空き家となったアナグマの巣穴

アナグマの様子を見るために、いつもの巣穴のところにやって来た。5月10日に来た時には、アナグマはまったく姿を現さなかった。違う巣穴へ移ったのだろうか?それともアナグマに何かあったのだろうか?有害獣の捕獲罠にかかったのでは…。こんな時にはいつもネガティヴな思考になりがちだ。単にその時は長時間出歩いていたか、巣穴の中で寝ていただけかもしれない。
今日はそれをはっきりさせたいと思ってやって来た。アナグマの巣穴には新しい痕跡は確認できない。7〜8m手前にある巣穴に、新しく土を掻き出した跡がある。
とにかく少し離れて観察する。
9時頃、リスがやって来た。カサコソと小さな音を立てながら右に左に忙しそうに走り回っている。木に登り、枝を伝って木から木へと忍者のように移動していく。
9:30、僕の真上の杉の枝にフクロウが止まっている。今まで気づかなかったが、朝からフクロウに監視されていたようだ。姿は枝葉に隠されてほとんど見えないが、時折隙間から目をのぞかせて僕を見下ろしている。
夕方薄暗くなり始めるまで観察したが、アナグマは出てこなかった。どうやらこの巣穴を今は使っていないらしい。
フクロウはまだ活動を始めずにじっと止まっている。



枝葉の隙間からこちらの様子を窺うフクロウ

アナグマは巣穴の整理、フクロウは高みの見物

6:50、アナグマの巣穴が見えるところに到着。アナグマの子どもがそろそろ巣穴から顔を出すのではと期待して待つ。
9:30、ようやく巣穴からアナグマが出てきた。一旦巣穴へ入った後、今度は後ろ向きにお尻から出てきた。巣穴から土や枯れ枝を掻き出している。これを何度も繰り返した後、9:40に巣穴から離れて、いつものように左手の尾根を越えて見えなくなった。これまでは巣穴へ枯れ枝や葉を掻き入れていたのだが、今日はなぜか掻き出してから去っていった。残念ながら子供が出てくることはなかった。
11:40、フクロウがこもった小声で鳴く。僕の頭上近くの木の上から声がしている。枝葉が混み合っていて姿を見つけられない。ゴロスケホッホと3回ほど鳴いた後、羽音のようなブヮーブヮーという低い小さな声を出していた。高みから僕を観察しているに違いない。
帰りに声のしていたあたりを真下から見ると、フクロウが木の枝から僕の動きを見下ろしていた。

農繁期の喧騒がアナグマの巣穴まで届く

小高い尾根のアナグマの巣穴には、農繁期のトラクターや草刈り機の音など、里の喧騒が聞こえてくる。アナグマや他の動物たちもそんなことはお構いなしに悠々と暮らしている。集落まではほんの数百メートルだが、ここにやって来る人は滅多にいない。
9:40、キツネが近くを通り過ぎて尾根を越えて見えなくなった。
11:20、アナグマが戻って来て巣穴へ入る。朝早くに巣穴から出ていたようだ。
13:50、巣穴から出て来た。巣穴の横で毛繕い。毛繕いというよりダニを掻き落としているように見える。痒そうだ。歩き出していつものように左の尾根を越えて見えなくなった。
アナグマの行き先を見ようと尾根まで歩いて行くと下から誰かが登って来た。まさかこの山の中で人に会うとは思ってもいなかったので一瞬ぎょっとしたが、よく見ると隣の集落の正信さんだった。正信さんとは渓流散策や山菜採りで時おり一緒に山歩きをしている。良い天気なので裏山へコシアブラを探しに来られたのだ。一緒に尾根を登ってコシアブラを探す。数本の木から新芽を採集してから別れた。僕は巣穴が見えるところへ戻り、アナグマの帰りを待つ。
17時まで待つが、アナグマ戻らず。



林の中を歩くキツネ

アナグマの行く先で待ち受ける

先日から観察しているアナグマは、巣穴から出るといつも左下方向へ山を下っていく。その先にはすぐに集落がある。これまでにそこで何度かアナグマを見かけている。今日はその集落脇でアナグマが山からおりて来そうな場所で待つ。
予想はピタリと当たった。気付いた時にはアナグマは目の前に来ていた。僕から5mのところで立ち止まった。人間の臭いが強烈にするのだろう。そのうちに僕のほうを凝視し始めた。僕は全く動かずに立ったままの姿勢を保つ。アナグマは、僕が動かなければ僕を人間だと見分けられない。何か物体がそこにあると思っているだけのようだ。しかし、臭いには敏感だ。危なっかしい方へは行かず、方向を変えて歩き出した。20mほど歩いて廃屋の裏に座って毛繕いをした後、歩き出して僕の視界から消えた。日中に人目につくところにはめったに出ないから、集落には入らず山際を移動しながら餌を探しているのだろう。機会あれば次回さらに追ってみよう。

小春日和に里山散策

春の野山は気持ちがいい。
今が一年のうちで最も過ごしやすい気候だ。花が咲き、夏鳥たちのさえずりが賑やかだ。オオルリやクロツグミ、キビタキが競うようにさえずっている。遠くからツツドリの筒を叩くようなポポポポという声も聞こえてくる。太く大きなシマヘビが日向ぼっこをして体を温めている。
小高い丘の地上に巣穴を発見。10m四方の中に出入り口が9箇所もある。80mほど離れたところにも巣穴を発見。出入り口は6箇所だ。出入り口にハエがたくさん飛び回っているので使っているかもしれない。巣穴はいずれも出入り口の直径が20〜30cmで、キツネかタヌキまたはアナグマが使用している可能性がある。
さらに80mほど行ったところにも5箇所の出入り口がある。またさらに80mほど先に2箇所の出入り口がある。
2番目に発見した巣穴の近くに戻った時、ガサゴソとかすかな足音が聞こえた。見ると1頭のアナグマが歩いて近づいてきた。6箇所の出入り口のうち一番端の穴へ入っていった。
午後はこの巣穴を少し離れたところから観察と撮影。
待つこと40分。アナグマが巣穴から顔を出した。近くの枯れた枝葉を集めて巣穴へ引き込んだ。出入り口を隠したのだろうか?
2分後、キツネが僕のいる方向へ歩いて来る。70mほど手前で立ち止まった。僕の気配を感じ取っている。方向を変えて去っていった。キツネもこのいずれかの巣穴を利用しているのだろうか?
視線をアナグマの巣穴へ戻すと、アナグマが巣穴から出て歩いている。尾根を越えて見えなくなった。
2時間後の17:15、アナグマが戻って来た。巣穴の10m手前で座り込んで、しばらく毛繕いをしてから巣穴へ戻った。



巣穴へ戻るアナグマ

アナグマは食事に夢中



鼻先と前脚で地面を掘り、ミミズを探して食べる

このところ毎日のように雨が降り、肌寒い日が続いている。サクラはこの雨の間に満開を迎え、今はほとんど散ってしまった。
家の外は出るのも億劫な雨だが、こんな日にも集落脇の田んぼの畔で餌を探すアナグマがいた。昼間に堂々と、まわりの様子を気にするふうもなく餌探しに夢中になっている。草むらを鼻先と前脚で忙しそうに耕して、時々何かをくわえて食べている。
食べているのは、太くて大きなミミズだった。