野生動物の世界を伝える
人と野生動物の共存について提案する
イーグレット・オフィス

野生動物の保護と管理
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…


All the things begin from Golden Eagle!
イーグレット・オフィス
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…
昨年末から、巣には雪が降り積もり、巣造りができない状況が続いている。雌雄が鳴きかわしている声が巣の近くで聞こえるが、雪がこんもりと積もった巣には滅多に入って来ない。
1月17日、雄が巣にやって来た。巣の縁の雪のない部分に止まって、さかんに鳴いている。近くに雌がいるのだろう。その方向を注視しているが、雌は巣には来なかった。
イヌワシの産卵は、近畿地方では2月上旬頃が多い。伊吹のワシは早い時には1月下旬に産卵することもあり、周辺の他のワシより若干早めにに繁殖が始まる。しかしここ数年、伊吹では2月下旬に産卵している。遅くなっている理由は分からないが、産卵が遅くなるのは生息状況が悪化している場合に多いように思う。伊吹のワシの将来を少し不安に思う。
産卵が遅いので、巣造りはこれからが本番となるだろう。今年の繁殖がうまくいくことを祈っている。
2月頃からライブ配信の予定です。
イヌワシは、今年の繁殖活動を開始しています。営巣地やその周辺の人の動きなどに敏感で神経質な時期です。
営巣地に近づくことがないようにお願いします。
ライブ映像でイヌワシの繁殖を見守ってください。
雪の積もった巣でコールする
京都新聞連載『野生のいぶき』に10月・11月・12月の記事を追加しました。
2021年10月 | カラフルな鳥たち |
2021年11月 | 命の水場 |
2021年12月 | 木陰に集う |
すべての記事はこちらからどうぞ
京都新聞連載『野生のいぶき』
新年おめでとうございます。
今年から、イヌワシの巣造りから子育てまでをライブ配信する予定です。
これまで僕のライフワークであるイヌワシについて、ネット上ではほとんど発信していませんでした。発信することで、たくさんの人たちがイヌワシの生息地を訪れることになり、警戒心の強いイヌワシの繁殖や生活に影響を及ぼしてしまうことを懸念しているからです。
伊吹地域に生息するイヌワシを、これまで40年間ひっそりと見守ってきましたが、近年では多くの人の知るところとなり、イヌワシを狙う多くのカメラマンが集まるようになっています。それぞれが思い思いの行動をとることで、イヌワシの生活を狂わせつつあります。餌となる動物の死体などを持ち込んで写真を撮ろうとする人がいたり、巣立った幼鳥を追いかけて、普段は人が立ち入らない山中のあちこちにカメラを構えた人が居座っていたり、また巣の近くまで行ってカメラを構えているために、親鳥が巣に戻れない事態も起こっています。
情報が瞬時に拡散する現代では、僕が情報を発信しないことだけでは人の集中を避けることはできません。人が集まるところでは、自然観察のルールが必要だと思います。僕がよく訪れるアフリカの国立公園にもルールがあります。野生動物に餌を与えない、観察路や道路から外れて動物たちを追いかけない、動物の行動を阻害しない、などです。日本でも人が集中する場所では、こうした自然観察のルールが必要になってきています。
今回のライブ配信では、普段見ることができないイヌワシの巣造りや子育てを、イヌワシに影響を与えることなく観察できます。このような趣旨に賛同いただける方々と一緒にイヌワシを見守り、イヌワシの生活を脅かすことがないようなルールが、自然に出来上がることを期待しています。
ライブ配信は、2月頃から公開予定です。それに先立ち、繁殖状況のダイジェスト版を発信していきます。
今回は、12月下旬の巣造りの様子です。巣材運びが見られるようになりましたが、まだ本格的ではなく、巣は整っていません。何年にも渡って同じ巣を使用しますが、巣材の一部が崩れ落ちているので、これから新しい巣材を積み上げていきます。
雪が降り積もった巣の上に巣材を運んで、途方に暮れているようなイヌワシの姿もありました。
イヌワシの巣造り。雪の上に巣材運ぶ。ライブ映像ダイジェスト版2021年12月
【テーマ】社会と経済を支える生態系~生物多様性をめぐる科学と政策~
【開催趣旨】
新型コロナウィルス感染症によるパンデミックを契機に、健全な生態系は私達が健康に生きるための土台であり社会と経済を支えているという考え方が注目されています。さらにポストコロナ時代を見据えて、SDGs(持続可能な開発目標)が目指す経済・社会・環境のバランスがとれた世界の実現に成長の機会を見出そうという動きも見られます。
SDGsの達成に向けて日本政府が策定した中長期国家戦略「SDGs実施指針」に示された課題を解決するための施策として「SDGsアクションプラン2021」が公表されました。健康長寿社会のための感染症対策、科学技術イノベーションによる成長戦略と地方創生、2050年カーボンニュートラルによる脱炭素社会の実現、生物多様性の保全と持続可能な利用、女性参画やジェンダー平等などが挙げられています。
これらは、どれも重要な取り組みですが、互いに矛盾するケースもあります。例えば、カーボンニュートラルの手段として「再生可能エネルギー」が推進されていますが、風力発電やメガソーラーなどの再エネは生物多様性を損なう側面があります。最重要課題とされている感染症対策においては、野生動物と人が適切な距離を保つ自然共生社会の実現が喫緊の課題です。
シンポジウムでは、生物多様性をめぐる科学と政策について、多様な立場からの取り組みをご紹介いただき、社会と経済を支える生態系について考えたいと思います。
【開催日時】2021年11月6日 14:30〜17:30
【開催方法】オンライン開催(Zoom)
【参加費】無料
【参加申し込み】大会Webサイト
【問い合わせ先】株式会社イーグレット・オフィス(担当 吉田)
京都新聞連載『野生のいぶき』に5月・6月・7月の記事を追加しました。
2021年5月 | マーシャルイーグル |
2021年6月 | チーター |
2021年7月 | ライオン |
すべての記事はこちらからどうぞ
京都新聞連載『野生のいぶき』
僕のいる近くの山の急斜面から、何やらガサガサ音がして小石も転がり落ちている。音源を探すとアナグマが3頭いた。2頭が睨み合って頭を上下させた後、相手に噛み付こうとして転げ回っている。1頭が走って逃げると追いかけ、また同じように睨み合って戦うことを繰り返している。
アナグマは日中でもよく姿を見かけるのだが、これだけ大胆に暴れまわっているとよく目立つ。雌を獲得するための雄同士の戦いなのか、単なる兄弟喧嘩なのか、はたまた食物を巡る争いなのか?理由ははっきりしないが、交尾期なので雌を巡る争いの可能性が高い。執拗に追いかけ争っている。
小さな尾根の裏側へと姿を消したが、まだ争いは続いているようでガラガラと小石が崩れ落ちる音が聞こえている。
アナグマの真昼の決闘。ゴロンゴロンとでんぐり返り、まるでレスリングを楽しんでいるようだ
ニホンジカの出産は5月が多い。しかし、生まれて間もない子ジカは、1日の大半をブッシュの中に隠れて過ごしているので、見つけるのは難しい。母ジカは授乳の時だけ子ジカのところにやってくる。
今年出産したであろう雌ジカを見極めて追跡することで、子ジカを見つけることができる。出産した雌の見極めは、体格が良く昨年生まれの若いシカを連れていない個体を選ぶとほとんど間違いはない。出産は隔年なので、昨年の子ジカがいる雌は今年は出産していない。
6月の半ばを過ぎると、子ジカは母ジカについて歩き回るようになる。こんなに子ジカがいたのかと、びっくりするくらいあちこちに現れる。走ったり飛び跳ねたりすることが楽しそうだ。突然母親から離れて一直線に100mも走り出したと思ったらUターンして全力疾走で戻って行く。
やんちゃ盛りの子ジカは、僕がいることに気づかずに、目の前まで走って来てびっくりして逃げ帰ったり、母ジカより先をどんどん歩いて僕に出くわしたりと無邪気なものだ。近づいた先がクマだったら子ジカの命はない。
子ジカが十分な警戒心と注意力を身につけるまでには、まだまだ時間がかかる。それまで生き残れる子ジカは半数もいないだろう。
冒険心が旺盛な子ジカが遠出。母ジカは子ジカを探す
先月4月22日夕方、岐阜県の揖斐川源流部河岸にツキノワグマがいるのを見つけた。水際で何かを食べている。冬の間に死んで流されて来たニホンジカの残骸だ。もうすでに腐って、毛は抜け落ちている。
腹部のあたりに顔を突っ込んで、残っている内臓や肉片を食べている。人間はこんな腐肉を食べることは到底できないが、クマは平気で食べている。野生動物はたくましい。
1時間余り経ってクマは、すぐ脇のササ藪に入って座った。姿は見えなくなったが、ササが揺れなくなったことから休息しているようだ。15分ほどでササ藪から出て、シカの死体のところに戻って来た。死体をしばらくあさった後、満腹になったためかその横で寝そべった。トビやカラスがやって来て、肉片を横取りしていくので見張っているのだろう。暗くなるまで寝そべったままだった。
翌朝早く、クマの様子を見るためにそこを訪れたが、すでにクマの姿はなかった。一晩かけてシカの残骸を食べ尽くして、去って行ったのだ。そこにはシカの骨と皮だけが残されていた。
ニホンジカの腐肉を食べるツキノワグマ
子カモシカが生まれた翌日から、3日間雨が降り続いた。今年は異常に早い梅雨入りとなった。生まれてすぐに雨続きなので、子カモシカが心配だ。ようやく雨が上がった日の早朝にオレンジ母子の様子を見に行った。
4日前と同じ所で座っているオレンジを見つけた。子カモシカは見えないが、オレンジの陰にいるのかもしれない。しかし、嫌な予感がする。4日間も場所を変えずにいるのは変だ。
やがてオレンジは立ち上がり歩き出した。しかし、子カモシカはいない。オレンジは足早に移動して行くが、子カモシカの姿はない。生まれたばかりの体に降り続いた冷たい雨で、体温を奪われて死んでしまったのだろう。残念だ。
オレンジは昨年も子どもを生んだが、1週間以内にいなくなっている。その子カモシカは、イヌワシに見つかって狙われていたので、オレンジから少し離れた隙に襲われたものと思われた。
自然界で生きることは厳しい。生き延びるためには運も必要だ。
足早に歩くオレンジの足元に子カモシカの姿はない