伊吹山のイヌワシと野生動物2025年8月14〜15日 ハヤブサを攻撃



この2日間、イヌワシペアは獲物を捕獲することができなかった。近年の夏の暑さは獲物となる動物たちの行動を大きく変化させているかもしれない。
獲物となる哺乳類は暑い日中には木陰や穴の中で過ごしていて、イヌワシは探餌にかなり苦労しているのではないだろうか。

哺乳類が見つからないのでイヌワシは鳥類をダーゲットにして何度も攻撃した。2日間に狙った獲物は、サシバとカラス類、トビ、ハヤブサだった。いずれも狩りに成功することはなかった。
イヌワシは、鳥類の狩りはあまり得意としていないので成功率は低い。それでも比較的見つけやすい大型の鳥に何度も挑戦して成功率の低さをカバーしている。
鳥類で一番飛行速度が速いハヤブサが獲物となったこともあった。

17日は伊吹山のイヌワシ観察会だ。その日にはどんな獲物を狙うのか、どんなふうにイヌワシが姿を現すのか、想像しながらのイヌワシ探索を楽しみたい。

伊吹山のイヌワシと野生動物2025年8月8日



今日は風が強く、気温が下がり肌寒かった。
猛暑が続いていたので、野生動物たちにとっても久しぶりに快適な1日となっただろう。
ツキノワグマも暑さに喘ぐことなく、快適に行動しているように見えた。

今日の一番の収穫は、イヌワシのねぐら入りが確認できたことだ。ねぐらの場所をピンポイントで地図上に記録できた。
ねぐらをピンポイントで確認できることは少なく、あの沢の中というふうな範囲でしか分からないことが多い。
また、暗くなってからねぐらへ飛び立つこともよくあるので、そんな時は飛び立ったことがかろうじてわかるのだが追跡ができない。

今日はかなりラッキー、カメラの感度を最大にして撮影までできた。ペアが同じところでねぐらをとった。

ねぐらの情報は少ないが、少しづつ蓄積してきている。今日のねぐらの近くだけでも何ヶ所もねぐらがある。それらお気に入りのねぐらを日替わりで利用しているようだ。
遠く離れた場所でねぐらをとっていることもあるので、広い行動圏の中にはかなりの数のねぐらがあるだろう。その中には一度きりしか使わなかったねぐらもあると思う。

朝イヌワシがねぐらから出ていくのを何度か観察したことがある。夜明けとともにねぐらを出ることもあれば、谷間に遅い朝日が当たり始めてようやく動き出すこともあった。
天候や風の状況、あとはイヌワシの気分次第なのかもしれない。

伊吹山のイヌワシと野生動物2025年5〜7月



5〜7月のイヌワシと野生動物の映像をまとめました。
イヌワシは5月初旬の育雛中に繁殖を失敗した。詳細は5月15日のブログをご覧ください。
イヌワシペアは雛への獲物の供給をする必要がなくなったので、少しゆったりと生活している。しかし、翼や尾羽の羽の欠損が多く、飛行姿はボロボロな印象だ。十分な栄養がとれずに体力的にはかなり厳しい状況なのだ。
今年は栄養と体力を蓄えて、来年の繁殖に臨んでほしいところだ。
今年の伊吹山は夜から午前中まで霧がかかることが多いが、日中の気温はかなり上がっている。イヌワシペアは毎日のように水浴びをして濡れた羽を乾かす姿が見られた。

春から夏まで、ツキノワグマが比較的よく観察できた。ササのタケノコをよく食べていた。
子グマの危うい木登りも観察できた。子グマは2頭、小さいながらも一丁前に母グマと同じように木の実を食べていた。1頭の子グマが木から降りる時に落ちたが、怪我はないようだった。

ニホンジカの母ジカは、ツキノワグマとの遭遇を避けて子ジカをうまく誘導していた。子ジカは成長し6月下旬以降は母ジカと一緒に行動する姿を目にするようになった。

伊吹山でも気温が30度前後まで上がり、野生動物たちの生活にも影響しているのではないだろうか。
イヌワシは水浴びでどうにか暑さを凌いでいるようだ。

第12回 伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第12回伊吹山のイヌワシ観察会」を2025年8月17日(日)に開催します。

イヌワシペアが近くの止まり場にくることを期待しつつ、ドライブウェイの待避所から定点観察します。
子ジカを連れて歩く母子ジカや袋角から枝角へと変わり始めた雄ジカ、ツキノワグマを観察できる可能性もあります。

天候によっては寒くなりますので防寒を準備してお越しください。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第12回伊吹山イヌワシ観察会案内
イヌワシ観察会案内

参加申込書
参加申込書(Excel)
参加申込書(PDF)

第11回伊吹山イヌワシ観察会 報告

7月13日の観察会の天気は心配なさそうだったので、天気図と睨めっこすることなく当日を迎えられた。ところが朝目覚めて伊吹山を見ると7合以上が暗い雲に覆われている。天気予報はもうすぐ晴れて来る予報だ。
空は少し明るくなって来た。晴れることを信じてバスでドライブウエイを登って行った。

今回のバスは納車されて3日目の新車ホヤホヤ。最前列から後部まで天井に連なるLED照明や綺麗な座席など、気持ちよくバスに揺られて観察地点へ向かった。

今日の観察場所はいつもより北へ100m離れた待避所に変更している。風向きなどを考慮してイヌワシが飛行するであろう場所が観察でき、運が良ければかなり近くに止まってくれる観察地点を選んだ。
霧はなかなか上がらない。短時間霧が晴れた時にニホンジカの群れが採食しているのが見えた。

昼食とトイレのためにバスで山頂駐車場へ向かう。午後には霧が晴れると踏んで、昼の休憩を予定より30分早めて午後の観察に備えた。
予想通り、観察場所に戻って間もなく霧が晴れた。

皆が集中してイヌワシを探す。1時間が経過し、イヌワシは現れるのかと不安になり始めたその時、背後の上空にイヌワシが現れた。ペアで北方向へ滑翔する。
北尾根で斜面スレスレまで降下して獲物を探している。尾根まで上昇して、さらに北へと飛行する。空気が澱んでいるので3km以上離れたイヌワシは双眼鏡の視界から消えてしまいそうだ。
イヌワシが飛行している地点を皆さんに説明しながら追跡する。しかしもう追跡しているのはイーグレットのスタッフだけになっていた。長い追跡のあと、ペアは北へ4km以上飛行して、暗い山の斜面がバックになったところで見えなくなった。

イヌワシペアが戻ってくるのを待って15:45の終了ギリギリまで観察を続けたがイヌワシは戻ってこない。

今日の第一発見者に贈る「ファーストディスカバリー賞」は、イヌワシペアを最初に発見された網代さんに決定、発表した途端にイヌワシペアが北尾根から戻ってくるのが見えた。

皆がまた観察体勢に戻る。ペアはこっちに向かってまっすぐに近づいてくる。高度を下げながら我々の眼下を通過して飛び去った。
最後の最後に素晴らしい出会いがあった。

中断していたファーストディスカバリー賞の続きを始める。
今回の賞品は山形県の名産品「お鷹ぽっぽ」だ。網代さんは何が出てくるだろうと興味津々に箱を開けている。細長い箱なので「コケシかな?」と言いながら中身を取り出した瞬間に「おおー」と口を開けて驚いている姿がおかしかった。
網代さん発見ありがとうございました。

また、最後の素晴らしい出会いの発見者である眞島さんに特別賞として、イヌワシ写真マグカップを感謝の意をこめて進呈しました。

次回観察会は8月17日です。
参加案内を近々アップします。

※ 今回、僕が伊吹の野生動物を連載させてもらっていた伊吹山周辺の情報誌「ふもと」が、「スーおじさんと伊吹山の仲間たち」という特集号をちょうど発行したところだったので、この小冊子を観察会で販売しました。ついでにイーグレットの販売物も出しました。
ニーナマグカップ、イヌワシ写真マグカップ、ツキノワグマのDVD、イヌワシやクマタカなどの写真クリアファイルなどなど。

※ 「スーおじさんと伊吹山の仲間たち」の原画展が道の駅「伊吹の里 旬彩の森」で7月27日から8月3日まで開催されます。

第11回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第11回伊吹山のイヌワシ観察会」を2025年7月13日(日)に開催します。

カッコウの爽やかに響き渡る鳴き声を聞きながら、イヌワシペアを探索し観察します。
小さな子ジカを連れて歩く母子ジカを観察しやすい時期です。またツキノワグマが度々出現しているので観察できる期待大です。

天候によってはかなり寒くなりますので防寒は十分に準備してお越しください。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第11回伊吹山イヌワシ観察会案内
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第10回伊吹山イヌワシ観察会 報告

伊吹山文化資料館で、イヌワシ幼鳥の剥製と記念撮影

今回の観察会は前回と全く同じような天気になった。
雨は朝まででほぼ止んだが伊吹山は山麓まで霧に包まれている。朝からドライブウェイで上がるのは諦めて、伊吹山文化資料館へ。

伊吹山で巣立って1ヶ月も経たないうちに衰弱して拾われた後、死んでしまった幼鳥の剥製を見学。何回見ても素晴らしい生き生きとした剥製だ。
その横で流している僕が撮影した「伊吹山にイヌワシが舞う」という15分のビデオを、今回はみんなが揃って見た。ビデオには、剥製になった幼鳥が元気に飛び回っている時の姿が収録されている。

レクチャールームに移り、僕が係わった40年前のイヌワシや猛禽類の映画作りやテレビの番組作りについての話をした。自主制作映画「イヌワシ風の砦」とテレビ番組木曜スペシャル「我ら誇り高き鷲と鷹」だ。
現在とは比べ物にならないような機材や設備で、よくここまで撮影したものだといつも思う。当時のカメラマンのプロ魂の集大成だ。
木スペでは、僕はコーディネーターとして撮影対象の巣を探し、撮影場所を案内した。クマタカの巣は3カ月の間に8ペアの巣を探し、サシバは4月に渡来後すぐに幾つかの営巣地を見つけ、トビの巣は1日で15巣を発見した。
たくさんの巣があっても、相手の猛禽に警戒されることなく撮影ができる、地形に恵まれた巣場所はほんのわずかなのだ。

資料館での話を終えたが、伊吹山の天候は好転しただろうか?窓を開けて伊吹山の方向を見るが、霧に包まれて伊吹山は見えない。河川沿いの平野部へミサゴを観察に行くと伝えて、とりあえず昼食とした。
霧の中でも伊吹山へ上がりたいという意見もちらほら聞かれる。
バスに乗り込んで、皆さんの意見を聞く。ミサゴ観察希望が10人、伊吹山へは9人とほぼ半々だ。
バスから外を見ると空が少し明るくなって一部に青空が見える。伊吹山の霧も5合目以上に上がっている。最終判断を僕に委ねてもらった。わずかな時間でも観察地点から視界が利くようになればイヌワシが出てきてくれる可能性は高い。伊吹山へ向かうことに決定した。

先行したスタッフから観察地点は霧と猛烈な風の中だと連絡があり、視界が晴れるまでかろうじて視界がある5合目駐車場で観察することにした。
雨混じりの強風の中、間も無くクマタカが飛行するのを観察できた。
雨は上がったが7合目まで覆っている霧は晴れる気配はない。イワツバメとトビがここまで上がってきて飛び回っている。1頭の雌ジカが駐車場の近くに現れた。我々を気にすることなく徐々に近づいてくる。目の前まで来て悠々と草を食べている。ドライブウェイにいる人間は安全だと安心しきっている。
アオバトが飛行し、ホトトギスやキビタキ、サンショウクイが鳴いている。
しかし、観察地点の霧は晴れることはなかった。5合目からの観察は高標高部の霧に阻まれ、イヌワシを発見することはできなかった。

16時で観察は終了した。
イヌワシの発見はなかったが、クマタカの第一発見者である南さんに今回の「ファーストディスカバリー賞」が決定した。
賞品はアフリカからの「ホロホロチョウの羽毛がデザインされたコーヒーカップとソーサーのセット」でした。

次回観察会は7月13日です。
参加案内を今週中にアップします。

資料館の博物学者の高橋順之さんに今回も一言いただきました

40年前の映像の話

バスで伊吹山ドライブウェイを走る

5合目駐車場から観察

双眼鏡の使い方を説明する

近くに現れた雌のニホンジカ

シカと記念撮影

「ファーストディスカバリー賞」

第10回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

「第10回伊吹山のイヌワシ観察会」を2025年6月15日(日)に開催します。

ニホンジカの出産シーズンは終盤となりますが、子ジカを探して行動するイヌワシペアを観察します。
小さな子ジカを連れて歩く母子ジカを観察しやすい時期です。またツキノワグマが度々出現しているので観察できる期待大です。

天候によってはかなり寒くなりますので防寒は十分に準備してお越しください。
多くの皆様の参加をお待ちしています。

第10回伊吹山イヌワシ観察会案内
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伊吹山のイヌワシ繁殖状況2025年5月15日 繁殖失敗

巣には雛も親ワシもいない。
繁殖は育雛中に失敗した

前回雛を確認したのは5月1日だ。撮影機材などを持たずに身軽に巣の見えるところまで行った。遠くてモヤモヤして雛が1羽なのか2羽なのかはっきりわからない。少なくとも1羽が動いているのがわかる。
やがて母ワシが給餌を開始して、雛は獲物の肉片を受け取っている。順調に育っている様子だった。

5月15日、繁殖状況を確認に行くと巣には何もいないように見える。巣までは遠いのと枝葉がかかっているので見えづらい。親ワシがいれば見えるはずだがいない。枝葉の向こうに白っぽいものが一部見えるが動く様子はない。
白っぽいものが動き出すのを期待して夕方まで待ったが動くことはなかった。親ワシたちも巣に出入りすることや近くを飛行することさえなかった。

繁殖は失敗している。
この2週間の間に何らかの原因で雛は死んでしまった。獲物が捕れなかったのだろうか、それともクマに巣を襲われたということもあるかもしれない。
せめて繁殖失敗の原因を知りたいが、もう知ることはできない。
今年も若ワシの飛行する姿が見られると信じていただけに非常に残念だ。

両親ワシは元気に飛行している姿を観察できた。
来年は繁殖成功することを祈る。

==イベントのお知らせ==============

本日、5月10日(土)、米原市主催のイベントにおいて、須藤一成が「伊吹山の動物」と題してミニ講演をおこないます。
他にも音楽ステージや月茶会など、楽しい企画がいっぱいです。
入場無料・予約不要。ぜひお越しください。

ティピの自然教室(森の方舟)
12:00-12:40
「伊吹山の植物」高橋滝治郎さん
13:00-13:40
「伊吹山の生き物」須康一成
14:00-14:40
「コンポストで土づくり!」ウエノチシンさん

2025年5月10日11:00〜16:00
伊吹薬草の里文化エンター・芝生広場

伊吹山植生復元プロジェクトイベント
「I am earth~伊吹山の未来を考えることは、地球の未来を考えること~」
https://www.city.maibara.lg.jp/mtibuki/syokusei_project/22194.html