野生動物の世界を伝える
人と野生動物の共存について提案する
イーグレット・オフィス

野生動物の保護と管理
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…


All the things begin from Golden Eagle!
イーグレット・オフィス
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…
山からの帰り、薄暗くなり始めた林道を車で走っていると前方の林道脇からアナグマがこっちに向かって走り出した。アナグマは車の少し手前で危険を察知して、林道のコンクリートの法面から下を覗き込んで思い切って飛び降りた。僕は車から降りて、足音を忍ばせてアナグマを探しに近づいて行った。アナグマが飛び降りたところからそっと下を覗き込んで見ると、約1.5m下でコンクリートの壁に寄り添うように座っている。僕が近くにいることにはまったく気づかず、車が通り過ぎるのを待っているようだ。
上から覗いている人間に気づかずに、隠れているつもりのアナグマ
コンクリートの壁からは水抜きの土管が出ている。アナグマはちょうどその横にいる。いざとなればその土管に逃げ込もうと考えているのだろう。余裕綽々といった風で、お気楽そうに見える。アナグマの目は良くないので、僕はわざと身を乗り出してアナグマを見た。上半身は明らかにアナグマから見えているはずだ。たまに頭をあげてこちらを見ている風だが気づかない。鼻を上げて臭いも嗅いでいる。臭いには敏感であるが、人間は車のところにいるので慌てて逃げ出す必要はないと判断しているのだろう。
真上からそっとアナグマのほうへ手を伸ばしてみる。アナグマまでは1mほどだ。アナグマは下を向いている。いつになったら気づくだろう。真上から覗き込んだまま様子を見る。臭いがあまりにも近くからするので、そのうちに逃げ出すはずだ。
5分くらい経った頃、なんの前触れもなくばね仕掛けのように素早い動きで向きを変えて土管に逃げ込んだ。なんとなく危険な気配を強く感じるようになって、逃げ出すタイミングを計っていたというような動きだった。
それにしてもアナグマの目はどのように物が見えているのだろうか?走っても木や岩にぶつかったりしないのに、動かなければ人間なのか木なのかは見分けられないのだ。
気温が上がり雪解けも進んで、伊吹山も所々に雪が残るだけになった。もう少し雪の季節を楽しみたいところだが、季節は春へと着実に歩を進めている。マンサクやダンコウバイが、雪の解けた灰色の山に鮮やかな黄色い花を咲かせている。
雪がなくなるとすぐにフキノトウが出てくる。ちょうどいい具合のフキノトウが顔を出しているので、持ち帰って春一番の味と香りを楽しませてもらおう。
そろそろツキノワグマが冬眠から目覚めて活動を始める頃なので、少し山を散策して探してみる。冬の間に、ニホンジカが樹皮を剥がして食べた木が、白く痛々しい姿で立っている。その木の横にシカの角が落ちていた。昨年の春に落としてブッシュに隠れていたものが、草が枯れ雪に埋もれ、雪解けとともによく見える表面に出てきたのだ。長さ55cmとそれほど大きな角ではないが、太くてがっしりとした角だ。僕が拾った角で最も大きいのは40年近く前に拾ったものだ。もっと大きな角もあるのだろうが、これまでにこれ以上の大きさの角を見たことはない。
クマの食べ物となる植物の芽吹きはまだこれからだ。多くのクマはまだ眠っている。クマの姿を見ることはなかったが、昨年の秋に木に登ってドングリを食べた跡(クマ棚)がある木の下で、新しいクマのフンを見つけた。やはりクマは活動を始めている。
10日ほど前、クマの目撃情報があったと防災無線から流れていた。近年、市内全域のクマ目撃情報が度々放送されるようになったので、クマが増えたと勘違いしたりクマへの恐怖心を煽ったりしがちである。クマが残した痕跡、クマ棚やフンなどを注意深く観察していると、昔から山里では人間のすぐそばでクマが暮らしていたことが分かるのだが…。
このところ雪の日が多い。里もすっかり冬の装いになった。山ではニホンジカが標高の高いところから積雪の少ない低標高地へと移り始めている。
カモシカは積雪が増えても一年中同じあたりで暮らしている。子カモシカが積雪の中を歩きながら雪の上に出た植物を食べている。母親であるオレンジカモシカとは別行動だ。
今年生まれの子カモシカは、母カモシカより一回りは小さいので頼りなげに見える。積雪と寒さの冬を乗り切れるのかといつも心配になってしまう。子カモシカとニホンジカが至近距離でばったりと出会った。お互いに警戒して見合っている。そのうちにニホンジカがピーッと鋭く大きな声で啼いた、と同時に子カモシカは一目散に逃げていった。大人のカモシカであればこのように脅かされて逃げることはないのだが、子カモシカは当分の間このように逃げ隠れしながら暮らさねばならないのだろう。
今日は子カモシカとオレンジを同時に見ることができたが、お互いは300mほど離れているのでどちらも相手には気づいていない。それぞれに採食したり座って休息したりしていた。母子が久しぶりに出会った時にどのような行動をとるのか非常に興味があるのだが、タイミングよくその場面に出くわすことは難しい。今日は子カモシカとオレンジが接近することはなかった。
雪の中で松葉を食べ、その後立ったまま反芻をする子カモシカ
伊吹山は先日からしばらく雪化粧して白くなっている。今日は久しぶりの快晴で、山麓では暖かく気持ちの良い天気だ。
田んぼにサルの群れが出てきて、稲刈り後の落ち穂を拾って食べている。畦の植物を食べる個体や座って気持ちよさそうに日向ぼっこをしているもの、若いサルは2〜3頭で元気にじゃれあって遊んでいる。
サルが田畑に出てくると、農家の人たちが手をかけて作った農作物が食べられてしまうので、普段は見つけるとすぐに追い払うのだが、今日はあまりにもサルたちが心地よさそうにしているので、追い払いはやめて僕ものんびりと観察することにした。冬を目前に控えて畑にはほとんど作物がないので、サルたちが悪さをすることもない。
20頭余りのサルがいる。時折車が近くを通ると、サルたちは山手の林の中に姿を隠す。車が通り過ぎるとすぐにまた姿を現す。そんな風に2時間ほど過ごした後、別の場所へと移動して行った。
秋晴れの暖かな日差しのもとで、サルたちはいつもよりくつろいでいるような気がした。
秋晴れの1日、サルたちはのんびりと採食し、じゃれあって過ごす
五色の滝への登山ルートを渓谷に沿って空撮を試みた。2週間前の紅葉真っ盛りの時期だった。下流集落への飲料水の取水地であるダムから出発して、川を遡る。途中にオニグルミの林があって、毎年9月頃に、ツキノワグマがそれらの木に登り、枝を折ってクルミを食べる。折った枝が積み重なってクマ棚として残る。しかし、今年の伊吹周辺はクマがオニグルミの木にほとんど登っていない。山の中に他の食べ物が豊富にあったのだろう。秋になっても集落への出没はほとんどない。
今年の紅葉は今ひとつだった。紅くなるはずの葉が、紅くならずに枯れ葉色だ。それでも春の新緑と秋の紅葉は山の一大イベントであり、やはり美しい。
五色の滝は紅葉の木々に囲まれて、滑らかな花崗岩の岩肌を滑り落ちていた。
五色の滝からさらに山を登り、標高1,100mを超えた山頂近くに、地元で「かさ岩」と呼ばれる大きな岩がある。かつて豊臣秀吉の妻、寧々さんが一時的に隠れ住んだと地元で言い伝えられている場所だ。
かさ岩
この場所には、7年前に「伊吹源流の会」のメンバーと道無き道をかき分けて登った。「かさ岩」の近くの大岩の下には空洞があり、寧々さんが隠れ住んだのであれば、ここで雨風を凌いで寝泊まりしたのだろうと勝手に想像を巡らせた。
そのような五色の滝周辺も数日前からの降雪で、標高800m以上はかなり白くなった。いよいよ冬支度である。
ニホンジカは積雪を避けて山を下り、ツキノワグマは冬眠に入る。大型の獣で残るのはカモシカだけだろう。訪れる人もほとんどなく、五色の滝はしばしの冬眠に入る。
ニホンジカの聴力は人間とは比べ物にならないほど優れている。人間の僅かな足音を鋭くキャッチして、いち早く逃げていく。最初に物音に気づいて逃げるのは雌ジカと子ジカである。雄ジカは同じ距離のところにいても、なぜか警戒しないことが多い。雄と雌で聴力に差があるのだろうか?
外見上はほとんど同じ耳に見えるから、聴力の差とは考えにくい。雌ジカは子ジカを連れていることが多いので、出来るだけ遠くから危険を回避しようと敏感になっているのだろう。その点雄ジカは子育てには関与しないので、雌ジカと比べて大胆に振舞っているのかもしれない。
雄ジカは近距離で採食中
オレンジ色をした個体識別できるカモシカについては度々書いているが、ニホンジカにもはっきりと個体識別できる個体がいる。そのシカには、体に大きな白斑がある。普通夏毛のシカには鹿の子模様と呼ばれる小さな白斑がたくさんあるのだが、このシカには肩から背中にかけて明らかに他とは違う数個の大きな白斑が付いている。おまけに左目だけまつげが白い。
この白斑ジカに出会ったのは2年半ほど前だ。個体識別が出来ると、その個体の動向がいつも気になってしまう。3ヶ月ほど姿を見なかった時には、もう死んでしまったのかなと思ったりもしたのだが、再び姿を現してからは割と頻繁に出現している。
白斑ジカは、この間に1回だけ(昨年)子どもを産んで育てた。子ジカには母ジカのように大きな白斑はなく、普通の体色である。その子ジカは今年も母ジカと一緒に行動している。
白斑ジカをいつまで追い続けられるのか、オレンジカモシカとともに気になる存在だ。
背中周辺の大きな白斑と左目のまつげが白いニホンジカ
第29回環動昆大会にて「湖国滋賀で展開される有害生物管理のいま」 の公開セミナーが開催されます。弊社からは須藤明子が参加、「科学的・計画的捕獲によるカワウ管理」と題して講演を行います。
■主催:公益社団法人福井県獣医師会 野生動物・自然環境保全事業委員会
■日時:2017年11月19日 13:00~16:00
■会場:滋賀県立大学・交流センターホール(H会場)
■お問い合わせ:第29回日本環境動物昆虫学会大会実行委員会
ここ数日いい天気が続き、夕方になると山が夕陽を浴びて赤く染まっている。あまりに綺麗なので、すぐにドローンを飛ばして赤く染まる山に近づいて撮影を試みた。近づくほどに紅葉が色褪せて見える。標高800m以上の紅葉は最終段階になっている上に、10月後半に台風が2つも接近し、多くの木が葉を落としてしまっている。
紅葉は高いところから低標高地へ、谷奥から谷の口へと進んでいる。集落周辺も点々と紅葉が始まっている。紅葉と緑の木々のコントラストもまた綺麗である。
カモシカやニホンジカは紅葉の葉を味わっていることだろう。紅葉の味はいかがなものだろうか。
ドローンで空から訪問。山麓から尾根までの紅葉の変化
以前、雑誌の表紙用に写真を送った時、編集者から「美人ですね」とだけ書かれたメールが返って来た。普通なら何のことか分からないのだが、僕自身もその写真を見て「美人」だと感じていたので、すぐに写真に写っている動物のことだと分かった。
写真の主はSteenbok。中型犬くらいの大きさの小型のアンテロープだ。鼻筋にシャープな黒い模様があって、より一層顔が整って見える。見れば見るほど、Steenbokが「美人」に見えてくる。
「わたし美人かしら?」