シカの背中にカラスが乗って

ニホンジカの群れのまわりに数十羽のハシブトカラスがつきまとっている。シカの出産期には、生まれたての子ジカをカラスが捕食していたのだが、今は出産期がほぼ終わり、これから生まれてくる子ジカは少ない。それでも僅かなチャンスに期待して、山の中を右へ左へとたくさんのカラスが子ジカを探して飛び回っている。

座って休息中のシカの背中に、1羽のカラスが飛び乗った。シカのほうも嫌がる様子はない。何が始まるのかと興味津々に見ていると、シカの大きな耳を嘴の先でつついている。どうやらシカに付いているダニを取って食べているようだ。
シカの全身には、たくさんのダニが付着している。耳の部分は毛足が短く皮膚が見えているところもあるので、ダニもよく見える。
血を吸って丸々と膨らんだダニは、栄養も豊かだ。シカのほうは、ダニなどの寄生虫を取ってもらえるので、カラスを追い払うどころか歓迎しているように見える。

アフリカでは、鳥類のウシツツキの仲間などが哺乳類の体に止まって、寄生虫を食べている姿を普通に見るが、日本では見たことがなかった。ウシツツキは体長20数センチくらいだが、ハシブトガラスは55cmもあるので、小さな寄生虫を捕食していたのでは割に合わないと思うが、子ジカを探す間の副産物と思えば悪くはないだろう。


丘の上のアナグマハウス 5月1〜15日

アナグマは巣穴への関心がなくなったのか、この期間巣穴に来ることはなかった。タヌキのほうは興味津々で、毎回だんだん巣穴の奥へと入って行く。ニホンザルとテンが初めて姿を見せた。夏毛のテンは顔が真っ黒だ。冬のテンの顔は白い。
ニホンジカとニホンリスが近くを通過し、コウモリとネズミは何度も姿を現した。ネズミは巣穴に頻繁に出入りを繰り返していた。このアナグマハウスの一角で子どもを産んだと思われた。数日後には、子ネズミと思われるものをくわえて、巣穴から出て行くのが何度も見られた。くわえていたのが子ネズミかどうか断定はできなかったが、その後、ネズミの出現が極端に少なくなった。子ネズミをどこか別の巣に移動させたのだと思う。

タヌキは巣穴からビニール袋を引っ張り出した。今年はこの巣穴を使っていないので、昨年かそれ以前に持ち込まれたものだ。次に現れた時には、巣穴の中に全身が隠れるまで入って、方向転換をして頭から出て来た。その次の時には、2頭ともに巣穴に入り、2分ほど経ってから出て来た。
しかしその後は、ほとんど姿を見せない。一度だけ来た時には、巣穴には入らず、まわりで盛んにカマドウマを捕食していた。


オレンジカモシカがアナグマを威嚇

オレンジカモシカの母子は元気に過ごしている。子カモシカの動きはしっかりとしてきた。これだけ力強く動けるようになると、イヌワシに狙われる心配はほぼ無くなった。しかし、ツキノワグマに襲われる危険性はまだ当分続く。
先日、やや大型の白い犬が山の中にいるのを見つけた。狩猟犬と思われるが、飼い主からはぐれて野生化している。その日にも、ニホンジカの子どもを捕まえたようだった。母ジカがその犬のまわりを回って、心配そうに様子を見ていた。

子カモシカには、まだまだ危険がいっぱいだ。母親のオレンジカモシカにピッタリとくっついて歩き、すぐにお腹の下に入ろうとする。すでに恐ろしい思いをしたのかもしれない。子カモシカがお腹の下に入ってくるので、オレンジは歩きにくそうだ。

オレンジが不意に立ち止まり、草むらにいる何かに威嚇し始めた。子カモシカもオレンジの横に来て、その辺りを見つめている。オレンジが飛びかかるように威嚇した時、草むらからアナグマが飛び出して転げ落ちるように斜面を下った。アナグマは、少し下りたところで草の中から顔を出してオレンジのほうを見ていた。

カモシカは、普段はおっとりとして大人しく見えるのだが、けっこう気性は荒い。以前、通りかかったキツネを追い払ったり、ツキノワグマを追いかけているのを見たことがある。


カラスの群れが出産直後の子ジカを襲う

5〜6月ニホンジカの出産シーズンだ。山を歩いている時、目の前の草むらにニホンジカの子供がうずくまっているのを見つけた。生まれて1〜2日くらいだろう。
草の中に丸くなって、大人しく隠れている。眠っているように見えるが、耳が周囲の物音を聞くために動いている。僕との距離は2m、いつ逃げ出そうかとタイミングを見計らっているのかもしれない。まだ早く走れるわけではないので、見つからないように動かないことが1番の安全策なのだろう。
少し離れたところから様子を見る。しばらくすると子ジカは立ち上がったが、頭は下げて草の中に入れたままだ。数十センチ移動して座った。
あまり長居をすると、母ジカが戻って来れないので、僕はその場を離れた。

別のところにも子ジカを連れて歩く母ジカの姿をが見られた。これから出産するお腹の大きな雌ジカもあちこちにいる。
十数羽のハシブトガラスが騒いでいる場所を双眼鏡で見ると、そこに雌ジカが立っているのが見えた。雌ジカは周囲に舞い降りるカラスを追い払おうと躍起になっている。
雌ジカのすぐそばに降りたカラスが草陰で何かをつついて食べている。出産直後の子ジカが犠牲になったのか、それとも胎盤を食べているのだろうか。
1時間以上が経った頃、雌ジカは諦めたのか少し離れたところに座り込んだ。カラスは入れ替わり立ち替わりしながら何かを食べ続けている。カラスが引っ張り出したその残骸は子ジカであることが確認できた。

このところカラスの群れが山の斜面に降りて騒いでいるのを時々見かけるので、出産直後の子ジカを狙っているのではないかと予想はしていたが、これでカラスが出産直後の子ジカを襲うことがはっきりとした。
イヌワシやツキノワグマだけでなく、カラスもまた子ジカにとっては脅威となっている。


オレンジカモシカ7回目の出産

山はすっかり淡い緑の新緑に覆われた。小鳥たちは巣造りや育雛で忙しそうに飛び回り、夏鳥たちは繁殖地にたどり着いてにぎやかに囀っている。
オレンジ色のカモシカは、今年も子どもを産んだ。先日12日に確認したのだが、臍の緒は乾燥して短くなっているので2〜3日前に生まれたと推測される。オレンジは12歳になり、7回目の出産だ。
子カモシカはオレンジの周辺を走り回って元気にしている。まだ足元はおぼつかないが、引っかかる灌木を振り払って進んで行く。
昨年の子カモシカは、生まれた日の夕方から雨となって3日間降り続いた時に死んでしまった。今年は出産後は良い天気が続いている。しかし、天気予報ではこれから雨となって2〜3日降り続く予報だ。
昨年は生まれてすぐの雨だったが、今年はすでに数日が経過しているので問題はないと思う。が、少し心配だ。

今日は雄のカモシカが現れ、オレンジ母子のところに近づいて来た。雄は子育てには全く関与しないので、発情期ではないこの時期に母子のそばに出てくることは少ない。オレンジに擦り寄って行くが、ほとんど相手にされなかった。顔を近づけて挨拶を交わした後、雄カモシカは足早に斜面を下って去って行った。


丘の上のアナグマハウス 4月16〜20日

4月16〜20日の間にキツネ・アナグマ・ノウサギ・タヌキが巣穴近くに現れた。
キツネは4月11日の個体と同一で、右前脚を怪我している。
アナグマは、夜と朝に出現した。巣穴のまわりに下腹部を擦り付けるようにマーキングし、巣穴を覗き込んで去って行った。
ノウサギが丘の上を通過した。
夫婦と思われるタヌキが交互に巣穴に入ってしばらく様子を見て去って行った。巣穴をかなり気にしている。


丘の上のアナグマハウス 4月11〜15日

伊吹山山麓にあるアナグマの巣穴を無人カメラで観察。
巣穴は10mほど離れたところにもう1つあって、近くにはさらに2〜3ヶ所、崩れて塞がりかけている穴もある。これらの穴は地中で繋がっている。
アナグマは、地中深く掘り進んだ穴の中で冬眠をして子どもを産み育てる。
今年は利用しなかったが、アナグマはもちろん、巣穴を利用するキツネやタヌキも時々様子を見にやって来る。

4月11〜15日の間にヤマドリ・キツネ・カケス・ニホンジカ・ネズミ類・アナグマが巣穴近くに現れた。
キツネは巣穴が気になる様子で、中を覗き込んで去って行った。右前脚を怪我している。先端部分が切断されている。ニホンジカの有害捕獲のために仕掛けられたくくり罠にかかり、暴れまわって脚先がちぎれて、どうにか抜け出して来たのだ。近年、こうした脚先のない野生動物をたびたび見かけるようになった。
アナグマは朝明るくなって現れた。巣穴を気にして覗き込んでいた。


ニホンジカの角落ちシーズン

先日、ニホンジカの角を3本拾った。ニホンジカは毎年角を落として新しく生え替わる。3月中旬から5月中旬に角を落とす。
今回拾った3本は、いづれも標高1,000m程の尾根を歩いている時だった。2本は、地面を平らにならしたシカの休息場所に1mほど離れて落ちていた。同じ個体の左右の角だ。もう1本は、残雪の脇に落ちていた。2本は休息中に、1本は採食中に落ちたものだ。
角が落ちて間もない時には、角が生えていた部分が痛々しく見えるが、シカのほうは至って平然としている。間も無く、そこから袋角と呼ばれる柔らかい角がむくむくと伸びてくる。
立派に大きくなった角が、翌年には落ちて生え変わる。角の再生にはかなりのエネルギーが必要と思われるのに、毎年生え変わる必要があるのだろうか?
角は8月までは外皮をかぶっているが、9月には骨化した硬い角となっている。


子グマの滑り台

眩いばかりのブナの新緑やタムシバの白い花が春の山を彩っている。ツキノワグマが冬眠から目覚める季節がやって来た。
昨日は1頭のツキノワグマが3本のタムシバの木を渡り歩いて、白い花を手当たり次第に食べていた。クマが登った木は、花の数が減った分だけ色褪せて見える。花を食べ尽くしてしまうと、木にとっては一大事ではないかと思うが、花は半分くらいは残っている。
今冬は雪が多く、雪が長く残っていた割にはタムシバが早く咲いた。普通は標高が低いところから咲くのだが、今年は標高に係わらず一斉に咲いている。むしろ標高の低いところのほうが遅いように見える。

1日経った今日は、昨日と同じと思われるクマが150mほど上の木に登って、芽吹き始めた葉を食べている。すぐに動きが止まり、枝の上で昼寝をしている。冬眠明けのクマはよく眠る。
800mほど離れた斜面には母子グマが現れた。昨年生まれの子グマはやんちゃ盛りだ。母グマとは違う方向へ歩き出した時に、急傾斜地に積もった落ち葉に乗って2〜3m滑り落ちた。滑り台として遊んでいるように見えたが、予期せず滑り落ちて驚いているのかもしれない。
子グマは怯む様子はなく、急斜面を歩いて母グマが消えた林の中へと入って行った。


ニホンジカ、標高1,000mに到達

ニホンジカは、毎年冬の初めに山を降りて積雪の少ない場所で冬を過ごす。春には雪解けとともに伊吹山を登って来る。その時期は積雪量によって変わる。ここ数年は、かなり雪が少なかったので、2月中旬には標高1,000mまで登って来ていた。
今冬は積雪が多く、シカが山を登って来るのが遅い。それでも3月に入ってから暖かい日が続き、日差しも強まってきて一気に雪解けが進み始めた。雪が積もりにくい急傾斜地や、日当たりが良い場所は地面が露出してきた。シカたちは上を目指してどんどん登り始めている。3月11日には、標高1,000mに到達した。相当お腹を空かせていたのか、広く地面が露出している場所で一心に採食を始めた。
これ以上の標高は、まだ大部分が1m以上の雪に覆われているので、この辺りで少しの間停滞となるだろう。