。最初に物音に気づいて逃げるのは雌ジカと子ジカである。雄ジカは同じ距離のところにいても、なぜか警戒しないことが多い。雄と雌で聴力に差があるのだろうか?

外見上はほとんど同じ耳に見えるから、聴力の差とは考えにくい。雌ジカは子ジカを連れていることが多いので、出来るだけ遠くから危険を回避しようと敏感になっているのだろう。その点雄ジカは子育てには関与しないので、雌ジカと比べて大胆に振舞っているのかもしれない。



雄ジカは近距離で採食中

個体識別できるニホンジカ

オレンジ色をした個体識別できるカモシカについては度々書いているが、ニホンジカにもはっきりと個体識別できる個体がいる。そのシカには、体に大きな白斑がある。普通夏毛のシカには鹿の子模様と呼ばれる小さな白斑がたくさんあるのだが、このシカには肩から背中にかけて明らかに他とは違う数個の大きな白斑が付いている。おまけに左目だけまつげが白い。

この白斑ジカに出会ったのは2年半ほど前だ。個体識別が出来ると、その個体の動向がいつも気になってしまう。3ヶ月ほど姿を見なかった時には、もう死んでしまったのかなと思ったりもしたのだが、再び姿を現してからは割と頻繁に出現している。

白斑ジカは、この間に1回だけ(昨年)子どもを産んで育てた。子ジカには母ジカのように大きな白斑はなく、普通の体色である。その子ジカは今年も母ジカと一緒に行動している。
白斑ジカをいつまで追い続けられるのか、オレンジカモシカとともに気になる存在だ。



背中周辺の大きな白斑と左目のまつげが白いニホンジカ