ブロッケン現象に出会う

ブロッケン現象は、自分の影が霧などに映り、その影の周りを囲むように虹の光の輪が現れる現象だ。山岳地で見られていることが多いように思うが、実際には条件さえ合えばいろんなところで現れている。
度々見られるものではないが、僕はこれまでに3回以上は出会っているので、運がいい方なのかもしれない。山でブロッケンが出やすい条件は、朝や夕方など太陽高度が低い時に切り立った尾根に自分がいて、太陽と反対方向にだけ霧や雲が出ている時だ。

先日、と言っても1ヶ月以上前になるが、僕は切り立った尾根に立ち背後から朝の光が差していた。僕の前の谷間から霧が湧き上がってきた。霧が谷間を覆い始めた時、これはブロッケンがまもなく起きると直感した。カメラを手に取ろうとするが、カメラは望遠レンズを付けてプレートで固定しているので標準レンズに交換するには少し時間がかかる。今日はサブカメラを持って来ていない。iPhoneで撮るしかないと気付いた時、ブロッケンが現れていた。

何枚かシャッターを切ってすぐにブロッケンは終わった。霧は薄く途切れ途切れだったので、すぐに風で吹き飛ばされてしまったのだ。しばらくの時間ではあったが、ブロッケン現象はいつも神がかり的なものを感じる。
タイミングさえ合えばいつでも見られそうでなかなか出会うことがない。次回はいつ現れてくれるだろうか?

後光差すブロッケン現象

ふくい野鳥フェア2019

日本野鳥の会福井県主催の「ふくい野鳥フェア2019」にて、弊社の須藤明子が「野鳥と人の共存」と題して公演を行ないます。

□詳細はこちら

■日時:2019年4月13日(土)14:30 ~ 16:00
■会場:福井県海浜自然センター 体験学習室1(TEL0770-46-1101)
■お問い合わせ:日本野鳥の会福井県(wbsj.fukui@gmail.com)

オレンジと子カモシカの再会

単独でいる子カモシカに出会ったことは前回書いたが、10日後その子カモシカがオレンジと一緒にいるのを観察できた。子カモシカの肩から首にかけて、淡いオレンジ色の特徴的な毛色がはっきりと確認できる。先日からオレンジの行動圏内をうろついていた小さなカモシカは、オレンジの子どもであることが判明した。

子カモシカが単独で生活を始めた昨年11月頃から、その姿を見ることがなかった。どうしているのかと気になっていたのだが、元気に暮らしていたことが分かってホッとした。母子が出会って一緒に過ごすのは久しぶりなのだろう。子カモシカは母親にぴったりと寄り添って採食したり座ったりと、結構甘えているように見える。

夕方、母子は採食しながら次第に別々の方向へと移動して行った。夕闇が迫り、あたりは薄暗い。このままそれぞれの生活へと戻っていくのだろうか?こうした母子の出会いは、一時的な故郷への帰省のようなものなのかもしれない。



子カモシカとニホンジカと大接近

1歳に満たない子カモシカが単独で現れた。体は小さく、角も細く短い。オレンジカモシカの子どもかもしれないが分からない。この子カモシカは、肩から首にかけての毛色が特徴的でオレンジがかった淡い色をしている。別の日に出会っても個体識別ができるだろう。
まだまだ小さな子カモシカが、冬を単独で乗り切る姿にはいつも感心させられる。あまりにも頼りなげに見えるからだ。

子カモシカが採食しているところに、ニホンジカの母子がやって来た。母ジカが子カモシカの立てる音に気づいて警戒している。そのうちに子カモシカを見つけて警戒を解いて歩き去った。続いてニホンジカの群れが来た。子カモシカは居心地悪そうにしながらも逃げることなく採食を続けていた。
1頭の母ジカが、鼻先を子カモシカのほうへ伸ばしてゆっくりと歩み寄って来た。母ジカは子カモシカに挨拶しようとしているのかもしれない。逃げたいけども逃げないで頑張る子カモシカのどぎまぎとした様子が何とも愛おしい。母ジカは鼻先が触れんばかりに近づいた後、そのまま後退した。
子カモシカは少し離れた岩場へと歩き、ホッとしたのか座って休息を始めた。

後日、この単独で暮らす子カモシカが、オレンジの子どもであることが判明した。オレンジと離れてから長いこと姿を見せなかったが、元気に暮らしていたのだ。



雪のない斜面伝いに山を登るニホンジカ

暖冬でニホンジカは例年より標高の高いところにとどまっている。伊吹山の標高1,000mあたりでも、急傾斜地の雪は風で吹き飛ばされて積もりにくいので、すでに地肌が露出しているところが多い。シカたちはそうした場所に集まって採食している。雪解けが進むのに合わせて標高を上げて行く。雪に覆われていた場所には、冬の短期間ではあるが手つかずの植物が残っている。シカたちはその未開の地へ一番乗りするためにどんどん標高を上げているのだ。
雪が降るとシカは少し後退し、積もった雪が溶けると前進する。一進一退を繰り返しながらも着実に標高を上げて進んでいる。

1週間前には、どういう訳か雌ジカと子ジカばかりだったが、今日は雄ジカもたくさん姿を見せた。これまで最前線にいた雌ジカの群れに変わって、今日は雄ジカの群れが標高1,100mの最前線にいた。

雌ジカと子ジカの群れ

雄ジカの群れ

水たまりに集まるカラハリ砂漠の野生動物

19日の深夜に帰国した。今回の撮影で一番気になっていたことは、雨のことだった。今までは乾季に訪れることが多く、天気を気にすることなく毎日が晴れだったが、今回は雨季の真っ只中。雨による植物の芽吹きや、動物たちの行動の変化があるだろうと期待していた。そして40度を越える暑さも和らぐのではないかと、僕自身も雨を待っていた。しかし、予想に反して雨はほとんど降らなかった。滞在中の約40日間で雨に会ったのは2回だけだった。1回はポツポツと雨粒が落ちてくる程度で期待はずれ。もう1回は短時間だがザーザーと激しく降った。この時は朝だったこともあり、気温が17度にまで降下して、夏のカラハリ砂漠なのに肌寒く感じた。

この雨で、それまでたまにしか見かけなかったカメ達、Leopard TortoiseとSerrated Tortoiseが元気よく歩き回る姿があちこちで見られた。水たまりが道路上であってもお構い無しにガブガブと水を飲んでいる。雨のせいで活動的になったのか、Cape Cobraがネズミの巣穴に突入するのを観察することもできた。

水たまりには、猛禽類も集まって来た。Tawny EagleやBateleur、White Backed Vulture、Lanner Falcon、Secretarybirdなどが主だったメンバーだ。Tawny Eagleなどは成鳥と幼鳥を合わせて10羽以上が来ている。水を飲む前後には、近くの枯れ木に止まって休息している。違う種類の猛禽が争うことなく近くに止まっている。中でも面白かったのは、Tawnyの幼鳥とBateleurの幼鳥が毎日同じ枝で仲良く一緒に止まっていることだった。お互いに同種の兄弟とでも思っているかのようだ。

こうした光景は、水たまりが蒸発するまでの数日間続いた。水たまりがなくなると同時に猛禽類たちもどこかへ去っていった。

水を飲んだ後、兄弟のようにくつろぐTawny EagleとBateleurの幼鳥

第8回 「鳥と生きる?鳥類からみる自然とヒト?」

岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター主催の講座「野生動物を知る・第8回<鳥と生きる?鳥類からみる自然とヒト?>」に、講師として弊社より須藤明子が登壇します。

□詳細はこちら

■日時:平成31年1月26日(土)10:00 ~ 12:00
■会場:岐阜大学 講堂(岐阜市柳戸1-1)
■対象:一般市民 行政職員 関係者等
■申し込み:無 料
■お問い合わせ:岐阜大学応用生物科学部附属野生動物管理学研究センター TEL 058-293-3416(担当:國永)

誰かに似ているCape Fox

Cape Foxは主に夜間活動するためか、姿を見る機会は少ない。ある時、Cape Foxが巣穴の前で昼寝をしているのに出会った。眠そうに目を開けてこっちを見ている。大きな耳がピンと立ち、整った綺麗な顔をしている。顔はこっちに向けたままで、大きな耳だけを素早く前後に動かして周囲の状況をうかがっている。やがて立ち上がって巣穴へ入ったと思ったら、また出て来てうたた寝を始めた。

Cape Fox、誰かに似ている。そして間も無く仕事でお世話になっているその人を思い出した。涼やかな目元がそっくりなのだ。日本に帰ったら、その人にこの写真をプレゼントしようと思っている。

整った顔立ちのCape Fox

「竜巻とともに去りぬ」Martial Eagle

午後になると竜巻がよく起こる。竜巻といっても小規模なもので竜巻と呼べるのかどうかわからないが、風が渦状になって砂や落ち葉などを巻き上げながら移動していく。渦の中は結構な上昇気流が起きている。この竜巻は数百m移動して突然消滅することが多い。川(水はなく乾いている)の砂を100m程の高さまで巻き上げ、丘の上で消滅すれば川砂は丘の上に撒かれることになる。また、丘の砂が川に撒かれることもあるだろう。こうして水がなくても川や丘にある砂は移動している。

Martial Eagleは飛び立つ時、竜巻をよく利用している。ある時、少し大きめの竜巻が起こり、我々の車を砂埃の中に巻き込んで通り過ぎて行った。Martialが止まっている木のほうへ移動している。Martialは、翼を伸ばし飛ぶ準備を始めている。この竜巻に乗るものと思い、ビデオカメラを回し始めた時、なぜかMartialが止まり向きを変えて竜巻に背を向けた。竜巻はMartialの止まり木の近くを通り過ぎたが、飛び立たない。その時、Martialの視線の先に別の竜巻があることに気づいた。慌てて撮影方向を切り替えた。
まもなくMartialは飛び立った。竜巻に突入し、旋回しながら急激に高度を稼いだ。竜巻はしばらくして丘の上で消滅したが、Martialはそのまま高度を上げ、小さな点となって青空に吸い込まれるように見えなくなった。

Martialは、明らかに竜巻を観察して、利用する竜巻を選んでいる。それは竜巻の移動方向や強さなのだろう。
竜巻を利用するのは高度を手早く稼ぐためだけなのだろうか?竜巻に突入して飛行する姿を見ていると、渦の中の上昇気流を利用して飛ぶのを楽しんでいるように見える。

竜巻に突入するMartial Eagle

サプライズな誕生祝い

南アフリカのカラハリで年越しをし、その後1月8日には誕生日もカラハリで迎えた。自分の誕生日のことなどすっかり忘れてしまっていたのだが、夕食をロッジのレストランで食べ終えた時、レストランの奥のほうからアフリカンな手拍子とパチパチパチという花火の音とともにレストランのスタッフが列をなして入って来た。

何事だろうと見ていると、僕の目の前に超特大のケーキが置かれた。ケーキには「HAPPY BIRTHDAY」と書かれている。なんと僕のバースデイケーキだったのだ。今回同行している妻とスタッフの吉田くんが、僕に気づかれないようにレストランのスタッフと一緒にこのサプライズを計画していたらしい。
レストランスタッフの中には、休日にも関わらず夜の9時ごろにわざわざ駆けつけて来てくれた人も何人かいた。驚きとともにカラハリでの思い出深い誕生日となった。
妻の明子と吉田くん、Kgalagadi Lodgeのレストランとレセプションのみなさんありがとう。

特大のケーキとKgalagadi Lodgeのスタッフと記念撮影