雛は孵化後50日、順調に成長している。
今日は子ジカを2頭捕獲したようだった。夕方に捕獲した子ジカは、上昇気流がなく下降気流のために巣まで高度を上げることができずに地上に置いたままになった。
獣に食べられなければ、明日再度運搬に挑戦するだろう。
カテゴリー: 伊吹の野生だより
伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年5月19日
雛は孵化後40日になった。全身が白い綿毛姿だったのが、翼と尾羽に黒い羽毛が伸び始めて背中は黒く見えるようになった。頭の大きさは雌ワシと変わらないくらいになっている。遠くからでも雛の姿がよく見えるようになった。
10時半頃から雨がポツポツと降り始めたが、オーバーハングの下にあるこの巣には、雨はほとんどかからないだろう。観察を終了した13時まで、雌ワシは巣から離れることなく雛に寄り添っていた。
雄ワシは巣のまわりが見える少し離れた場所に止まって獲物を探している。時々飛び立って、しばらくするとまた見晴らしの利く木や岩に戻ってくる。今日はまだ獲物にはありついていない。
雌ワシが巣を離れずにいることから、巣にはまだ獲物が十分にあるのだろう。雌ワシが狩りに出なくても十分な獲物があるのが理想的だ。
雄ワシには大変なプレッシャーだが頑張ってもらおう。
第4回伊吹山のイヌワシ観察会
朝8時、米原駅を出発。曇りだが空は比較的明るい。普段なら伊吹山が見える場所を通るが、山のほうはどんよりと暗く雲がかかっている。
今年はドライブウェイのすぐ近くに営巣しているので、少しの霧の晴れ間があればイヌワシが姿を現してくれるかもしれない。なんとか視界が得られることを祈るしかない。
今回は米原市の平尾市長も観察会に参加され、一緒のバスに乗って伊吹山へ向かいました。出発前に市長からご挨拶をいただき、米原市のシンボル的な存在のイヌワシと伊吹山の自然環境への市長の熱い思いを聞かせていただきました。

米原市の平尾市長からご挨拶を頂いた
9:45頃、山頂駐車場に到着。まずはトイレに行く人と観察地点に向かう人に分かれて皆がバラバラに出発。トイレの方向と観察地点の方向を伝えたが、20m先が見えない霧の中で全員が観察地点に到着するのかさえ心配になってきた。
皆が観察地点に到着してホッとしたものの霧が晴れる兆しはない。巣は見えないが150mほど下で小雨と霧の悪天候に耐えて抱雛を続ける雌ワシに思いを馳せながら、我々もイヌワシと同じ空間を共有して待ち続ける。

霧の中での観察会

N Uさんが20回分ほどの入山協力金を投入されたのに驚きと感謝
残念ながら霧が晴れることなく正午前に観察を終了。雨足が強まって天候の回復は見込めないと判断して下山。麓にある伊吹山文化資料館でイヌワシ幼鳥の剥製(2019年に巣立ち後半月ほどで落鳥)を見学後、レクチャールームでイヌワシとアフリカの動物の話をしました。

イヌワシと野生動物の話

イヌワシ幼鳥の剥製展示
帰りにも伊吹山はすっぽりと雲の中に入ったままでした。次回こそは天候に恵まれ、元気に飛び回る幼鳥の姿が見られることを期待して、我々は伊吹山を後にしました。
伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年5月5日 雛の姿を確認
新緑が眩く夏鳥たちの囀りが賑やかな季節、雛は孵化後25日程度。そろそろ雛の姿が遠くからでも確認できるかもしれない。
抱卵期から育雛初期には、雄ワシは巣から少し離れたところに止まって周辺を監視していることが多かったが、今は雛の食欲が旺盛になって狩りに忙しいらしく、周辺に姿は見当たらない。
しばらく経って雄ワシが現れた。下を見て丹念に獲物を探している。今日はまだ獲物にありついていない。
雌ワシが巣の上に立って雛へ給餌を開始した。雛の姿が一瞬でも見えるかもしれない。超望遠レンズ越しに目が離せない。
給餌が一段落した頃、白い綿毛に覆われた雛の翼が一瞬巣の上に現れた。体のバランスを取るために翼をバタつかせているところを見ることができた。結構大きくなっている。黒い羽毛が伸び始めているようにも見えるが、遠くて不鮮明な画像なのではっきりと確認はできない。
巣から400mほど離れたところでツキノワグマが木に登っていた。芽吹き始めた新芽をガンガン食べ続けている。イヌワシの生息地にはクマも多い。イヌワシとクマの分布はほぼピッタリと一致している。どちらも豊かな自然環境が残された地域に暮らしている。スギやヒノキの人工林が増えた地域からイヌワシもクマも姿を消しつつある。
午後になって雄ワシが姿を表した時、獲物を食べてそのうが大きく膨れていた。巣への出入りを確認できなかったが、獲物を巣へ運んだ直後なのかもしれない。
雄ワシはお腹がいっぱいになっているが、食欲旺盛な雛がいるので獲物を探して忙しく飛び回っている。
探餌飛行を続けていた雄ワシが急降下を開始した。沢部の落葉広葉樹林の中へと降りて行った。最後はスピードを少し落として翼を少し広げ、エレベーターのように真下へ降下した。このような襲い方をするのは相手が哺乳類のことが多い。
林の中に消えてから待つこと20分。林の中から現れた雄ワシは脚にノウサギをしっかりと掴んでいる。手頃な風が斜面を吹き上げている。雄ワシは上昇気流に乗ってどんどん高度を上げて巣へ獲物を運んで行った。
今日は2回も獲物を捕獲した。雌ワシの給餌の時に雛の姿を3回見ることができた。元気に動き回って順調に育っている。
伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年4月29日
雛が孵化したのを確認してから19日が経った。遠くからの観察でもそろそろ雛の姿が確認できるのではないかと期待して、雌ワシが立ち上がって給餌を始めるのを待った。
雄ワシは巣から少し離れたところで、止まりや飛行を繰り返している。
8:55、雌ワシが立ち上がった。雛の白い綿毛が見えないか望遠レンズ越しに目を凝らす。雌ワシは明らかに給餌をしているが、巣材が盛り上がっていて雛の姿は見えない。
10分ほどで給餌は終わり、雌ワシは雛を保温するために座った。次の給餌を待つしかない。雛が巣の端に近づいて首を伸ばしてくれるとここからでも姿が見えるはずだ。
天気は下り坂。山は徐々に霧がかかり始めた。11時頃には巣は霧に覆われて見えなくなってしまった。巣の下100mまで深い霧に覆われた。今日の雛確認は諦めるしかない。
霧の多い伊吹山で、今年の巣はかなり高標高にあるので霧に覆われることが多い。霧の中では獲物の運搬も困難なのではと思えるのだが…
午後になって、霧の中から雌ワシが現れた。抱雛で強張った体をほぐすのと巣の外で糞をするために巣から出て来たのだ。周辺を少し飛行した後、旋回上昇して霧の中へと入って見えなくなった。巣へ帰って行ったのだろう。
霧で地形が見えないので方向感覚を失ってしまいそうだが、イヌワシは人間とは比べ物にならない鋭い方向感覚を持っているのかもしれない。
第4回伊吹山イヌワシ観察会 参加募集終了
「第4回伊吹山イヌワシ観察会」はたくさんの皆さんの参加申し込みをいただき定員となりました。
募集を終了します。
行き違いで申込みされた方には申し訳ありません。
参加受け付けについてはメールで返信させていただきます。
次回は7月14日を予定しています。
ツキノワグマ、くくり罠で手のひら切断か
くくり罠での錯誤捕獲が非常に多い。
近年のニホンジカの激増で、様々な方法でシカの捕獲が実施されている。その中で、くくり罠による捕獲は無差別的であり、仕掛けられたくくり罠の数も多いので、シカ以外の野生動物がたくさん犠牲になっている。
山の中で見つけたツキノワグマは、右前脚の手の半分から先がなくなっていた。右前脚は爪がないので幹を抱え込むようにして木を登っていた。
そのクマの左耳には黄色のタグが付いている。錯誤捕獲されてタグを付けて放獣した個体である。黄色いタグは滋賀県内で捕獲されたクマだと聞いた。
錯誤捕獲されたクマを殺さず放獣したが、手を締め上げたくくり罠で手の先端部はダメになってしまったのだろう。
このクマは一命をとりとめた。県によっては錯誤捕獲されたクマは殺すところも多い。
林道脇には点々とくくり罠が仕掛けられている。免許を持った人1人当たり30個まで罠を仕掛ける事ができる。1つの県の中でも何千個も仕掛けられているだろう。
捕獲目的のシカだけが捕まるのではない。くくり罠の輪の中に脚を突っ込んだらキツネやタヌキなど中型以上の動物は罠にかかってしまう。
仕掛けが作動する重さを調節できる罠も出てきているが、カモシカやクマなど同等以上の体重の動物には意味がない。相変わらず今でも脚先を無くしたキツネやタヌキの新たな個体が現れる。仕掛けの作動調節は、うまく機能しているとは思えない。走っているキツネの脚が仕掛けの踏み板を踏み抜く力と、静かに歩いているシカが踏み抜く力に違いはあるのだろうか?
以前アップしたくくり罠関連のものは以下にあります。
脚を失った野生動物。くくり罠との関係
丘の上のアナグマハウス 4月11〜15日
第4回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ
「第4回伊吹山のイヌワシ観察会」を2024年5月12日(日)に開催します。
眩いばかりの新緑に包まれた伊吹山で孵化後1ヶ月の雛を育てるイヌワシペアの行動を観察します。
巣へ獲物を運ぶ姿を観察できるかもしれません。
周辺にはツキノワグマやニホンジカ、カモシカなどが生息し、様々な野生動物を探索します。
渡来した夏鳥の賑やかな囀りにも注目。
観察会は1〜2ヶ月に1回実施する予定です。
次回は2024年7月14日(日)を予定しています。
第4回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内
参加申込書
第4回イヌワシ観察会参加申込書
「巣に近づかないで」という報道を見て巣に近づくカメラマン4人(2024/4/18)
米原市は早過ぎたプレスリリースを悔やんでいることだろう。イヌワシ目当てのカメラマン達に早めに知らせてあげようという親切心は踏みにじられた。
4月18日の朝、報道によって立入禁止区域の近くでイヌワシが営巣していることを知ったエビスヤ(伊吹山の山小屋)らカメラマン4人が立入禁止区域に入ってカメラを構えている。
雄ワシは少し離れたところに止まってカメラマン4人の様子を見ているようだ。
雌ワシは巣の中にいて、巣からドライブウェイは見えないのでカメラマンの存在には気づいていない。2時間ほど経った頃、雌ワシが巣から出た。
その後、雌ワシは巣への出入りを何度も繰り返した。雛は孵化して1週間ほど、この時期雌ワシは雛の保温や給餌でほとんど巣にいるのだが、頻繁に巣への出入りを繰り返す行動は少し変だ。
その様子を見ていた雄ワシは、緊張が緩んだのか雌ワシのそばに飛んできた。交尾の後、雄ワシは飛び立ち巣へ向かったが、巣には入らず5mほど横に止まった。雌ワシが巣材を取って巣へ戻った。雄ワシは巣へは入らずに飛び去った。
その後も雄ワシは巣のそばには来るが巣に入ることはなかった。巣への出入りを繰り返していた雌ワシはどこかへ飛び去った。
雌ワシが巣に戻って来たのはドライブウェイで粘っていた2人のカメラマンが帰って間も無くの17:50だった。
かなり心配したが、気温は高めなので雛は大丈夫なようだ。母ワシは給餌をして抱雛に入った。抱卵期なら繁殖失敗となるところだった。
巣からドライブウェイが見えないのが、せめてもの救いだ。
雛が小さくか弱い時期を乗り切ってくれればいいのだが・・・。
エビスヤ達が立っていたこの場所は、そもそも道路交通法の第8条で規定された立入禁止区域である。さらに今年はイヌワシペアが繁殖のための重要な場所として使用している。人がいなければドライブウェイすぐ脇まで止まり場所として利用している。これから雛の成長に伴い餌の受け渡しの中継地となったり休息場所となったり大いに利用する場所だ。そんな場所にカメラマンが陣取ってしまうと、イヌワシのストレスはかなり大きい。
イヌワシの優先エリアとして、人間は後退すべきだと思う。
ひとりひとりの良心と、多くの人の見守りによって、今年の繁殖が成功することを祈る。
伊吹山のイヌワシ、今年の繁殖が成功しますように
伊吹山のイヌワシペアは、まさかこの巣をもう一度使用すると思わなかった。ドライブウェイ直下でかなり近い。ドライブウェイにたくさんのカメラマンがいる時にも巣材を運ぶことは時々あった。
しかし、神経質になる繁殖期には利用することはほぼなかった。7-8年前にこの巣で一度だけ産卵したことがあったが、冬期閉鎖が終わりドライブウェイ開業の頃に繁殖は失敗した。この時は、たくさんのカメラマンが訪れると繁殖が失敗する可能性が高いと思いながらも、なす術がなくそっと見守った。声を上げたところで、何も対策はできなかっただろう。
今回は状況が違う。昨年の「イヌワシ子育てライブ」で伊吹山のイヌワシの生活の厳しさ、せめて人の直接的な影響はできる限り避けなければならないことを多くの方々に伝えられたと思う。今なら思い切ってイヌワシの営巣場所を公開してでも、繁殖に重要な場所への人の立ち入りを制限してみんなで見守ることが可能だと思えた。
イヌワシが繁殖に利用している重要な場所への立ち入り制限。その場所は元々、道路交通法で歩行ができない場所であり、イヌワシや貴重植物を守るために立ち入り禁止とされている場所だ。これまでも看板がいくつも立てられているが守られていない。
その場所を今年はイヌワシが繁殖のために占拠した。我々は少し後退して見守ろうではないか。イヌワシが安心して子育てをできたなら、伊吹山の大空に、三つ星を輝かせた若ワシが姿を見せてくれるだろう。
その時をみんなで心待ちにしたい。
イヌワシにストレスのない子育てが続くように、皆さんの協力をお願いします。