オオタカの繁殖 抱卵期2024年4月1日



オオタカは産卵して抱卵中だった。雌が抱卵し、雄は近くの木で巣のまわりの見張りをしている。
雄はしばらく止まりを続けた後、伸びをして飛び出して行った。何かを見つけて追うというふうではなく、ふらふらと右へ左へと飛行して獲物を探している。
そのうちに狙いを定めて一直線にスピードを上げた。地上近くで反転して降下して見えなくなった。狩りの結果が見えないのは残念だが、地上付近まで高度が下がると視界を得るのは難しい。

ここの周辺にはドバトの数千羽の群れが飛び回り、農耕地に降りて採食している。オオタカはそのドバトを狙うことが多い。この狩りの結果は不明だが、数時間後には獲物を巣の近くに運んで来て雌に渡した。
雌が獲物を食べている間、雄は雌に代わって抱卵をした。
雌が獲物を食べて巣に戻って来たのは25分後だった。そのうが膨れて獲物を食べたことがわかる。

河川沿いにはオオタカやノスリ・ハイタカ・チュウヒ・ハイイロチュウヒ・トビ・ハヤブサ・チョウゲンボウなどたくさんの猛禽類が狩りをしながら暮らしている。
農耕地や市街地が広がるエリアの中であっても、河川沿いは林や草花が茂る野生動物の素晴らしい生息場所である。

しかし、近年この河川敷の林が急速に失われている。
ここのオオタカも最初に使用していた大木の巣は、刈り払われてなくなってしまった。200mほど巣の場所を移動して繁殖している。そしてまたこの巣の近くまで伐採が進んでいる。
かつてキツネがカヤネズミを狩っていた場所も整地され、芝生のような草と平坦な地形になってしまった。カヤネズミや多くの野生動物が生息できる場所ではなくなった。
山から河口まで続く河川、平野部では唯一残された野生動物の生息地を残すことは重要なことだと思う。

オオタカの繁殖生態 造巣期2024年3月



オオタカは今巣造りの真っ最中だ。雄がせっせと巣材を運び巣を整えている。雌は少し離れたところに止まって雄の働きぶりを見ているだけで、たまにしか巣材を運ばない。
トビやカラスが巣の近くに来た時に、追い払いに出動するのも主に雄の役割だ。カラスが近づいてくるのを見つけると、姿勢を低くしていつでも飛び立てる体勢でカラスの動きを目で追っている。カラスが巣から50m程度の範囲に入った時、雄のオオタカが飛び立った。それに気づいたカラスは方向を変えて逃げ出すが、猛スピードのオオタカに追いつかれ、攻撃をかわしながら逃げていく。カラスが少し巣から離れるとオオタカは攻撃をやめる。
オオタカの攻撃を受けるので、トビやカラスは出来るだけその場所を通らないように意識しているように見えるのだが、トビやカラスはたくさんいるので知らずに近づく個体がいたり、ついうっかり通過してしまったりするのでオオタカは巣の防衛にも忙しい。雄が狩りに出かけている間にカラスが接近した時には、雌がカラスを追い払った。

産卵前のこの時期は、雌は木に止まっていることが多いので、ほとんど狩りはしていないだろう。雄は巣造りの合間に獲物を見つけると遠くまででも飛んで行って狩りをしている。
1kmほど先のドバトの群れを見つけて一直線に向かって行ったことがあった。ドバトの群れの上から反転するように急降下して群れに突っ込んだが、高度が下がって見えなくなってしまった。その後獲物を持ち帰らなかったので狩りは失敗したようだった。
また、2〜300m離れたところへも急降下したがこれも失敗したようだ。手ぶらで巣の近くへ戻って来た。その間、雌のほうは木に止まったままだった。雄だけが忙しなく動き回っている。
この忙しさの中でも雄が獲物を雌に運べないようであれば、これから始まる産卵と子育てはうまくいかない。雌は、雄が十分な獲物を運んでくるかどうかを見極めているのだろう。

Vol.21 猛禽類の生存戦略

人工物に止まるクマタカ

猛禽類は、個体数の減少や繁殖成功率の低下など、将来が危ぶまれる種類が多い中で、環境の変化にうまく順応してしたたかに生きる種類も少なからずいる。

猛禽類は警戒心が強く、人間とは距離を置いて生活していると考えられていたが、近年では都市部のビル街や市街地の公園で繁殖するものなど、人間の往来の激しい場所へ進出する個体が見受けられるようになった。オオタカやハヤブサの仲間は人間が作り出した新しい環境に順応して繁殖を始めている。

猛禽類の生存を左右する主な要因は、獲物となる動物の豊富さである。彼らは、都市部や郊外で増えているドバトやスズメなどに目をつけたのだ。中型のオオタカやハヤブサはドバトを主に捕食し、小型のハイタカやツミなどはスズメや他の小鳥を捕食する。

本来岩場で繁殖するハヤブサは都市部の高層ビルで繁殖し、森林性のオオタカの仲間は公園や郊外の林に営巣する。人間への警戒心を少しずつ和らげながら進出してきたのである。

市街地に進出する猛禽類がいる一方で、イヌワシやクマタカは山地に住み続ける。彼らはノウサギやヤマドリ・リス・テンなどを獲物とするために、市街地への進出はありえないだろう。イヌワシやクマタカは、昔ながらの自然環境が残る山地帯で生活し続けるしかないのだ。昔ながらの自然環境とはいっても、近年では奥山にまで開発の波が押し寄せ、彼らの生活も少しずつ変わってきている。

山地に住むクマタカだが、山の中にそびえ立つ巨大な人工物である高圧鉄塔をよく利用する。まわりの樹木よりも何倍も高い鉄塔は見晴らしが利くので、獲物を探すのにも周辺の見張りをするのにも非常に都合がいい。しかし、高圧鉄塔は感電の危険性がある。実際に感電して黒焦げになったクマタカの死体も見つかっている。飛行中に高圧線にぶつかる危険性もあり、海外の国立公園などでは、高圧線によく目立つ目印をつけたり、鉄塔の感電する恐れのある部分に止まれなくして、代わりに安全な位置に止まり木を取り付けているところがある。

高圧鉄塔はイヌワシにも利用価値の高いものだと思えるが、イヌワシが鉄塔に止まったのを一度も見たことがない。

猛禽類も環境の変化を有利に利用できるように少しずつその環境に順応してきている。獲物が豊富で営巣地が確保できるのであれば、少々の環境変化は受け入れてしまうのだ。しかし、市街地やその郊外の環境の変化は非常に早く大きい。1年後には営巣地や獲物が同じところで確保できるかどうかわからない。非常に不安定な生息地であることは間違いない。

人工物をほとんど利用することのないイヌワシは、環境の変化にも弱い猛禽だと考えられる。その分イヌワシの生息する山地帯は、近年の機械化された奥山開発に圧迫されてはいるものの、市街地周辺に比べると環境の変化は比較的ゆっくりしたものである。

環境への適応力が高い猛禽と、適応力は低いが変化の小さい生息地に住む猛禽、どちらの選択が有利だろうか?

個としては後者の方が、種としては前者の方が有利であろう。

さて、選択の余地があるならば、自分はどちらを選ぶだろうか。