Vol.31 アフリカ撮影記 Ver.8

草原で採食するシロサイ。普段はおとなしく人を襲うことはほとんどない。

シロサイは丸々とした巨体を持ちながら、いかにも軽そうに駆け足で走る。

体を上下左右にはほとんど動かさずに、猛然と突き進んでくる走りのせいで軽やかに見える。がっしりとした4本の足で2トンもある体を支えている。上下左右に揺れると足にかかる荷重は相当なものになってしまい、支えきれなくなるだろう。この巨大な体をうまく操り、時速40kmものスピードで走ることができる。体当たりでもされたら何メートルも吹っ飛んでしまいそうだ。

シロサイはおとなしそうに見えるが、近づきすぎると非常に危険である。撮影中にサイが向かってきたら、近くにある木に登って逃げようと目論んでいたので、僕は常にまわりの木をチェックしていた。シロサイに本気で体当たりされたら折れてしまうくらいの細い木が多かったが、他に逃げ込むところも無いので細くても木に頼るしかないのだ。

シロサイは幅広く平らな口をしていて、地上に生えている草を効率良く食べられるようになっている。特に人間を恐れている様子も無く、僕の存在など気にもかけていないかのようにゆったりと草を食べている。しかし、気に障るようなことをして怒らせては大変だ。

撮影する時も急激な動きはせずにゆっくりと行動する。それでも時々、シロサイは食べるのをやめて、顔を上げてこちらの様子をうかがっている。近づいてくる人間にシロサイも緊張しているが、それ以上に僕も緊張させられる瞬間である。

シロサイが次にどういう行動に出るか、見極めなければならない。こちらに向かって来るならば、僕は目標の木までシロサイよりも先にたどり着かなければならないのだ。

シロサイが再度草を食べ始めると僕の緊張も少しは和らぐ。この繰り返しがしばらく続くとシロサイの緊張もだんだんほぐれて、僕の行動をうかがうこともほとんど無くなってくる。僕が危害を加えないことを認識してくれたのだ。

近くから見るとあらためてシロサイの巨大さが実感できた。肩の高さは僕の背丈もあり、張り裂けんばかりの胴体の太さや角の大きさなど、とても素手では太刀打ちできない。

シロサイは、密猟によって非常に数が減っている。角が漢方薬や短剣の柄として高く取引されている。保護区内であっても密猟が後を絶たず、ほとんどいなくなってしまったところもある。ジンバブエでは、密猟の取り締まりを強化するとともに、シロサイが増えつつある地域からシロサイを運んで来て再導入を実施している。密猟さえ防ぐことができればシロサイが生きていく環境は整っている。うまくこの地に根付いていってほしいものだ。

シマウマやインパラの群れがいる草原に1頭のシロサイが現れると、僕の目はシロサイに釘付けになってしまう。シロサイには強烈な存在感がある。