木を揺らして遊ぶ?ツキノワグマ

このところ気温が上がり、夏のような暑さだった。今日は標高900mほどの山に登っているので少し肌寒いくらいで気持ちがいい。
早ければカモシカの子どもが生まれている頃なので、母子カモシカを探しに来た。
目的の場所に到着すると、ガサゴソと何かが逃げて行った。付近を探すと昨年の子どもを連れた母子ジカが逃げていくのが見えた。
シカは音にものすごく敏感だから、物音をさせず慎重に撮影機材を準備する。他のシカには気づかれずに準備は整った。
8:30頃、対岸斜面にいる雌ジカが時々斜面上方を注視している。何かがいるのだろう。8:40、その方向にツキノワグマを発見。低木に登って若葉を食べている。シカが気にしていたのはこのクマなのだろう。200m近く離れているが、シカの耳なら足音を察知できるだろう。そのうえ音源の主までおよそ判断しているようだ。シカやカモシカが大きな音を立ててもほとんど逃げることはないが、僕が物音をさせると姿を確認しなくても逃げてしまう。
クマは移動して別の木に登った。どういう訳か、ゆっくりと木を揺さぶっている。ふわーんふわーんとした感触を楽しんでいるように見える。遊んでいるとしか思えない行動だ。10:00、クマは移動し、尾根を越えて見えなくなった。
間もなくカモシカの警戒声がして、クマの消失地点の80mほど下にカモシカが現れた。以前に同じシチュエーションでカモシカの子どもが襲われたことがあった。そのシーンはDVD作品「ツキノワグマ」に収録したが、また同じことが起こるのかと一瞬緊張した。今回はカモシカに子どもはいなくて単独なのでそれほど危険はない。カモシカはクマが行った方向を見ていたが、やがて落ちついて採食を始めた。
11:20、別の場所にクマを発見。林の中で枝葉に隠されて見えなくなった。
先ほどのカモシカは平らな岩の上で昼寝を始めている。



身体を揺らして、故意に木を揺さぶっている

アナグマは巣穴の整理、フクロウは高みの見物

6:50、アナグマの巣穴が見えるところに到着。アナグマの子どもがそろそろ巣穴から顔を出すのではと期待して待つ。
9:30、ようやく巣穴からアナグマが出てきた。一旦巣穴へ入った後、今度は後ろ向きにお尻から出てきた。巣穴から土や枯れ枝を掻き出している。これを何度も繰り返した後、9:40に巣穴から離れて、いつものように左手の尾根を越えて見えなくなった。これまでは巣穴へ枯れ枝や葉を掻き入れていたのだが、今日はなぜか掻き出してから去っていった。残念ながら子供が出てくることはなかった。
11:40、フクロウがこもった小声で鳴く。僕の頭上近くの木の上から声がしている。枝葉が混み合っていて姿を見つけられない。ゴロスケホッホと3回ほど鳴いた後、羽音のようなブヮーブヮーという低い小さな声を出していた。高みから僕を観察しているに違いない。
帰りに声のしていたあたりを真下から見ると、フクロウが木の枝から僕の動きを見下ろしていた。

小春日和に奥山散策



太くて大きいワラビが林立する

今日は、地元の人がほとんど行くことのない山奥へ山菜採りに出かけた。清冽な水が流れる沢筋を遡る。ワサビが白い可憐な花を咲かせている。ミズ(ウワバミソウ)もある。岩場にギボウシが伸び始めている。
人の採集圧を受けていない山菜は太くて大きいものが多い。ワラビは茎の太さが1cmもあるのが林立している。
昼食時、対岸の山の斜面にツキノワグマを見つけた。木に登り鮮やかな新緑の葉を食べている。上空高くにイヌワシが舞っている。
夕方帰宅し、ミズとギボウシを塩水でさっとゆがき、タラノメは木灰を入れて茹でる。ゴマドレやマヨネーズなどであえて食べる。ワサビは少量を生のままで肉類と一緒にいただく。ピリッと辛みが効いてさわやかだ。ワラビは木灰で一晩アクを抜くので、明日以降の楽しみだ。

小春日和に里山散策

春の野山は気持ちがいい。
今が一年のうちで最も過ごしやすい気候だ。花が咲き、夏鳥たちのさえずりが賑やかだ。オオルリやクロツグミ、キビタキが競うようにさえずっている。遠くからツツドリの筒を叩くようなポポポポという声も聞こえてくる。太く大きなシマヘビが日向ぼっこをして体を温めている。
小高い丘の地上に巣穴を発見。10m四方の中に出入り口が9箇所もある。80mほど離れたところにも巣穴を発見。出入り口は6箇所だ。出入り口にハエがたくさん飛び回っているので使っているかもしれない。巣穴はいずれも出入り口の直径が20〜30cmで、キツネかタヌキまたはアナグマが使用している可能性がある。
さらに80mほど行ったところにも5箇所の出入り口がある。またさらに80mほど先に2箇所の出入り口がある。
2番目に発見した巣穴の近くに戻った時、ガサゴソとかすかな足音が聞こえた。見ると1頭のアナグマが歩いて近づいてきた。6箇所の出入り口のうち一番端の穴へ入っていった。
午後はこの巣穴を少し離れたところから観察と撮影。
待つこと40分。アナグマが巣穴から顔を出した。近くの枯れた枝葉を集めて巣穴へ引き込んだ。出入り口を隠したのだろうか?
2分後、キツネが僕のいる方向へ歩いて来る。70mほど手前で立ち止まった。僕の気配を感じ取っている。方向を変えて去っていった。キツネもこのいずれかの巣穴を利用しているのだろうか?
視線をアナグマの巣穴へ戻すと、アナグマが巣穴から出て歩いている。尾根を越えて見えなくなった。
2時間後の17:15、アナグマが戻って来た。巣穴の10m手前で座り込んで、しばらく毛繕いをしてから巣穴へ戻った。



巣穴へ戻るアナグマ

アナグマは食事に夢中



鼻先と前脚で地面を掘り、ミミズを探して食べる

このところ毎日のように雨が降り、肌寒い日が続いている。サクラはこの雨の間に満開を迎え、今はほとんど散ってしまった。
家の外は出るのも億劫な雨だが、こんな日にも集落脇の田んぼの畔で餌を探すアナグマがいた。昼間に堂々と、まわりの様子を気にするふうもなく餌探しに夢中になっている。草むらを鼻先と前脚で忙しそうに耕して、時々何かをくわえて食べている。
食べているのは、太くて大きなミミズだった。

「写真でふりかえる伊吹山物語」発刊記念講演会

現在、伊吹山文化資料館(米原市春照)で開催中の企画展『写真でふりかえる伊吹山物語(2015年3月21日〜5月6日)』にて、来る4月18日に弊社の須藤明子が記念講演を行います。講演は申し込み不要で参加費も無料です。お気軽にご参加ください。

□詳細はこちら

「写真でふりかえる伊吹山物語」発刊記念講演会
■日時:2015年4月18日(土)13:00~15:00
■場所:上野老人憩いの家(米原市上野)
■講演:
 須藤明子「伊吹山のかけがえのない自然とその保全」
 高梨純次「伊吹山の仏像が語る信仰」

クマは昼寝

4月12日8時、タムシバの木に登っているクマを発見。このところ毎日クマを見ている。クマたちは今、タムシバの花を盛んに食べている。
8:20、別の所でタムシバに登るクマを発見。8:30、さらに別の1頭が地上を歩いている。9時、タムシバに登っている4頭目のクマ発見。花をたくさん付けた食べ応えのありそうな大きな木に登っている。
こんな風にクマを見ていると、クマがゴロゴロとたくさんいるように思われるかもしれないが、広い山並みのあっちに1頭こっちに1頭といった具合にポツリポツリと見つかる程度だ。このあたりは森林に覆われているので、発見するのも追跡するのも難しい。実際にはこの何倍ものクマがいるだろう。
9:30、クマタカが対岸斜面を旋回上昇して尾根を越えて行った。
9:55、地上で採食するクマ発見。5頭目にしてやっと撮影できそうなクマを発見できた。僕のいる所から約200m。地形から見るとさらに近づくことができそうだ。
撮影に集中する。近い時にはクマは約50mのところにやって来た。しかし、木やブッシュが邪魔してなかなか撮影が出来ない。クマは昼寝と採食を繰り返している。冬眠明けのためかよく眠る。採食と昼寝の時間は半々くらいだ。
機材を片づけ始めた時、6頭目のクマを発見した。これもまた地上で眠っている。

昨日のクマ



ササのタケノコを食べるツキノワグマ

8時に昨日の観察地点着。どんよりと曇り、今にも雨が降り出しそうだ。まもなく、昨夕最後まで見ていたほぼ同じあたりにクマ発見。昨夕からほとんど移動していない。このあたりで眠っていたのだろう。昨日同様、新芽を食べている。ササのあるところではタケノコを食べている。

11時前には姿を見失った。雨が降り出した。付近にいると思うのだが、ちょっとしたブッシュや林の陰で姿が見えなくなることが多い。13:35になってようやく姿を現した。やはり遠くには行かずにブッシュの陰で眠っていたのだ。採食と移動を繰り返す。
雨本降りが続く。クマは平気な様子で相変わらず採食を続けているが、こちらは雨にめげて退散する。

冬眠明けのクマ

4月に入りタムシバが咲く季節になった。ツキノワグマたちは冬眠から目覚め、活動を始めている頃だ。今年はまだクマ探しに行けていない。しかし、今年になって初グマはすでに見ている。3月9日に集落近くの川沿いを歩いている痩せて毛づやの悪い1歳のクマを偶然に発見した。前日に小さな子グマがサル捕獲檻にかかっていたらしいのだが、僕が見に行った時にはいなくなっていた。クマの大きさや発見場所がサル檻からそれほど離れていないことから、同一のクマにほぼ間違いはない。10cm四方の網目を抜け出たか、出入り口をうまく持ち上げて逃げたかのどちらかのようだ。昨秋このあたりでは、集落にある柿を食べにクマが大出没した。子グマの痩せこけた様子や行動から、母グマはいない。おそらく昨秋大出没した時に母グマは捕獲されてしまったのだろう。子グマは空腹のあまり冬眠もそこそこに活動を始め、サル檻のサツマイモに引き寄せられて捕まったのだ。一旦はうまく逃げ出したものの、4月2日になって目撃場所近くで子グマの死体を発見した。ほとんど骨と皮だけになっていた。僕が目撃してから数日のうちに死んでしまったようだ。母親なしでは冬を乗り切ることは出来なかったのだ。



タムシバの花を食べるツキノワグマ

今日4月9日、遅まきながらクマ探しに出かけた。昼前に観察ポイント着。すぐに1頭目のツキノワグマを発見。予想したとおり、タムシバの木に登って花を食べている。12:20頃に2頭目を発見。地上の灌木の根元で眠っている。冬眠明け間もないので食い気より眠気のようだ。14:30頃に3頭目を発見。地上で灌木の新芽を食べている。3頭は離れた別々の場所にいるが、同時に見えている。眠っていたクマも起きて採食したり、また眠ったりを繰り返している。1頭目のクマは別のタムシバの木に登り変えている。たくさんの白い花が咲いてきれいだったタムシバの木は、クマが登ったあとには花がかなり食べられて遠目には目立たなくなっている。2本目の木も見る見る色あせていく。16時頃には1頭目と2頭目の姿が林の中で見えなくなってしまった。3頭目は見え隠れしながらもまだ採食を続けている。発見した時の場所から100m以内をうろついている。18:30少し薄暗くなり始めた。今日の観察は終了。