子カモシカに体色の変化

オレンジ色のカモシカは、これまでに4回出産している。父カモシカと同じグレーの子カモシカばかりが生まれている。オレンジ色をした子カモシカは生まれていない。

昨年の子カモシカもグレーであった。昨年11月ごろまでは。その後、オレンジとは別に過ごすようになってしばらく姿を見せなかった。2月になって久しぶりに子カモシカが現れ、オレンジと合流して一緒に行動しているのを見た。11月までの全身グレーの体色から少し毛色が変わっている。肩から頭までが淡い色で白っぽくオレンジがかった毛色になっている。肩のあたりを境にして、頭側と尻側で明確に毛色が違っている。他のカモシカにはない特徴的な体色なので、この子カモシカは個体識別して今後追跡できそうだ。

この子カモシカは、その後も時々オレンジの行動圏で過ごしているのを見かけるが、オレンジと合流することなく別々に生活している。体色は徐々にオレンジ味が強くなっているように思う。母カモシカのオレンジ色を受け継いでいるようだ。



オレンジと子カモシカの再会

単独でいる子カモシカに出会ったことは前回書いたが、10日後その子カモシカがオレンジと一緒にいるのを観察できた。子カモシカの肩から首にかけて、淡いオレンジ色の特徴的な毛色がはっきりと確認できる。先日からオレンジの行動圏内をうろついていた小さなカモシカは、オレンジの子どもであることが判明した。

子カモシカが単独で生活を始めた昨年11月頃から、その姿を見ることがなかった。どうしているのかと気になっていたのだが、元気に暮らしていたことが分かってホッとした。母子が出会って一緒に過ごすのは久しぶりなのだろう。子カモシカは母親にぴったりと寄り添って採食したり座ったりと、結構甘えているように見える。

夕方、母子は採食しながら次第に別々の方向へと移動して行った。夕闇が迫り、あたりは薄暗い。このままそれぞれの生活へと戻っていくのだろうか?こうした母子の出会いは、一時的な故郷への帰省のようなものなのかもしれない。



子カモシカとニホンジカと大接近

1歳に満たない子カモシカが単独で現れた。体は小さく、角も細く短い。オレンジカモシカの子どもかもしれないが分からない。この子カモシカは、肩から首にかけての毛色が特徴的でオレンジがかった淡い色をしている。別の日に出会っても個体識別ができるだろう。
まだまだ小さな子カモシカが、冬を単独で乗り切る姿にはいつも感心させられる。あまりにも頼りなげに見えるからだ。

子カモシカが採食しているところに、ニホンジカの母子がやって来た。母ジカが子カモシカの立てる音に気づいて警戒している。そのうちに子カモシカを見つけて警戒を解いて歩き去った。続いてニホンジカの群れが来た。子カモシカは居心地悪そうにしながらも逃げることなく採食を続けていた。
1頭の母ジカが、鼻先を子カモシカのほうへ伸ばしてゆっくりと歩み寄って来た。母ジカは子カモシカに挨拶しようとしているのかもしれない。逃げたいけども逃げないで頑張る子カモシカのどぎまぎとした様子が何とも愛おしい。母ジカは鼻先が触れんばかりに近づいた後、そのまま後退した。
子カモシカは少し離れた岩場へと歩き、ホッとしたのか座って休息を始めた。

後日、この単独で暮らす子カモシカが、オレンジの子どもであることが判明した。オレンジと離れてから長いこと姿を見せなかったが、元気に暮らしていたのだ。



雪のない斜面伝いに山を登るニホンジカ

暖冬でニホンジカは例年より標高の高いところにとどまっている。伊吹山の標高1,000mあたりでも、急傾斜地の雪は風で吹き飛ばされて積もりにくいので、すでに地肌が露出しているところが多い。シカたちはそうした場所に集まって採食している。雪解けが進むのに合わせて標高を上げて行く。雪に覆われていた場所には、冬の短期間ではあるが手つかずの植物が残っている。シカたちはその未開の地へ一番乗りするためにどんどん標高を上げているのだ。
雪が降るとシカは少し後退し、積もった雪が溶けると前進する。一進一退を繰り返しながらも着実に標高を上げて進んでいる。

1週間前には、どういう訳か雌ジカと子ジカばかりだったが、今日は雄ジカもたくさん姿を見せた。これまで最前線にいた雌ジカの群れに変わって、今日は雄ジカの群れが標高1,100mの最前線にいた。

雌ジカと子ジカの群れ

雄ジカの群れ

水たまりに集まるカラハリ砂漠の野生動物

19日の深夜に帰国した。今回の撮影で一番気になっていたことは、雨のことだった。今までは乾季に訪れることが多く、天気を気にすることなく毎日が晴れだったが、今回は雨季の真っ只中。雨による植物の芽吹きや、動物たちの行動の変化があるだろうと期待していた。そして40度を越える暑さも和らぐのではないかと、僕自身も雨を待っていた。しかし、予想に反して雨はほとんど降らなかった。滞在中の約40日間で雨に会ったのは2回だけだった。1回はポツポツと雨粒が落ちてくる程度で期待はずれ。もう1回は短時間だがザーザーと激しく降った。この時は朝だったこともあり、気温が17度にまで降下して、夏のカラハリ砂漠なのに肌寒く感じた。

この雨で、それまでたまにしか見かけなかったカメ達、Leopard TortoiseとSerrated Tortoiseが元気よく歩き回る姿があちこちで見られた。水たまりが道路上であってもお構い無しにガブガブと水を飲んでいる。雨のせいで活動的になったのか、Cape Cobraがネズミの巣穴に突入するのを観察することもできた。

水たまりには、猛禽類も集まって来た。Tawny EagleやBateleur、White Backed Vulture、Lanner Falcon、Secretarybirdなどが主だったメンバーだ。Tawny Eagleなどは成鳥と幼鳥を合わせて10羽以上が来ている。水を飲む前後には、近くの枯れ木に止まって休息している。違う種類の猛禽が争うことなく近くに止まっている。中でも面白かったのは、Tawnyの幼鳥とBateleurの幼鳥が毎日同じ枝で仲良く一緒に止まっていることだった。お互いに同種の兄弟とでも思っているかのようだ。

こうした光景は、水たまりが蒸発するまでの数日間続いた。水たまりがなくなると同時に猛禽類たちもどこかへ去っていった。

水を飲んだ後、兄弟のようにくつろぐTawny EagleとBateleurの幼鳥

誰かに似ているCape Fox

Cape Foxは主に夜間活動するためか、姿を見る機会は少ない。ある時、Cape Foxが巣穴の前で昼寝をしているのに出会った。眠そうに目を開けてこっちを見ている。大きな耳がピンと立ち、整った綺麗な顔をしている。顔はこっちに向けたままで、大きな耳だけを素早く前後に動かして周囲の状況をうかがっている。やがて立ち上がって巣穴へ入ったと思ったら、また出て来てうたた寝を始めた。

Cape Fox、誰かに似ている。そして間も無く仕事でお世話になっているその人を思い出した。涼やかな目元がそっくりなのだ。日本に帰ったら、その人にこの写真をプレゼントしようと思っている。

整った顔立ちのCape Fox

「竜巻とともに去りぬ」Martial Eagle

午後になると竜巻がよく起こる。竜巻といっても小規模なもので竜巻と呼べるのかどうかわからないが、風が渦状になって砂や落ち葉などを巻き上げながら移動していく。渦の中は結構な上昇気流が起きている。この竜巻は数百m移動して突然消滅することが多い。川(水はなく乾いている)の砂を100m程の高さまで巻き上げ、丘の上で消滅すれば川砂は丘の上に撒かれることになる。また、丘の砂が川に撒かれることもあるだろう。こうして水がなくても川や丘にある砂は移動している。

Martial Eagleは飛び立つ時、竜巻をよく利用している。ある時、少し大きめの竜巻が起こり、我々の車を砂埃の中に巻き込んで通り過ぎて行った。Martialが止まっている木のほうへ移動している。Martialは、翼を伸ばし飛ぶ準備を始めている。この竜巻に乗るものと思い、ビデオカメラを回し始めた時、なぜかMartialが止まり向きを変えて竜巻に背を向けた。竜巻はMartialの止まり木の近くを通り過ぎたが、飛び立たない。その時、Martialの視線の先に別の竜巻があることに気づいた。慌てて撮影方向を切り替えた。
まもなくMartialは飛び立った。竜巻に突入し、旋回しながら急激に高度を稼いだ。竜巻はしばらくして丘の上で消滅したが、Martialはそのまま高度を上げ、小さな点となって青空に吸い込まれるように見えなくなった。

Martialは、明らかに竜巻を観察して、利用する竜巻を選んでいる。それは竜巻の移動方向や強さなのだろう。
竜巻を利用するのは高度を手早く稼ぐためだけなのだろうか?竜巻に突入して飛行する姿を見ていると、渦の中の上昇気流を利用して飛ぶのを楽しんでいるように見える。

竜巻に突入するMartial Eagle

サプライズな誕生祝い

南アフリカのカラハリで年越しをし、その後1月8日には誕生日もカラハリで迎えた。自分の誕生日のことなどすっかり忘れてしまっていたのだが、夕食をロッジのレストランで食べ終えた時、レストランの奥のほうからアフリカンな手拍子とパチパチパチという花火の音とともにレストランのスタッフが列をなして入って来た。

何事だろうと見ていると、僕の目の前に超特大のケーキが置かれた。ケーキには「HAPPY BIRTHDAY」と書かれている。なんと僕のバースデイケーキだったのだ。今回同行している妻とスタッフの吉田くんが、僕に気づかれないようにレストランのスタッフと一緒にこのサプライズを計画していたらしい。
レストランスタッフの中には、休日にも関わらず夜の9時ごろにわざわざ駆けつけて来てくれた人も何人かいた。驚きとともにカラハリでの思い出深い誕生日となった。
妻の明子と吉田くん、Kgalagadi Lodgeのレストランとレセプションのみなさんありがとう。

特大のケーキとKgalagadi Lodgeのスタッフと記念撮影

出会いはいつも寝ぼけた顔の Giant Eagle Owl

ピンクのアイシャドーを塗った大きなフクロウ、Giant Eagle Owl。出会いはたいてい昼間であるためか、いつも眠そうな顔をしている。せっかくのアイシャドウもこの寝惚け眼では台無しだ。

昼間、大木の中枝にひっそりと止まっている。運良くその姿を見つけて撮影していると、時々振り向き、眼を半分くらい開いて眠そうな顔を見せてくれる。
10年以上前になるが、初めてこの鳥を見た時、昼間に獲物を捕らえて木の上で食べているところで、何とも凛々しく活動的な姿だった。その後、何度も昼間にこの鳥に出会っているが、いつも寝惚け眼で最初の印象とは随分違っている。またあの活動的な姿に会いたいと思う。しかし、今のところまだ叶っていない。
しかし夜には、あの時のような凛々しい姿で活動していることだろう。

大木の根元で直射日光を避けて休息する

冷蔵庫は共同利用が便利?

Kgalagadi Transfrontier parkのゲートを出て6kmほどの所にあるKgalagadi Lodge で小さなシャレーを借りて宿泊している。キッチンは部屋の中ではなく外側に付いている。冷蔵庫ももちろん外にある。バーベキュー台も各シャレーに付いていて、宿泊者はこのバーベキュー台で盛大に薪を燃やして大きなステーキを焼く。

先日、撮影から戻って間もなく、隣のシャレーの若い男性が慌ててやって来た。すみませんすみませんと言いながら僕のシャレーの冷蔵庫の冷凍室のドアを開けると、空のはずの冷凍室に大量のステーキ肉が入っているではないか。
今晩のバーベキュー用の肉が冷凍室に入りきらずに、こちらの冷凍室に入れさせてもらったとの事。冷凍室はほとんど使っていないので、何の問題もないのだが、大胆な行動に笑ってしまった。実はこちらも、隣の冷凍室の製氷皿を1週間ほど前から無断で借りていて、お互い様といったところだ。

2日後、冷凍室にロックアイスの大袋が入っていた。隣のシャレーの人たちがここを去る時に、冷凍室使用のお礼にと置いて行ってくれたに違いない。しかし、先日のようなこともあるので、とりあえず明日まで様子を見たほうが良さそうだ。翌夕方まで何事もなくロックアイスは冷凍室にあった。これでお礼のロックアイスと決定し、有りがたく利用させてもらっている。

さらに数日後、夕方シャレーに戻ると、キッチンの流しの下になにやら大きな袋が置いてある。何だろうと見てみるとバーベキュー用の炭だった。僕が長期滞在していることを知っている誰かが、残った炭を置いて行ってくれたのだろう。外にあって誰でも出入りできるキッチンではいろんなことが起こる。

宿泊しているシャレー、オープンなキッチンと手前がバーベキュー台