Wahlberg’s Eagleの恋

快晴の暑い日が戻って来た。南部アフリカは、季節が日本とは逆なので今は早春である。夏鳥たちがちょうど渡って来る時期だ。

お互いに羽繕いをしあう

お互いに羽繕いをしあう

イヌワシの仲間のWahlberg’s Eagleも夏鳥としてやって来る。9月の初めまではめったに姿を見なかったが、数日前から急に目に付くようになった。昨日の夕方、枯木に止まるペアを見つけた。2羽が寄り添って止まり、頭や首の羽繕いをお互いにしあっている。求愛ディスプレイの一種と思うが、延々と続いてお互いにうっとりして気持ち良さそうだ。

今日の夕方、またその場所を通りかかると、同じ枯木に昨日とまったく同じようにペアが止まって羽繕いしあっている。午前中にここを通った時にはいなかったので、夕方になるとこの枯木にやって来るようだ。彼らも恋の季節なのだ。

このほほ笑ましい光景に、通りかかった多くの人たちが車を止めて観察していく。これほど多くの人たちに祝福されるWahlberg’s Eagleは他にはいないだろう。

動物たちは雨を待っている

このところすっきりしない曇り空が続いている。わずかな雨が時おり降っている。気温も下がり肌寒い。今日は朝から本降りになった。これまでこの時期にまともな雨に遭ったことがなかったのだが…

乾燥した大地は、風や車の走行、動物が走ることによっても激しく土埃が舞い上がる。少し雨が降ってくれると土埃が治まって助かる。細かな土埃は気をつけていてもどこからともなく侵入して、カメラもいつの間にか土埃をかぶってしまう。雨でこの土埃がなくなって快適だ。乾期が続くと多くの人が雨を待ちわびている。久しぶりの雨に歓声を上げる人もいるくらいだ。

車の轍を流れる水を飲むカメ

車の轍を流れる水を飲むカメ

雨は午後3時頃にやっと上がった。あちこちに水たまりが出来た。動物たちも久しぶりの雨を喜んでいるだろう。リクガメの一種のヒョウモンガメと思われるカメが道路に出て来た。車の轍に流れる水に顔を突っ込み、雨を待ってましたとばかりに水を飲み始めた。顔を付けたまま2分間ほども一気に水を飲んだ。そしてまた顔を突っ込み、長—い水飲みが始まった。よほど喉が渇いていたらしい。

長い乾期の終盤、多くのいきものが雨を待ちわびている。

泥沼池の恐怖

乾期も終盤を迎えて、湖の水は干上がる寸前だ。わずかに残った水場が泥沼のようになっている。水を飲みにやって来る動物たちは、慎重に足元の様子を見ながら水に近づいている。胴体まで沈み込んでしまいそうになる。水に届きそうなところまで近づきながらも、今一歩が踏み出せずに別の場所から再度アプローチする。これを繰り返してようやく水に届くものもあれば、諦めて帰っていくものもある。

泥沼池に落ちて、もがくインパラ

泥沼池に落ちて、もがくインパラ

昨夕、1頭のインパラがこの池に落ちてしまった。もがいているが体勢は変わらない。立派な角を持つ雄なので危険は十分認識していたはずである。一瞬の判断ミスが命取りになってしまったのだ。

今朝、このインパラの様子を見に行くと、やはり脱出できずにそのままだ。死んでいるのか生きているのか分からないが、まったく動かない。顔が水に浸かっていないところを見ると生きているのかもしれない。しかし、もう動く力はない。

この池には数頭のワニがいる。やがてこのワニの餌食になってしまうだろう。ライオンやチーターだけでなく、こんなところにも危険は潜んでいたのだ。

百獣の王の大爆睡

今アフリカに来ている。アフリカに来て2週間が過ぎた。出発の準備や日本にいる間にこなしておかねばならないことに追われて「伊吹の野生だより」もしばらく休んでしまった。

一週間ほどジンバブエに滞在しDVD「ブラックイーグル」の舞台マトボ国立公園を訪れた後、今は南アフリカのクルーガーN.Pにいる。国立公園内の野生動物は人間をほとんど恐れない。日本でのような感覚でいると拍子抜けしてしまう。人間を恐れないにしても、あまりに近いとなんとなく嫌なものだと思うのだが、ほとんど気にしていない。

特に猛獣と言われるライオンやチーターは、人間の姿など目にも入らないようだ。車のエンジン音が近づいても人間の声が聞こえても、まったく振り向きさえもしない。「たまにはこっちも見てくれよ」と言いたくなってくる。集まった車の間を縫うように歩いたりもする。まるで車がそこらの樹木とでも思っているかのようだ。人間を気にして、それとなく遠ざかっていくのは草食獣のほうだ。

爆睡するライオン

爆睡するライオン

今回の撮影目的は猛禽類であるが、ライオンやチーターは気になる存在だ。昨日の夕方、ゲートの閉まる時間を気にしながら車を飛ばしていると、道路脇数十メートルのところでライオンが仰向けになって大爆睡しているのに出会った。荒野の真っ只中でこんなに無防備によく眠れるものだ。さすが百獣の王と呼ばれるだけのことはあると感心してしまった。

[管理者お断り] 須藤一成がアフリカにいる間、インターネットの接続環境の都合上、写真やビデオの添付は日本に戻ってからアップロードする場合があります。

Vol.56 アフリカ撮影記 Ver.16 保護色は誰のため?



猛獣たちは保護色をしている。チーター、ライオン、ヒョウ。

大地に溶け込み森林にまぎれ、ブッシュに隠れて見えにくくなるのが動物たちの保護色だ。保護色は、草食動物が肉食獣に見つからないためにあるものだと思い込んでいた。ところが、アフリカでライオンやチーター・ヒョウなどの肉食獣を見ていると、以外にもそうではないことに気がついた。肉食獣に追われる草食獣よりも、肉食獣のほうが見つけにくい保護色をしているではないか。

ライオンやチーターが草原に横たわって獲物の動きを追っている姿は見つけにくく、彼らが保護色をしていることを実感する。むしろ、狙われている草食獣のほうがよく目立ち、肉食獣より先に僕の目に止まることが多い。肉食獣は獲物となる動物たちに逸早く見つかってしまうと狩りを成功させることはできない。いくら俊足でも、ある程度距離を詰めてからでないと狩りは成功しない。

チーターが姿勢を低くしてブッシュに隠れながらじわりじわりと距離を詰めていく姿を見ていると、その緊張感が僕にもびんびんと伝わってくる。草食獣も常にまわりを警戒しているから、チーターがデッドラインに到達する前に気づいて逃げてしまうことも多い。

ある時、ヌーとシマウマの群れが同じ方向に向かって警戒声をあげていた。前脚で地面を軽く蹴って威嚇しているようにも見える。その視線をたどると、100メートルほど前方のブッシュの陰に数頭のライオンがいる。ヌーとシマウマは威嚇のような仕草をして、仲間にライオンの存在を知らせている。この距離ならば逃げ切れることを彼らは知っているから、このような挑発的な行動を取っているのだ。

ライオンのほうもそれが分かっているから、この距離から一気に襲いかかることはしない。手分けしていろんな方向から隙をついて近づこうとしている。両者の間にピリピリと張りつめた時間が流れる。しかし、一旦警戒されてしまうと、あの手この手の試みも成功しない。30分ほど経って、ライオンは今回の狩りを断念し、座って休息し始めた。ヌーとシマウマたちも警戒を解き、ゆっくりと遠ざかって行った。

強いものが追いかけ、弱いものはいつも逃げ回っているのかというとそうではない。食うもの食われるものが互いに意識しながらも、意外なほど冷静に共に暮らしている姿に、ある種の不思議さを感じる。

木の上で寝転がっているヒョウもまた保護色をしていて見つけにくい。木漏れ日を浴びた樹木の幹にヒョウの模様が溶け込んで見分けが困難だ。ヒョウは木化けして近くを通りかかる獲物を待ち伏せている。

肉食獣の狩りは派手な攻防だけではなく、休息している時にすでに始まっている。座ってくつろいでいるように見える時でさえ、周辺の動物の動きを常に監視している。この時にこそ周囲の環境に溶け込んだ保護色は有効だ。獲物となる動物が気づかずに近づいてくるのを待っている。

肉食獣は保護色に助けられて狩りを成功させることができる。もしも派手な目立つ色彩をしていたなら、獲物にありつけずに死んでしまうだろう。アフリカの大地で肉食獣と草食獣を見ていると、隠れているのはむしろ肉食獣のほうだ。肉食獣は、草食獣以上に保護色を利用して生きているのだ。

第4回セツブンソウふれあい祭

2013年3月17日(日)に滋賀県米原市大久保にて開催される第4回セツブンソウふれあい祭にて、「アフリカの大自然~大空に舞うブラックイーグル~」と題して、写真家 須藤一成(弊社代表)によるアフリカで暮らす人々の生活と野生動物の写真を展示します。

また、同DVD作品「ブラックイーグル」の上映も行います。お近くにお越しの際は、お気軽にお立ち寄りください。

第4回セツブンソウふれあい祭
■日時:2013年3月17日(日)
■上映時間:9:00~15:00
■会場:大門坂荘

より大きな地図で 大門坂荘 を表示

DVD『ブラックイーグル 〜 アフリカの大地に舞う美しき飛行家』

DVD『ブラックイーグル』
■大きい画像(表面裏面

タイトル ブラックイーグル 〜 アフリカの大地に舞う美しき飛行家
監督・撮影 須藤一成
発売日 2012年11月15日
仕様 NTSC ALL/COLOR/DOLBY STEREO/50分
字幕 日本語/英語/字幕なし
編集・製作 宮原徹/TM IMAGING STUDIO
制作・著作 須藤一成/株式会社イーグレット・オフィス
取扱先 Amazon.co.jp
狼森(おいのもり)オンラインショップ
ホビーズワールド
■内容
世界で最も美しいと称されるブラックイーグルの飛翔と軽快なアフリカンミュージックのコラボレーション。

獲物との攻防、ダイナミックな狩り、巣造りから育雛、幼鳥の飛翔など、ブラックイーグルの生活に迫る。

世界遺産に登録されたジンバブエのマトボヒルズ。奇岩が立ち並ぶ岩山をバックに、モノトーンのワシの華麗な飛翔が映える。

■チャプター
#01 オープニング
#02 ブラックイーグル
#03 マトボヒルズ
#04 求愛ディスプレイ
#05 造巣
#06 抱卵
#07 育雛
#08 ダッシーを狩る
#09 兄弟間闘争
#10 サルを追い払う
#11 マトボの野生動物
#12 巣立ち前後
#13 美しき飛行家
#14 エンディング

Vol.54 アフリカ撮影記 Ver.15 クドゥ



ねじれた大角を持つ雄のクドゥ。土に溶け込んだ塩分を舐める。たくさんの動物たちがやって来て舐めるので地面が大きく掘れている。

くるくるとねじったような大きな角を持つ雄のクドゥは、アフリカの大地によく映える。

クドゥは体重が200kg前後あり、大きな雄では250kgもある。角を持つのは雄だけで、角の長さが1.8mを超えるものも記録されている。重さはおそらく一本で十数kgはあるだろう。高く跳び薮を駆け抜けて走るには角を自在に操れるだけの筋肉が必要だ。角は重いだけでなく長いので、余計に振り回されてしまいそうだが、急な方向転換や頭を振ったりする時にふらついたりはしていない。そう考えると彼らは強靭な首の持ち主であることがわかる。

力強い体でこの角を振り回して肉食獣を追い払うこともあるが、追い払いの効果はあまり期待できないので、積極的に武器として角を使用するものではないらしい。雌をめぐってのなわばり争いで激しくぶつかり合ったり押し合ったり、あるいはディスプレイに使用したりと、角は同種間の争いで主に使用されるのだ。

激しい闘争によって片方の角が折れてなくなってしまったクドゥを時々見ることがある。角の重さは半分になったものの、バランスが悪くてかえって動きづらいように見えるのだが…。当のクドゥは気にする様子もなく、頭が角のあるほうに傾いているわけでもなくまっすぐに立っている。クドゥの角はニホンジカのように毎年生え変わるものではないから、このクドゥは一本角のまま生きていくのである。このバランスの悪さから、肩凝りや首の凝りに悩まされはしないかといらぬ心配をしたくなる。

彼らは大きな角を付けたままでも障害物を軽々と飛び越え、薮の中では角を水平にして体に添わせて素早く通り抜けていく。

ある時数頭のクドゥがフェンスの脇にいるのに出くわした。車の出現に驚いたクドゥは高さが2mほどのフェンスを次々と飛び越えたが、少し小さな若いクドゥだけが躊躇してオロオロしている。小さなクドゥにはこのフェンスは高すぎるようだ。そのうちに有刺鉄線が少したるんで間隔が広がっている部分に狙いを定めて、この隙間を飛び越えて逃げていった。

それにしても、小さいとはいえ体高が1.2mほどあるクドゥが、広いとは言えないその隙間を通過したとは信じられない。僕は、クドゥが体当たりで有刺鉄線を切って通り抜けたのではないかと思い、そこへ行ってみたのだが、有刺鉄線は切れていない。フェンスはほとんど揺れなかったから、本当に見事にこの間隙をすり抜けていったのだ。前脚と後脚を水平にして、体が最も細くなる姿勢で有刺鉄線の間を抜けていったのである。サーカスの動物ショーの火の輪くぐりも顔負けの素晴らしさだった。

お世辞にも細身とは言えないずんぐりとしたクドゥは、いかにも鈍重そうに見えるので、余計に軽やかでしなやかな身のこなしに驚かされた。首だけでなく、全身の筋肉が強靭でしなやかなのだ。

Vol.53 アフリカ撮影記 Ver.14 野焼き

野焼きの炎は強弱を繰り返しながら燃え広がってゆく

乾期の終わり頃、ジンバブエの国立公園では草原に火を放って野焼きが行われる。

枯れ草を焼き払っていち早く新鮮な植物を復活させるためである。確かに野焼きをしたところでは一週間もすると一面が緑に覆われ始めている。隣接して枯れ草が残っているところと比べると圧倒的に新鮮な緑が多い。草食動物たちにとっては栄養豊富な植物がいち早く芽吹いて格好の採食場所になるだろう。

野焼きが鎮火するとすぐに、どこからともなく猛禽類が集まってくる。上空では熱上昇気流が激しく渦巻いているらしく、びゅんびゅんと慌ただしく曲技飛行をしている。焼け出されて舞い上がった昆虫などを狙っているのだ。昆虫を捕食する猛禽類にとっては大いなるチャンスだ。

僕はこの野焼きに取り囲まれそうになった経験が2回ある。1度目は岩山に登って撮影をしていた時のことである。その日はあちこちから野焼きの煙が上がっていた。午後になって煙がかなり近づいてきていることに気がついた。岩山の下に車を止めているが、そこへ火が徐々に迫っている。朝通ってきた道路沿いをこちらへ近づいている。反対方向の道路を見ると別の野焼きが近づいている。挟み撃ち状態である。

僕は草木のない岩山にいるので火に囲まれることはないが、車のほうが心配だ。もはや火の行く先を監視しているだけで、撮影どころではなくなっていた。最初のうちは煙で野焼きの場所がわかる程度だったのが、今では高く燃え上がる炎が時折見えるようになっている。急いで機材を片づけて岩山を下って車に戻った。とりあえず一か八か車で逃げるしかない。来た道を戻る。少し走ったところで前方から煙がどっと流れてきた。これはやばい、火は近い。車一台が通れる程度の狭い地道をUターンができるところまで慌ててバックする。しかし、反対側からも炎は近づいている。燃えさかる火のそばを通ると車に引火するかもしれない。

その時、煙の中から一台の車が走り出てきた。楽しそうにこちらに手を振っているのを見て今までの緊張が一気にほぐされた。道路を走って野焼きを通過する分にはそれほど危険はなさそうだ。気を取り直して煙の中へと入ってみた。炎は小康状態になっていて危険はなかった。

2度目は、山の林の中でブラインド(人間の姿が動物から見えないようにつくった簡易的な隠れ家)に入って動物が現れるのを待っている時だった。どこからか煙のにおいがしてきた。そのうちに煙が漂い始めたので僕はブラインドから飛び出し、まわりの様子を確かめた。炎はだいぶ迫ってきているようだ。風向きからしてまもなくこっちに来ることは間違いない。

布で作った簡単なブラインドを引きちぎるように大慌てで回収し、機材を担いで逃げ出した。心臓はどきんどきんと高鳴っている。登ってきた方向はすでに炎が来ているようだ。反対方向へ歩いて大回りして戻るしかない。麓に到着してさっきまでブラインドを張っていたところを見上げると、バリバリと音を立てて燃え始めていた。危機一髪だった!?

アフリカでは自由に山や林を歩いて撮影できるナショナルパークは数少ない。あえて歩きまわれるフィールドを探して猛禽類の撮影にチャレンジしているのだから、こうしたハプニングを避けては通れないのかもしれない。

Vol.48 アフリカ撮影記 Ver.13



後頭部の飾り羽がたくさんの羽ペンを刺しているように見える

湾曲した鉤状のくちばしを持つ顔は猛禽類であり、長い脚や全身の風貌はコウノトリのようなセクレタリーバード(Secretarybird)。

頭部の飾り羽を広げると、頭にたくさんの羽ペンを立てている昔の秘書(セクレタリー)のようなところから、この名前がついたようだ。脚が長いので背筋をピシッと伸ばして歩いているように見える。ヘビやトカゲ・小型の哺乳類などを見つけると、長い脚で叩くように踏みつけて捕食する。日本名はヘビクイワシ。ヘビを捕食する他のワシやタカは脚で握ってヘビを捕獲するが、セクレタリーバードは叩いて押しつぶすようにして捕らえる。英名同様に日本名もまたこの鳥の特徴をよく表しているが、背筋を伸ばして颯爽としている姿や羽ペンのような飾り羽を見ると、僕はセクレタリーバードという名前のほうがふさわしいと思う。

草原を歩いている姿を目撃することが多いが、上昇気流を捉えて帆翔しているのを時々見ることもある。飛んでいる姿はコウノトリの仲間にそっくりで、慣れないと識別は非常に難しい。飛んでいる姿を何度か見ているうちに、遠くからでも識別が出来るようになってきた。コウノトリの仲間であるマラブーストークが遠くを飛んでいると、僕は双眼鏡をとり出してセクレタリーバードではないかじっくりと観察するのだが、現地のガイドは肉眼で見てすぐにマラブーストークだと見分けてしまう。2km以上も離れたところを飛行しているというのに、何を識別のポイントにしているのだろう。あまりの視力の良さと識別能力の高さに最初はびっくりさせられたが、どうも確実な識別だけで言ってるのではないことが分かってきた。ガイドはマラブーやセクレタリーがよく見られる場所を知っていて、ここならばマラブーだという風に見分けていることもあるのだ。ガイドがマラブーだと言うのを僕が双眼鏡で見てセクレタリーだと主張すると、ガイドも双眼鏡で見て納得するということが時々あった。こんなに遠くのマラブーとセクレタリーを肉眼で確実に識別することは僕には出来そうにもなかったので、ガイドも間違えることがあって僕は何となくほっとしたのだった。時には間違えることがあったとしても、ナショナルパークでガイドをしている人たちの視力と識別能力の高さにはいつも感心させられる。この能力は天性のものなのだろう。ここでは、ガイドだけでなく多くの人がすばやく動物を見つけ出す力を持っている。日本人はこうした能力を失いつつあるのではないかと思えてくる。僕の場合は、すばやく動物を発見できなければ撮影チャンスを逃してしまうので、常に鍛えておかなければ…

コウノトリによく似ているセクレタリーバードであるが、ある時大空を帆翔中に突然翼をすぼめて急降下を始めた。急降下の後、翼を広げて急上昇。これを何度も繰り返す。まさにワシタカ特有の波状飛行だ。自分のテリトリーに侵入する他の個体に対してのなわばり宣言である。容姿こそコウノトリに似ているが、やはりワシタカの仲間であると再認識させられる行動であった。