オレンジカモシカがアナグマを威嚇

オレンジカモシカの母子は元気に過ごしている。子カモシカの動きはしっかりとしてきた。これだけ力強く動けるようになると、イヌワシに狙われる心配はほぼ無くなった。しかし、ツキノワグマに襲われる危険性はまだ当分続く。
先日、やや大型の白い犬が山の中にいるのを見つけた。狩猟犬と思われるが、飼い主からはぐれて野生化している。その日にも、ニホンジカの子どもを捕まえたようだった。母ジカがその犬のまわりを回って、心配そうに様子を見ていた。

子カモシカには、まだまだ危険がいっぱいだ。母親のオレンジカモシカにピッタリとくっついて歩き、すぐにお腹の下に入ろうとする。すでに恐ろしい思いをしたのかもしれない。子カモシカがお腹の下に入ってくるので、オレンジは歩きにくそうだ。

オレンジが不意に立ち止まり、草むらにいる何かに威嚇し始めた。子カモシカもオレンジの横に来て、その辺りを見つめている。オレンジが飛びかかるように威嚇した時、草むらからアナグマが飛び出して転げ落ちるように斜面を下った。アナグマは、少し下りたところで草の中から顔を出してオレンジのほうを見ていた。

カモシカは、普段はおっとりとして大人しく見えるのだが、けっこう気性は荒い。以前、通りかかったキツネを追い払ったり、ツキノワグマを追いかけているのを見たことがある。


カラスの群れが出産直後の子ジカを襲う

5〜6月ニホンジカの出産シーズンだ。山を歩いている時、目の前の草むらにニホンジカの子供がうずくまっているのを見つけた。生まれて1〜2日くらいだろう。
草の中に丸くなって、大人しく隠れている。眠っているように見えるが、耳が周囲の物音を聞くために動いている。僕との距離は2m、いつ逃げ出そうかとタイミングを見計らっているのかもしれない。まだ早く走れるわけではないので、見つからないように動かないことが1番の安全策なのだろう。
少し離れたところから様子を見る。しばらくすると子ジカは立ち上がったが、頭は下げて草の中に入れたままだ。数十センチ移動して座った。
あまり長居をすると、母ジカが戻って来れないので、僕はその場を離れた。

別のところにも子ジカを連れて歩く母ジカの姿をが見られた。これから出産するお腹の大きな雌ジカもあちこちにいる。
十数羽のハシブトガラスが騒いでいる場所を双眼鏡で見ると、そこに雌ジカが立っているのが見えた。雌ジカは周囲に舞い降りるカラスを追い払おうと躍起になっている。
雌ジカのすぐそばに降りたカラスが草陰で何かをつついて食べている。出産直後の子ジカが犠牲になったのか、それとも胎盤を食べているのだろうか。
1時間以上が経った頃、雌ジカは諦めたのか少し離れたところに座り込んだ。カラスは入れ替わり立ち替わりしながら何かを食べ続けている。カラスが引っ張り出したその残骸は子ジカであることが確認できた。

このところカラスの群れが山の斜面に降りて騒いでいるのを時々見かけるので、出産直後の子ジカを狙っているのではないかと予想はしていたが、これでカラスが出産直後の子ジカを襲うことがはっきりとした。
イヌワシやツキノワグマだけでなく、カラスもまた子ジカにとっては脅威となっている。


オレンジカモシカ7回目の出産

山はすっかり淡い緑の新緑に覆われた。小鳥たちは巣造りや育雛で忙しそうに飛び回り、夏鳥たちは繁殖地にたどり着いてにぎやかに囀っている。
オレンジ色のカモシカは、今年も子どもを産んだ。先日12日に確認したのだが、臍の緒は乾燥して短くなっているので2〜3日前に生まれたと推測される。オレンジは12歳になり、7回目の出産だ。
子カモシカはオレンジの周辺を走り回って元気にしている。まだ足元はおぼつかないが、引っかかる灌木を振り払って進んで行く。
昨年の子カモシカは、生まれた日の夕方から雨となって3日間降り続いた時に死んでしまった。今年は出産後は良い天気が続いている。しかし、天気予報ではこれから雨となって2〜3日降り続く予報だ。
昨年は生まれてすぐの雨だったが、今年はすでに数日が経過しているので問題はないと思う。が、少し心配だ。

今日は雄のカモシカが現れ、オレンジ母子のところに近づいて来た。雄は子育てには全く関与しないので、発情期ではないこの時期に母子のそばに出てくることは少ない。オレンジに擦り寄って行くが、ほとんど相手にされなかった。顔を近づけて挨拶を交わした後、雄カモシカは足早に斜面を下って去って行った。


丘の上のアナグマハウス 4月21〜30日

巣穴のまわりにはいろんな動物がやって来る。今回新たにハクビシンとニホンリスが出現した。巣穴を利用するタヌキやアナグマは、巣穴に興味津々で、覗き込んだり少しずつ奥へと入ってみたりしながら、におい付けをして去って行った。
巣穴は、カマドウマが集団でねぐらにしている。夕方暗くなると穴から出て、四方八方へと分散して行く。明け方には巣穴へと戻って来る。これが毎日繰り返されている。
普通にビデオを再生している時には、カマドウマに気づかなかったのだが、50倍速くらいで早回しすると、続々と巣穴から出て来たり帰って行くのが見えてくる。
カマドウマを狙って、コウモリが毎日のようにやって来る。カマドウマを捕食しているのはコウモリだけでなく、タヌキも食べていた。
タヌキは4月18日にも現れた、1頭が左後脚を怪我している夫婦だ。恐る恐るではあるが、体全体が隠れるまで巣穴に入って様子を見ていた。


丘の上のアナグマハウス 4月16〜20日

4月16〜20日の間にキツネ・アナグマ・ノウサギ・タヌキが巣穴近くに現れた。
キツネは4月11日の個体と同一で、右前脚を怪我している。
アナグマは、夜と朝に出現した。巣穴のまわりに下腹部を擦り付けるようにマーキングし、巣穴を覗き込んで去って行った。
ノウサギが丘の上を通過した。
夫婦と思われるタヌキが交互に巣穴に入ってしばらく様子を見て去って行った。巣穴をかなり気にしている。


丘の上のアナグマハウス 4月11〜15日

伊吹山山麓にあるアナグマの巣穴を無人カメラで観察。
巣穴は10mほど離れたところにもう1つあって、近くにはさらに2〜3ヶ所、崩れて塞がりかけている穴もある。これらの穴は地中で繋がっている。
アナグマは、地中深く掘り進んだ穴の中で冬眠をして子どもを産み育てる。
今年は利用しなかったが、アナグマはもちろん、巣穴を利用するキツネやタヌキも時々様子を見にやって来る。

4月11〜15日の間にヤマドリ・キツネ・カケス・ニホンジカ・ネズミ類・アナグマが巣穴近くに現れた。
キツネは巣穴が気になる様子で、中を覗き込んで去って行った。右前脚を怪我している。先端部分が切断されている。ニホンジカの有害捕獲のために仕掛けられたくくり罠にかかり、暴れまわって脚先がちぎれて、どうにか抜け出して来たのだ。近年、こうした脚先のない野生動物をたびたび見かけるようになった。
アナグマは朝明るくなって現れた。巣穴を気にして覗き込んでいた。


ニホンジカの角落ちシーズン

先日、ニホンジカの角を3本拾った。ニホンジカは毎年角を落として新しく生え替わる。3月中旬から5月中旬に角を落とす。
今回拾った3本は、いづれも標高1,000m程の尾根を歩いている時だった。2本は、地面を平らにならしたシカの休息場所に1mほど離れて落ちていた。同じ個体の左右の角だ。もう1本は、残雪の脇に落ちていた。2本は休息中に、1本は採食中に落ちたものだ。
角が落ちて間もない時には、角が生えていた部分が痛々しく見えるが、シカのほうは至って平然としている。間も無く、そこから袋角と呼ばれる柔らかい角がむくむくと伸びてくる。
立派に大きくなった角が、翌年には落ちて生え変わる。角の再生にはかなりのエネルギーが必要と思われるのに、毎年生え変わる必要があるのだろうか?
角は8月までは外皮をかぶっているが、9月には骨化した硬い角となっている。


子グマの滑り台

眩いばかりのブナの新緑やタムシバの白い花が春の山を彩っている。ツキノワグマが冬眠から目覚める季節がやって来た。
昨日は1頭のツキノワグマが3本のタムシバの木を渡り歩いて、白い花を手当たり次第に食べていた。クマが登った木は、花の数が減った分だけ色褪せて見える。花を食べ尽くしてしまうと、木にとっては一大事ではないかと思うが、花は半分くらいは残っている。
今冬は雪が多く、雪が長く残っていた割にはタムシバが早く咲いた。普通は標高が低いところから咲くのだが、今年は標高に係わらず一斉に咲いている。むしろ標高の低いところのほうが遅いように見える。

1日経った今日は、昨日と同じと思われるクマが150mほど上の木に登って、芽吹き始めた葉を食べている。すぐに動きが止まり、枝の上で昼寝をしている。冬眠明けのクマはよく眠る。
800mほど離れた斜面には母子グマが現れた。昨年生まれの子グマはやんちゃ盛りだ。母グマとは違う方向へ歩き出した時に、急傾斜地に積もった落ち葉に乗って2〜3m滑り落ちた。滑り台として遊んでいるように見えたが、予期せず滑り落ちて驚いているのかもしれない。
子グマは怯む様子はなく、急斜面を歩いて母グマが消えた林の中へと入って行った。


ニホンジカ、標高1,000mに到達

ニホンジカは、毎年冬の初めに山を降りて積雪の少ない場所で冬を過ごす。春には雪解けとともに伊吹山を登って来る。その時期は積雪量によって変わる。ここ数年は、かなり雪が少なかったので、2月中旬には標高1,000mまで登って来ていた。
今冬は積雪が多く、シカが山を登って来るのが遅い。それでも3月に入ってから暖かい日が続き、日差しも強まってきて一気に雪解けが進み始めた。雪が積もりにくい急傾斜地や、日当たりが良い場所は地面が露出してきた。シカたちは上を目指してどんどん登り始めている。3月11日には、標高1,000mに到達した。相当お腹を空かせていたのか、広く地面が露出している場所で一心に採食を始めた。
これ以上の標高は、まだ大部分が1m以上の雪に覆われているので、この辺りで少しの間停滞となるだろう。



若い放浪イヌワシがペアのテリトリーに侵入

イヌワシは、雄と雌のペアで10km四方くらいの行動圏を持って生活している。獲物を探して捕らえるのが困難であることから、広い行動範囲を縄張りとして、ハンティングエリアを確保して暮らしている。
ペアの縄張りの中に、放浪中の若いイヌワシが現れた。すぐにここの雄ワシが出現し、波状飛行をして縄張り宣言を開始した。大抵の場合、この波状飛行を見て放浪ワシは遠ざかっていくか、追われて逃げていくパターンが多いのだが、今回の若ワシは急降下で雄ワシに対して攻撃を仕掛けた上に、遠くまで雄ワシを追いかけて行った。
30分ほど経って、縄張りペアの雌が出現し、波状飛行を始めた。近くにさっきの若ワシがいるのだろう。
案の定、上空から急降下で雌ワシに攻撃を仕掛けてきた。お互いに攻撃を仕掛けたり仕掛けられたりを繰り返している。若ワシはかなり強気で、一向に逃げ出すような気配はない。空中での攻防は2時間近く続いて、尾根向こうに見えなくなった。

ペアの縄張りには、このような放浪ワシが時々現れる。時には放浪ワシがペアの1羽を追い出して、もう1羽とペアになって居着くことがある。今回の放浪若ワシは、この地に居着くことになるのか、それとも去っていくのか?
しばらくはこの若ワシとペアとの攻防が続きそうだ。