Vol.17 ミサゴ:魚食のタカ

水辺の枯木に止まって魚を狙う

ミサゴは、海や川、湖などの上空を飛び回り、水面近くを泳ぐ魚を専門に捕えて食べる。

魚相手とはいえ狩りは豪快だ。魚を見つけると上空から翼をすぼめて急降下。脚を突き出し、バシャッという派手な水しぶきをあげて水中へ突っ込む。深く潜るわけではないが、一瞬、体全体が水中へ消えてから水面に浮かび上がる。狩りが成功していれば脚に魚をつかんでいる。

大きな魚を捕まえて水面から飛び立つのに苦労している姿を目撃することがある。40cm以上もある魚を捕えたときには、しばしの間水中で力比べだ。ようやく空中へ持ち上げて飛行しても、あまりの重さになかなか上昇できない。慌ただしく右へ左へと飛行しながら少しでも高度を稼ぐと、ヒナの待つ巣へ向かって必死で羽ばたきながら移動して行く。

ミサゴは体長約60cm。頭から腹にかけてのまばゆいばかりの白色と翼上面の茶褐色があざやかなコントラストで凛々しく美しい。

生きた獲物を捕食する猛禽類は、引き締まった体とすきのない身のこなし、威厳ある風貌をしている。ミサゴもいい顔つきをしている。

魚を食べる他のワシやタカが、水面をかすめて魚を捕えるのに対して、ミサゴは水面に体当たりするように激しく、もっと深いところの魚を捕える。この激しさがミサゴの精かんさをかもし出しているのかもしれない。

ミサゴは広い範囲の川や海を飛び回って獲物を探すが、中には魚がたくさんいる養魚場に居着いてしまう個体もいる。養魚場の池には非常に高密度で大物が泳いでいる。1日に1?2匹も捕えて食べれば十分である。居心地がいいらしく、毎日池のそばの電柱に止まり、その池から離れようともしない。時々急降下して大きな錦鯉をさらっていく。食餌場所へ運んで行って食べる。食べ終わると再び電柱に戻ってきている。

近年では、川や海の魚が減少している。ミサゴの生活も厳しさを増している。よくぞこの小さな養魚場を見つけたものだと感心させられる。利用できるものを見逃さない野生動物のしたたかさである。

しかし、養魚場に居着いたミサゴには、なぜか精かんさが感じられない。いつも十分な獲物にありつき羽毛を膨らませて止まっている姿は、川や海で獲物を探すシャープなミサゴとは別物のようである。

野生動物も人間も同じように楽な暮らしができることを望んでいる。野生動物はシャープに生きてほしいというのは、僕の勝手な願望であるかもしれない。

しかし、養魚場にべったりと居着いた生活が長続きするとは思えない。養魚場の持ち主は、ミサゴが錦鯉をさらっていることはまだ知らないようだ。ミサゴは今日も電柱でのんびりとくつろいでいる。大事な錦鯉を捕っていることが養魚場の持ち主にばれたなら、一悶着あることは間違いない。

人間とのあつれきの中で悪い結末にならないことを祈りたい。ミサゴという種全体が害鳥のレッテルを貼られることがないよう、持ち主に気づかれないうちにこのミサゴが退散してくれればいいのだが… 。貴婦人のような凛々しいミサゴに免じて大目に見てやってほしい。