ニホンジカの子どもが元気に跳ね回る

ニホンジカの出産は5月が多い。しかし、生まれて間もない子ジカは、1日の大半をブッシュの中に隠れて過ごしているので、見つけるのは難しい。母ジカは授乳の時だけ子ジカのところにやってくる。
今年出産したであろう雌ジカを見極めて追跡することで、子ジカを見つけることができる。出産した雌の見極めは、体格が良く昨年生まれの若いシカを連れていない個体を選ぶとほとんど間違いはない。出産は隔年なので、昨年の子ジカがいる雌は今年は出産していない。

6月の半ばを過ぎると、子ジカは母ジカについて歩き回るようになる。こんなに子ジカがいたのかと、びっくりするくらいあちこちに現れる。走ったり飛び跳ねたりすることが楽しそうだ。突然母親から離れて一直線に100mも走り出したと思ったらUターンして全力疾走で戻って行く。
やんちゃ盛りの子ジカは、僕がいることに気づかずに、目の前まで走って来てびっくりして逃げ帰ったり、母ジカより先をどんどん歩いて僕に出くわしたりと無邪気なものだ。近づいた先がクマだったら子ジカの命はない。

子ジカが十分な警戒心と注意力を身につけるまでには、まだまだ時間がかかる。それまで生き残れる子ジカは半数もいないだろう。



冒険心が旺盛な子ジカが遠出。母ジカは子ジカを探す

子カモシカの死

子カモシカが生まれた翌日から、3日間雨が降り続いた。今年は異常に早い梅雨入りとなった。生まれてすぐに雨続きなので、子カモシカが心配だ。ようやく雨が上がった日の早朝にオレンジ母子の様子を見に行った。
4日前と同じ所で座っているオレンジを見つけた。子カモシカは見えないが、オレンジの陰にいるのかもしれない。しかし、嫌な予感がする。4日間も場所を変えずにいるのは変だ。
やがてオレンジは立ち上がり歩き出した。しかし、子カモシカはいない。オレンジは足早に移動して行くが、子カモシカの姿はない。生まれたばかりの体に降り続いた冷たい雨で、体温を奪われて死んでしまったのだろう。残念だ。

オレンジは昨年も子どもを生んだが、1週間以内にいなくなっている。その子カモシカは、イヌワシに見つかって狙われていたので、オレンジから少し離れた隙に襲われたものと思われた。
自然界で生きることは厳しい。生き延びるためには運も必要だ。



足早に歩くオレンジの足元に子カモシカの姿はない

オレンジ色のカモシカ6回目の出産

オレンジ色のカモシカは5月14日の早朝に子どもを生んだ。僕がオレンジを見つけた時には、足元にいる子カモシカを盛んに嘗めていた。
30分ほど経って子カモシカはヨロヨロしながら立ち上がったが、急斜面で木や草など障害物が多いので思うようにはまだ歩けない。それでもオレンジはしばらく経ってから移動を開始した。採食しながらゆっくりと斜面を登って行く。子カモシカもよろけながらなんとか離れずについて歩いたが、すぐに灌木に阻まれて進めなくなった。数メートル離れた子カモシカに気付いたオレンジは、慌てて元の場所へと戻った。子カモシカもオレンジの足元に戻った。

その後、オレンジは出産時の胎盤を拾い上げて食べ始めた。もぐもぐと噛みしだきながら少しづつ飲み込んでいった。なかなかの量があるので、食べ切るのに30分以上もかかった。全てを飲み込んだ後、ゲボッとなって苦しそうだった。
今日はこの場所から動かずに夕方を迎えた。



出産直後のオレンジカモシカ母子。胎盤を食べる

日本とアフリカの野生動物写真映像展 〜動物写真家 須藤一成の世界〜

京都のレティシア書房様にて、弊社代表でもある動物写真家の須藤一成の作品展を開催します。

須藤一成がライフワークとしている伊吹山とアフリカの野生動物の作品を中心に、写真と映像による展示(写真が動き出す!)を行います。また、期間中は展示作品とオリジナルグッズの販売も行います。

■日時:2021年1月20日(水)〜31日(日)13時〜19時・・・月曜・火曜定休日
■会場:レティシア書房
■場所:京都市中京区高倉通り二条下がる瓦町551
■問合せ:TEL075-212-1772
■HP:http://book-laetitia.mond.jp/

尚、新コロナウィルス感染症対策のため、ご来店の際はマスクの着用と手指の消毒にご協力ください。

★レティシア書房様の店長日誌にてご紹介いただきました!
須藤一成「日本とアフリカの野生動物写真映像展」スタート

伊吹山文化資料館 第148回企画展「伊吹山にイヌワシが舞う」講演会

同企画展の期間中、弊社代表でもある動物写真家の須藤一成が講師として講演会に登壇します。

伊吹山のイヌワシの40年間の記録とこれまで取り組んできた保護活動を、映像と写真を使いながら様々なエピソードを交えて話します。

■日時:2020年7月26日(日)13:30〜 
■講師:動物写真家 須藤一成(株式会社イーグレット・オフィス代表)
■参加費:500円
■募集:30名(要申込・先着順)
■場所:伊吹山文化資料館講座室
■問合せ:TEL0749-58-0252
■HP:http://www.zb.ztv.ne.jp/mt.ibuki-m/

□伊吹山にイヌワシが舞う

伊吹山文化資料館 第148回企画展「伊吹山にイヌワシが舞う」

伊吹山をはじめ1,000m級の山が連なる伊吹地域に1つがいのイヌワシが生息しています。2001年からの5年間に4回繁殖に成功して以来、14年ぶりに1羽の若ワシが巣立ちました。

白斑を輝かせて大空を舞う姿を見られたのも束の間、巣立ち後半月ほどで弱ってうずくまっているところを保護されましたが、数日後に死んでしまいました。

映像・写真展では、この若ワシが元気だった頃の姿や、イヌワシの1年の生活を紹介します。あわせて、貴重なイヌワシの骨格標本も展示します。

■写真・映像:動物写真家 須藤一成(株式会社イーグレット・オフィス代表)
■期間:2020年7月9日〜8月6日
■場所:伊吹山文化資料館
■開館時間:9:00〜17:00(入館は16:30まで) 
■休館日:月曜日・祝日の翌日
■入館料:一般200円・小中学生100円
■問合せ:TEL0749-58-0252
■HP:http://www.zb.ztv.ne.jp/mt.ibuki-m/

□伊吹山にイヌワシが舞う

オレンジカモシカ、今年は出産せず

オレンジカモシカは、2015年に初めて子どもを産んでから4年連続で出産し、子カモシカを育てて来た。しかし、5年目の今年は出産しなかった。
そのせいか独り立ちして暮らしている昨年の子カモシカが、時々オレンジのところに戻って来て一緒に行動している。

7月のある日、昨年の子カモシカがオレンジを見つけていつものように近づいて行った。子カモシカは早足でオレンジのところまでルンルン気分で駆けて行った。ように見えた。オレンジの直前で立ち止まり、そこから先は恐る恐るオレンジの様子を見ながら近づこうとしている。その時、オレンジが下から頭を振り上げるようにして「近寄るな!」というような行動をとった。子カモシカは呆然として立ち尽くしている。オレンジは子カモシカと反対方向へ採食しながらゆっくりと歩き始めた。子カモシカは悔しそうにススキに八つ当たりした後、オレンジとは反対方向へゆっくりと歩を進めた。

もう別々に暮らす時期だということなのだろうか?人間的には、時々戻って来てしばらく一緒に暮らしていてもいいのにと思えるのだが、カモシカの世界ではそうではないらしい。厳しいが、そこには野生で生き抜くための知恵が隠されているのだと思う。



子ジカを探して授乳する、ニホンジカ

ニホンジカは、子ジカを藪の中において、授乳の時だけ子ジカのところにやって来る。これは逃げ足の遅い子ジカが外敵に見つからないようにするためだが、母ジカが来るまでに子ジカは多少移動しているので、母ジカは子ジカがいた場所まで来てまわりを探すことになる。

母ジカは夕方に子ジカのところへやって来ることが多い。両耳をアンテナのように広げて、子ジカが立てる物音をキャッチしようとあたりを見回す。そして母ジカは、登山者など人が近くにいる場合でも警戒しながら子ジカを探して歩いて行く。普段ならそんなに人間に近づくことはしない。
まもなく子ジカが母ジカに気づいて駆け寄って来るのだが、時にはなかなか見つからないこともある。それでも母ジカは根気よく探して子ジカを見つけ出す。子ジカはお腹を空かしているので、すぐに母ジカの腹の下に入って乳を飲み始める。十分に乳を飲んだ子ジカは、しばらくは母ジカのそばにいるが、そのうちに茂みに隠れ、母ジカは他のシカたちと採食しながら去って行く。

このような生活が1ヶ月ほど続き、子ジカが少し大きくなって素早く走り回れるようになると母ジカと行動を共にするようになる。5〜6月に生まれた子ジカたちは、今では徐々に母ジカと行動を共にするようになっている。



子ジカを探す母ジカ。子ジカが母ジカを見つけて駆け寄り、乳を飲む

脚を失った野生動物。くくり罠との関係

近年、脚の先端部が無い野生動物を時々見かける。キツネやタヌキ・アナグマなどの中型哺乳類のほか、大型のニホンジカも片脚のないものがいた。こうした野生動物をちょくちょく見かけるようになって、その原因として気になったのがくくり罠だ。

ニホンジカが増えて農作物や林業の被害、山の植物が食べられて裸地化するなど深刻な被害が発生している。それに伴ってニホンジカの有害捕獲が盛んに実施されるようになった。銃器や檻、くくり罠などで捕獲する。くくり罠はワイヤーなどで動物の脚を締め上げて捕獲するのであるが、目的のシカだけではなくいろんな動物を捕獲してしまう。実際にタヌキがかかっているのを見たことがある。また罠の近くで死んでいるキツネやタヌキも見た。

くくり罠で誤捕獲した場合、生きたまま逃してやることは難しく、逃がせたとしても締め上げられた脚は骨折や脱臼などで使えなくなっている。
脚を切断して逃げてどうにか生き延びてきたのが、今回の映像に映っている動物たちではないだろうか?自然状態では、脚を切断するような怪我というのは、めったに起こるものではないだろう。

くくり罠は簡単に設置できるので相当な数が仕掛けられている。罠は改良が加えられて誤捕獲しにくいような工夫がされてきているが、目的の動物以外のものが捕獲される可能性はまだまだ高い。特定の動物を捕獲するはずが、無差別的な捕獲となっている。



アナグマ・キツネ・タヌキ・ニホンジカの脚先がなくなっている。キツネは右前脚と左後脚がない

アナグマ、雨上がりの田んぼで餌探し

朝からいい天気なので山に登って林の中を散策した。春先の新緑の林は気持ちがいい。夏鳥たちの声が賑やかだ。キビタキが近くの木にやって来た。鮮やかな黄色い背中がよく目立つ。時折小さな虫を捕まえて食べている。

沢を挟んだ対岸から岩が転げ落ちる音が聞こえてきた。何か動物が歩いているのだろう。音のする方向を探す。いたいた、ツキノワグマだ。急峻な斜面を登っている。クマはすぐに林の中に入って見えなくなった。

午後からは雲行きが怪しくなってきた。下山途中から雷雨となった。スギの木の下で雨宿りするが、ここも間も無く雨漏りし始めるだろう。車まではもう少しなので、雨が小止みになった時に駆け下りる。

家に戻って前の田んぼに目をやると、何かがもぞもぞと動いている。アナグマだ。鼻先を地面に突っ込んで地中にいるミミズや昆虫などの幼虫を探して食べている。ちょこまかと忙しく動き回ってほとんど動きが止まらない。行動を見ていると、鼻先で地面を触っただけで地中に何かがいるかどうかを見分けているようだ。いない場合はすぐに別の場所へと鼻先を持って行く。いるとみれば鼻先を深く地面に突っ込んで探す。

土の塊を鼻先で砕いた時に、トンボのヤゴのようなものが出て来たのが見えた。アナグマはすぐにそれをくわえてパクパクと食べた。何を食べているのかこちらからは見えないことが多いが、時々慌てて何かを捕まえて食べている。
アナグマが見えない所へ去ってすぐに、別の田んぼに別のアナグマが現れた。同じように食物を探して歩き回っている。

雨上がりはアナグマの食物探しに都合がいいことがあるのか、それとも2頭が出て来たのは偶然なのか、何れにしても2頭のアナグマをじっくりと観察できた。