野生動物の世界を伝える
人と野生動物の共存について提案する
イーグレット・オフィス

野生動物の保護と管理
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…


All the things begin from Golden Eagle!
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野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…
今春はいろんな花が咲くのは例年よりかなり遅かった。サクラは1週間から10日遅れで、山のタムシバは10日以上も遅れて4月下旬に満開になった。毎年この白い花を食べにクマが木に登る。
一月近く前のことになるが、今年も満開のタムシバの木に親子のクマが現れた。ガバガバと花を食べながら枝先へ登っていく。枝がしなり、クマは一旦躊躇したものの花の誘惑に負けて一歩踏み出した途端に木から落ちてしまった。しかし、枝に片手でぶら下がって地上まで落ちずに止まった。落ちていく重い体重を片手で受け止めるとは、クマはやはりすごい。
1歳を過ぎたばかりの子グマのほうも不安定な細い枝の上でフラフラよろけている。そのうちに子グマも落ちた、が、同じ枝に前肢で掴まってぶら下がっている。雲梯のように前肢を交互に動かして、枝の太いところまで戻った。
クマの木登りを見ていると、時には落ちることもあるだろうといつも思っていたのだが、やはり落ちるらしい。しかしこの運動能力なら怪我をすることはほとんどないのだろう。
クマも木から落ちる。タムシバの花の誘惑
オレンジカモシカの出産を今か今かと待っていた。ついに今日、生まれて間もない子カモシカを確認した。灌木の藪の中にオレンジと一緒にいたので、小さな子カモシカの姿は木々の間からチラチラとしか見えない。オレンジはガシガシと木の新芽を食べている。その足元でヨロヨロとうごめいている。
昨日の昼には、オレンジは子カモシカを連れていなかった。昨夕から今朝にかけて出産したのだ。子カモシカを気遣って、オレンジはほとんど移動せずに近くの木の葉を食べていた。
オレンジカモシカの足元で、ヨロヨロとうごめく生まれて間もない子カモシカ
ニホンジカも出産の季節だ。1週間ほど前から時々子連れの母ジカの姿を見かけるようになった。ニホンジカの場合は、子ジカを藪の中に置いて採食に出て行くので出産しているのかどうかは分かりにくい。
集落に張り巡らせてある野生動物の侵入防止柵の向こうで、一頭の若い雌ジカが恨めしそうに田畑を眺めている。今の季節、田畑はまだ雪に覆われていて食べるものはほとんどない。食物を求めているのではなく、行く先にフェンスがあって阻まれたのでボーとしているだけなのかもしれない。
時々下にある草を食べながらゆっくりとフェンスに沿って移動していった。
農地を囲むフェンスの前でたたずむニホンジカ
侵入防止策が張り巡らされると、そこを行き来できなくなった大型獣はフェンスに沿って歩いていることが多い。フェンス沿いにはシカの足跡が道のようになって続いている。ところどころフェンスと地面の隙間を広げてイノシシが侵入した痕跡がある。
しかしながらフェンスができてシカやイノシシの農地への侵入は格段に少なくなった。
雪とともに低標高地へと移動していたニホンジカが、雪解けとともに高標高地へと移動している。雪解けの早い南斜面や急傾斜地では、山肌があちらこちらで露出している。シカたちは素早くそういうところへ進出して、雪に埋もれていた植物を食べている。
一方、積雪期も山を下ることなく生活していたカモシカは、同じような植物食のシカが戻って来たことで迷惑しているのかもしれない。
オレンジカモシカは、そんなシカをどのように思っているのか分からないがじっと見つめていた。そしてふと我に返り、雪を舐めて喉を潤し松葉を食べていつもの生活に戻った。
同じエリアで生活するカモシカとニホンジカ。
シカの生息密度は高く、カモシカの何倍もの数がいる
県道を車で走っていると道路脇の雪の上にカモシカが立っていた。自動車が時折行き交う道路を横断して対岸の山へと行きたいらしい。集落内を通ってここまで出てきたのだ。道路を渡るとその向こうには川がある。川を渡ると林になっていて山の斜面に続いている。そこまで行くと安全地帯だ。
車を恐れているようには見えないので、通り過ぎてからUターンしてカモシカのところへ近づいて行った。スピードを落として近くまで行くと、カモシカは危険を感じたらく慌てて向きを変えて走り去った。
何台か車が通り過ぎても気にしていなかったのだが、スピードを落として近づくと恐怖を感じている。動物たちは人間の動きをよく観察している。自分に興味を持つ人間は危険だと思っている。田や畑で農作業をしている人の近くに鳥や哺乳類が出てくることはあるが、撮影しようと構えると動物は逃げて行くことが多い。自分に興味を持たれたことを素早く感じ取って逃げるのだ。
今回のカモシカも、道路を渡るタイミングを見計らっているうちに、このカモシカに興味を持つ人間が現れて一旦引き返さざるを得なくなったのだ。
雪に足を取られながら逃げるカモシカ
冬型の気圧配置が緩み、高気圧に覆われてきたので山に出かけた。早朝は快晴だったが、目的の場所に到着した頃には霧に覆われて視界が全くなくなってしまった。こういう時は平地では晴れ間が続いていて、山のそれも一部分だけに霧が発生していることが多い。しかし、自分のまわりは白一色で何も見えないので、世界中がこのような天気であるような気がしてくる。
マイクには霧の水蒸気が付着して霧氷となった。
太陽が当たらないので気温は上がらない。撮影地に到着してからは、動かずに待ち続けるので寒さがこたえる。南極でも使えそうな嵩高い羽毛服を着込んで霧が晴れてくれるのをひたすら待つ。
霧が晴れるのをひたすら待つ。
14時ごろ、今日の撮影は諦めて下山しようかと思った矢先、あたりが少し明るくなり、霧が一部分だけ晴れた。対岸の雪上にカモシカらしい足跡がある。足跡の先にカモシカ1頭を発見した。カメラをカモシカに向けようとした時には再び霧に覆われてしまった。
その後も霧は晴れず、耐寒訓練の1日だった。
先日の雪で山は1m以上の積雪になった。標高の高いところにいたニホンジカは、ほぼすべて雪の少ない山麓へ下っている。今は雪に覆われて真っ白な斜面にシカの姿はない。
午後になって、山麓への移動が遅れた1頭の雌ジカが現れた。山麓へ向かっているのだろうか?結構慌てている様子だが、脚が雪に埋もれて思うように身動きが取れずに難航しながら林の中へ入って行った。
一方、カモシカは、冬になっても移動することなく雪山で暮らしている。雪の上に出た枝や樹皮を食べて冬を乗り越える。
オレンジカモシカも少しだけ姿を見せてくれた。今日は子カモシカを連れていない。別々に行動しているようだ。
カモシカは、立ち上がって高い位置の枝や樹皮を食べる
雪のない年末年始だったが、ようやく本格的な雪が降った。小鳥たちが雪に覆われた山から里へと降りて来た。集落周辺の林や建物の陰など、雪が積もりにくい場所で必死に採食している。
寒波が去った穏やかな今日は、鳥たちも活動的に見える。凍った湖にもわずかな水面を見つけてカモたちが集まっている。
降雪中は姿を見せなかったモズが、晴れ間とともに家の周りに出て来た。太陽の光を浴びて、少し動き出した昆虫を見つけては食べている。獲物は主にカメムシである。
雪の上には昨夜歩いたキツネの足跡が続いている。雪の上をよく見るとテントウムシが歩いている。よくぞ冷たい雪の上で活動しているものだ。夕方になって太陽光が弱まる前に、冬眠に戻れるいい場所に辿り着かなければ生き延びることはできないだろう。
今日は動物たちが元気を取り戻したかのような穏やかな冬の晴れ間だった。
冬の晴れ間に動き出した動物たち。雪上のキツネの足跡。凍結を免れたわずかな水面に集まるオシドリ、オオバン、キンクロハジロ。カメムシを捕食するモズ
自然と共に「伊吹の野生を撮り続けて」と題して、写真家須藤一成のエッセイ連載が滋賀民報で始まります。月1回、年12回の連載となります。お楽しみに!
■滋賀民報
http://shigaminpo.com/
■2017年1月15日号の掲載記事
http://shigaminpo.com/BN/img_BN/201701154.png
弊社代表であり写真家でもある須藤一成が、「野生を撮る」と題して滋賀民報の取材を受けました。2017年1月1日・1月8日合併号に記事が掲載されています。
■2017年1月1日・1月8日合併号
http://shigaminpo.com/BN/20170101.shtml
■掲載記事
http://shigaminpo.com/BN/img_BN/201701016.png