第8回伊吹山イヌワシ観察会 報告

10月19日が雨のために、翌20日に観察会を開催した。朝から晴れ渡って伊吹山がすっきりと見えている。
参加者36名を乗せて、バスは伊吹山ドライブウェイを走り、山頂駐車場でトイレに寄ったあと9:40に観察地点に到着し観察開始。
風は少ないが晴れ渡って視界は良好だ。サーナの登場に期待が膨らむ。午前中は順光で観察できるので、できるだけ早く姿を見せてほしい。僕は「イヌワシは近くにいると信じて探索してください」と伝えた。そのように考えるかどうかでイヌワシの発見には大きく影響するからだ。参加者全員が真剣にイヌワシを探す。

10:43、観察開始から1時間後にサーナが旋回しながら姿を現した。青空をバックにサーナは白斑を輝かせてゆっくりと旋回上昇後、滑翔して尾根裏に消えた。1分足らずだが、皆が観察できるだけの余裕があった。
次の出現は10:49、ゆっくりと旋回後、滑翔してこちらに近づいて来る。我々の背後の丘の後ろに飛び去った。

次はどこから出て来るだろうか?
11:10、先ほど消えたところとは正反対の西側1.2kmほど離れた木に止まっているサーナを発見。我々の視界の範囲を通過して行ったのは間違いない。36人の目を掻い潜って止まり場に移動していたのだ。
我々は視界があれば見えていると思いがちだが、見えていないことは多い。イヌワシの目ならば見逃すことはないかもしれない。

数分後、サーナは飛び立ち急降下、300mほど下の沢に飛び込んだ。獲物を狙ったのだろうか?止まっていた場所からその沢は見えないはずだ。
30分ほど経って、サーナが飛び込んだ沢付近から母ワシが出現した。歩人倶楽部さんの写真からそのうが大きく膨れているのが分かった。一連の行動から推測できることは、「母ワシが獲物を持って沢部に入り、母ワシを追ってサーナがそこへ飛び込んだ。サーナは獲物を食べ、母ワシはそれを見届けて飛び去った」というストーリーだ。
このストーリーを補強するためには、次にサーナが出てきた時にそのうが膨れている必要がある。
1時間後、サーナが出て来た。すぐに見えなくなってそのうの確認はできなかった。13:42、サーナがゆったりと旋回上昇。そのうが中くらいに膨れている。やはり獲物を食べていた。予想したストーリー通りの展開だった。

今日の出現は、サーナは8回、母ワシ1回、父母不明が1回だった。
サーナは観察会を終了してバスに乗り込む時にも、枯れ木に止まって我々を見送ってくれていた。

サーナの第一発見者に送る「ファーストディスカバリー賞」は、歩人倶楽部さんでした。歩人倶楽部さんはいつも観察会に駆けつけてスタッフとして参加していただいています。賞はスタッフを除くことにしていますが、今回は特別にこれまでの感謝の意を込めて、第一発見者としてイヌワシ額入り写真をお贈りしました。

今年4回実施した観察会に全て参加いただいた、中辻 喜久子さん、松山 真由美さん、南 陽子さんの3名が皆勤賞(写真入りクリアファイル5種類セット)でした。

今回は特別に、歩人倶楽部さんから鳥海山のイヌワシ未来館のグッズを観察会の景品としていただきましたので、重要な発見をした2人に景品を贈りました。
サーナへの獲物受け渡しの手掛かりとなった母ワシ発見者の青柳 咲絵子さんと、サーナのそのうが膨れていることの確認に繋がる飛行を発見された柴田 果菜さんに、歩人倶楽部さんから可愛いイヌワシイラスト入りの手提げが手渡されました。

ファーストディスカバリー賞


皆勤賞

歩人倶楽部 特別賞


今年のイーグレット主催の観察会はこれが最終回でした。
11月には米原市主催でイーグレットと協働で「伊吹山イヌワシ観察会」を開催します。参加費2,000円です。
募集15名で今回は少人数開催です。今のところ若干名の空きがあります。

来年ドライブウェイ開通後に、どのような形になるかは決まっていませんが、観察会は継続する予定です。

第8回伊吹山イヌワシ観察会 雨予報のために翌日に延期

10月19日が雨の予報なので、翌日の20日に観察会を開催します。
19日だけに参加予定だった方には申し訳ありません。

20日は急激に気温が下がり、山頂では最低気温4℃、最高気温14℃の予報です。今朝予報を見た時には最低気温1℃だったのでびっくりしましたが少し高めの予報になりました。

寒さに体がまだ慣れていないので、暖かすぎると思うくらいに防寒準備してお越しください。

第8回伊吹山イヌワシ観察会 参加募集間もなく終了

「第8回伊吹山イヌワシ観察会」はたくさんの皆さんの参加申し込みをいただき間もなく定員となります。
定員になりましたら受付は終了します。

予備日の20日には少し空きがあります。

イーグレットオフィス主催での観察会は今回10月で終了です。
次回11月は米原市主催で「里山LIFEアカデミー in 伊吹山」でイヌワシ観察会を開催する予定です。

第8回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第8回伊吹山のイヌワシ観察会」を2024年10月19日(土)に開催します。
19日が雨天の場合に備えて20日を予備日とします。
両日とも悪天候が予想される場合、10月の観察会は中止となることがあります。

イヌワシの幼鳥サーナは、徐々に行動範囲を広げながら元気に飛び回っています。
伊吹山の山頂部の紅葉は10月下旬頃です。
紅葉をバックにサーナが観察できることを期待しています。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第8回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内

参加申込書
参加申込書(Excel)
参加申込書(PDF)

イーグレットオフィス主催の無料での観察会は10月が最後です。
11月は米原市のイベントとして観察会を開催予定です。

第7回伊吹山イヌワシ観察会 雨予報のために中止

9月21と22日の両日とも、雨で霧もかかりそうなので今回の観察会は中止としました。
参加予定だった皆さんには申し訳ないですが、天候には勝てません。観察会と天気の巡り合わせが毎回異様に悪いです。
今回中止でリフレッシュして来月から仕切り直したいと思います。

「第7回伊吹山イヌワシ観察会」は幻となりましたが、次回の第8回こそはサーナに会いましょう。
第8回は10月19、20日になりそうです。来週半ばに案内を出します。
またお会いしましょう。

第6回伊吹山イヌワシ観察会 報告

8月24日、バスは8時に米原駅を出発し、7月の第5回観察会で見たミサゴの巣を遠目に見ながら通過した。巣にはもう雛はいないようだった。
関ヶ原駅を経由してドライブウェイの入り口で全員がバスに乗車した。40名の参加者でほぼ満席になった。

1週間前の天気予報では雨の予報で、開催も危ぶまれた。天気が好転する兆しが現れたのは2日前になってからだった。雨マークがなくなって曇りの予想。伊吹山は霧がかかりやすい山なので、すっきりしない天気だと霧に覆われる心配が残るが期待できそうだ。
前日の予報では一時的に晴れマークも出てきて、僕の気持ちも晴れやかになってきた。
朝、伊吹山がすっきりと見えている。天気は良くなった。

観察を開始してまもなく、対岸斜面にツキノワグマが現れた。足早に尾根を超えて裏側に消えた。
サーナを探して皆で観察を続ける。それにしても今日は暑い。標高1,000mを越える山の上とは思えないほど暑すぎる。バスが作る日陰に入って観察する。
昼のトイレ休憩の時間が来た。イヌワシは成鳥が遠くに少し見えただけだ。休憩する時間も惜しいので、休憩時間を短縮して観察地点に戻った。

バスの日陰を利用して観察

山頂への散策は、サーナが出現していないので観察を続ける人が多く、今回は少人数で出発。歩人倶楽部さんの花の案内を聞きながらゆっくりと登山。山頂部一帯はシカ侵入防止策で囲ってあるので、外側よりも明らかにたくさんの植物が生育している。それでも柵の内側にも少数のシカがいる。シカが食べない植物が残って目立っている。シカが食べないサラシナショウマが白く咲き誇っている。
ワレモコウが深紅の小さい花を咲かせている。昔、尾瀬に行った時にその花を知り、それ以来のワレモコウファンの僕は、シカに食べられずに咲いているのを見て嬉しかった。
イヌワシが出てこないかと登山しながらも空を見上げて歩いた。ハヤブサ幼鳥が山頂を素早く横切った。チョウゲンボウは3回出現があり、皆でゆっくり観察ができた。
観察継続チームからイヌワシ成鳥が飛行し、ドライブウエイ法面の上に止まったと無線で連絡があった。山頂からは見えないところだ。駐車場まで下山すれば見ることができる。残念ながら下山する前にイヌワシは飛び去った。

8合目駐車場から山頂を見上げる

サラシナショウマが目立った

観察チームと合流し残り1時間ほど、全員で全力でサーナを探す。サーナは現れなかった。
今日のファーストディスカバリー賞は、サーナの発見がなかったのでクマの発見者かイヌワシ成鳥の発見者か迷ったが、遠くを飛翔するイヌワシ成鳥を発見された和歌山県から参加の森下仁美さんに決定した。
最初の発見によって観察への集中力がさらに高まりました。ありがとうございました。
サーナと会うことはできなかったが、次回に期待して帰路に就いた。

最初の発見に感謝

サーナの出現がなく気になっていたので、4日後にイーグレット総出でサーナの行動を調査した。霧が多い天気だったが、サーナは何度も出現し、親ワシについて飛び回り、ホッとした。
サーナはこの1週間ほどの間に行動範囲を広げていて、かなり遠出をしていた。観察会の時も伊吹山から離れて行動していたのかもしれない。

第7回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第7回伊吹山のイヌワシ観察会」を2024年9月21日(土)に開催します。
21日が雨天の場合に備えて22日を予備日とします。
両日とも悪天候が予想される場合、9月の観察会は中止となることがあります。

イヌワシの幼鳥サーナは、徐々に行動範囲を広げながら元気に飛び回っています。
狩りに挑むサーナが観察できると期待しています。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第7回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内

参加申込書
参加申込書(Excel)
参加申込書(PDF)

第6回伊吹山イヌワシ観察会 参加募集間もなく終了

「第6回伊吹山イヌワシ観察会」はたくさんの皆さんの参加申し込みをいただき間もなく定員となります。
定員になりましたら受付は終了します。
参加をお受けできるかどうかはメールで返信させていただきます。
可能な限り参加していただけるようにしたいと思いますが、今回参加できない場合は申し訳ありませんが次回以降の参加をお待ちしています。

次回は9月21または22日を予定しています。

第6回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第6回伊吹山のイヌワシ観察会」を2024年8月24日(土)に開催します。
第3回から第5回まで3回連続で天候に恵まれずにイヌワシの観察ができませんでしたので、今回は24日が雨天の場合に備えて25日を予備日とします。
両日とも悪天候が予想される場合、8月の観察会は中止となることがあります。

イヌワシの幼鳥サーナは、徐々に行動範囲を広げながら元気に飛び回っています。
観察会では、この幼鳥の飛翔する姿が観察できると期待しています。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第6回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内

参加申込書
参加申込書(Excel)
参加申込書(PDF)

第5回伊吹山のイヌワシ観察会

伊吹山文化資料館のイヌワシ幼鳥の剥製の前で記念撮影

朝8時、いつも通り米原駅を出発。今日は朝から雨で早朝には土砂降りだった。伊吹山は5合あたりから上がガスに覆われて山は見えない。このあとも雨は降り続く予報だ。
ガスが上がる見込みはない。今回は迷うことなくドライブウェイに上がる選択肢はない。雨バージョンの行程に変更した。

この雨バージョン、観察会前日になって雨とガスは避けられなさそうと弱気になって、急遽山麓の平野部で観察できそうなものを考えてすぐに下見に出発した。
1つは鉄塔に営巣するミサゴだ。ミサゴはもう巣立ち時期なので巣には何もいないかもしれない。ラッキーにも2ヶ所の巣のうちの1つでまだ子育て中だ。ミサゴは近年、鉄塔で営巣しているペアが増えている。滋賀県内のあちこちで鉄塔営巣が見られる。
山にある高い鉄塔の頂上に巣が造られているので、平地から大勢が観察してもミサゴが警戒することはない。バスの中から観察することも可能なので少々の雨でも大丈夫だ。
2つ目は彦根城にあるカワウのコロニー、こちらも繁殖は最終段階なのでどれくらいがコロニーに残っているのかわからない。到着してみると、まだまだコロニーは賑やかだ。全体的に巣内の子育ては終わりだが、巣立った幼鳥は巣の近くにいて親鳥が魚を持ち帰るのを待っている。
ここではカワウを観察後、彦根城を自由に散策オプションありとした。

観察会当日、ミサゴは巣にいる母ミサゴと雛2羽を観察することができた。父ミサゴが巣に来たり近くを飛んだりしているのも1時間足らずの観察中に見ることができた。
彦根城のカワウは、繁殖が遅くに始まった巣では子育て中だ。巣立った幼鳥が親鳥と一緒にコロニーに戻ってきて親鳥から給餌を受けていた。親鳥が口を開けると幼鳥がその口の中に嘴ごと頭まで入って、親鳥がそのうに溜め込んできた魚を吐き戻すのを受け取っている。
アオサギやダイサギとともに営巣している賑やかなコロニーを観察した。

鉄塔の頂上にあるミサゴの巣


巣の右端に母のミサゴ、中には巣立ち間近の雛が2羽がいる


ミサゴを観察

巣立ったカワウの幼鳥たち


カワウの観察

雨バージョン、最初はいつも通り伊吹山文化資料館へ行った。イヌワシ幼鳥の剥製を見て、レクチャールームでイヌワシとカワウの2つのテーマで僕と須藤明子が話をした。

昨年のニーナの子育てを振り返って、繁殖が失敗した原因を考えてみた。
昨年のデータや映像から、明らかに4月28日の最初の落石から雌ワシは常に上を警戒するようになっていた。そして翌日からはまだニーナが小さいにも関わらず、雌ワシは日中のほとんどを巣から離れて過ごした。何度も落石があり5日目の夜(5/3)には、とうとう雌ワシは巣に戻らなかった。
ニーナは22日齢でひとりで夜間を過ごした。これほど早く雌ワシが添い寝しないのは世界的にも記録的な早さのようだ。
その後も雌ワシは、夜間に帰巣しないことがたびたびあった。5月24日からは夜間に戻ることがなくなった。日中も巣へはあまり来ない。雌ワシは6月28日にヘビを運んだのを最後に巣を訪れることは無くなった。
雄ワシだけが獲物を運んでくるが、4〜5日獲物がないことがたびたび続く。ニーナの成長はどんどん遅れていった。
昨年の状況は、何度も繰り返す落石を非常に恐れた雌ワシが、徐々に巣には戻らなくなったことが繁殖失敗に繋がったのだった。それに加えて記録的な暑さで獲物となる動物が日中に日の当たる場所へ出て来なかったことも獲物が捕れなかった原因だったと思う。

須藤明子からのカワウの話は、増えすぎたカワウの個体数調整の話だ。
希少種の保全と増えすぎたカワウを捕獲するという相反する取り組みと思われるかもしれない。しかし、個体数調整は以前の有害捕獲とは違い全滅を目指すものではない(これまでに全滅できたことは一度もないが)。在来種であるカワウは日本の川で暮らし、当然生息しているべき鳥なのだ。
カワウの漁業等の被害が顕著ではなかった頃の滋賀県内の生息数に戻そうという取り組みだ。目標の生息数より多くても、被害がかなり軽減されたのであればそれ以上個体数を減らさずに維持していくことを目標としている。
イーグレットや滋賀県水産課、朝日漁協、野生動物管理を学んでいる学生などが協力して一大プロジェクトを開始した。成鳥幼鳥を識別し捕獲すべき個体を見極め、捕獲時期や捕獲数を調整しながら慎重に捕獲を実施した結果、カワウの生息数を劇的に減らすことができた。数年後にはカワウの一大生息地、木や草が枯れてしまっていた竹生島に緑が回復し始めた。
カワウの生息数は目標に近づき、漁業被害も軽減されてきた。これくらいの漁業被害ならなんとかやっていけると漁協の方からも言ってもらえるようになった。イーグレットが目指していたカワウとの共存が実現しつつある。

相反するように見えた希少種保全とカワウの個体数調整は、どちらも野生動物と人との共存を目標としたものなのだ。
それを証明することができたのは、1番大きな成果だったと思う。

観察に向かうバスの中

次回「第6回伊吹山のイヌワシ観察会」は8月24・25日のどちらかを予定しています。