雪解けに合わせて高標高地へシカが戻り始めた

雪とともに低標高地へと移動していたニホンジカが、雪解けとともに高標高地へと移動している。雪解けの早い南斜面や急傾斜地では、山肌があちらこちらで露出している。シカたちは素早くそういうところへ進出して、雪に埋もれていた植物を食べている。

一方、積雪期も山を下ることなく生活していたカモシカは、同じような植物食のシカが戻って来たことで迷惑しているのかもしれない。
オレンジカモシカは、そんなシカをどのように思っているのか分からないがじっと見つめていた。そしてふと我に返り、雪を舐めて喉を潤し松葉を食べていつもの生活に戻った。



同じエリアで生活するカモシカとニホンジカ。
シカの生息密度は高く、カモシカの何倍もの数がいる

道路を渡りたかったカモシカ

県道を車で走っていると道路脇の雪の上にカモシカが立っていた。自動車が時折行き交う道路を横断して対岸の山へと行きたいらしい。集落内を通ってここまで出てきたのだ。道路を渡るとその向こうには川がある。川を渡ると林になっていて山の斜面に続いている。そこまで行くと安全地帯だ。

車を恐れているようには見えないので、通り過ぎてからUターンしてカモシカのところへ近づいて行った。スピードを落として近くまで行くと、カモシカは危険を感じたらく慌てて向きを変えて走り去った。
何台か車が通り過ぎても気にしていなかったのだが、スピードを落として近づくと恐怖を感じている。動物たちは人間の動きをよく観察している。自分に興味を持つ人間は危険だと思っている。田や畑で農作業をしている人の近くに鳥や哺乳類が出てくることはあるが、撮影しようと構えると動物は逃げて行くことが多い。自分に興味を持たれたことを素早く感じ取って逃げるのだ。

今回のカモシカも、道路を渡るタイミングを見計らっているうちに、このカモシカに興味を持つ人間が現れて一旦引き返さざるを得なくなったのだ。

雪に足を取られながら逃げるカモシカ

霧に覆われた1日

冬型の気圧配置が緩み、高気圧に覆われてきたので山に出かけた。早朝は快晴だったが、目的の場所に到着した頃には霧に覆われて視界が全くなくなってしまった。こういう時は平地では晴れ間が続いていて、山のそれも一部分だけに霧が発生していることが多い。しかし、自分のまわりは白一色で何も見えないので、世界中がこのような天気であるような気がしてくる。

マイクには霧の水蒸気が付着して霧氷となった。

太陽が当たらないので気温は上がらない。撮影地に到着してからは、動かずに待ち続けるので寒さがこたえる。南極でも使えそうな嵩高い羽毛服を着込んで霧が晴れてくれるのをひたすら待つ。

霧が晴れるのをひたすら待つ。

14時ごろ、今日の撮影は諦めて下山しようかと思った矢先、あたりが少し明るくなり、霧が一部分だけ晴れた。対岸の雪上にカモシカらしい足跡がある。足跡の先にカモシカ1頭を発見した。カメラをカモシカに向けようとした時には再び霧に覆われてしまった。

その後も霧は晴れず、耐寒訓練の1日だった。

シカは山を下った

先日の雪で山は1m以上の積雪になった。標高の高いところにいたニホンジカは、ほぼすべて雪の少ない山麓へ下っている。今は雪に覆われて真っ白な斜面にシカの姿はない。
午後になって、山麓への移動が遅れた1頭の雌ジカが現れた。山麓へ向かっているのだろうか?結構慌てている様子だが、脚が雪に埋もれて思うように身動きが取れずに難航しながら林の中へ入って行った。

一方、カモシカは、冬になっても移動することなく雪山で暮らしている。雪の上に出た枝や樹皮を食べて冬を乗り越える。
オレンジカモシカも少しだけ姿を見せてくれた。今日は子カモシカを連れていない。別々に行動しているようだ。



カモシカは、立ち上がって高い位置の枝や樹皮を食べる

雪の止み間に野生動物は元気に活動

雪のない年末年始だったが、ようやく本格的な雪が降った。小鳥たちが雪に覆われた山から里へと降りて来た。集落周辺の林や建物の陰など、雪が積もりにくい場所で必死に採食している。

寒波が去った穏やかな今日は、鳥たちも活動的に見える。凍った湖にもわずかな水面を見つけてカモたちが集まっている。
降雪中は姿を見せなかったモズが、晴れ間とともに家の周りに出て来た。太陽の光を浴びて、少し動き出した昆虫を見つけては食べている。獲物は主にカメムシである。
雪の上には昨夜歩いたキツネの足跡が続いている。雪の上をよく見るとテントウムシが歩いている。よくぞ冷たい雪の上で活動しているものだ。夕方になって太陽光が弱まる前に、冬眠に戻れるいい場所に辿り着かなければ生き延びることはできないだろう。

今日は動物たちが元気を取り戻したかのような穏やかな冬の晴れ間だった。



冬の晴れ間に動き出した動物たち。雪上のキツネの足跡。凍結を免れたわずかな水面に集まるオシドリ、オオバン、キンクロハジロ。カメムシを捕食するモズ

オレンジカモシカ親子の再会

オレンジカモシカは朝から子カモシカと一緒にいる。秋には子カモシカと別々に暮らしていたのだが、冬になって一緒にいるのを見ることが多くなった。
秋はカモシカの繁殖期だ。雄カモシカがオレンジにつきまとっているために、子カモシカは母親のオレンジから離れて生活を始めていたのだろう。

10日ほど前にこの親子を見たときには、子カモシカがオレンジのそばに近づくがなんとなくよそよそしい感じがした。親子はすぐに別々の方向で採食してはまた合流するといった具合だったが、今日は一日中一緒に座って休息したり採食したり離れずにいる。
子カモシカは単独で十分生活していけるようになっている。次回出会った時には、この親子は一緒にいるのか別々にいるのか気になるところだ。



オレンジカモシカ親子の再会

今年の初イヌワシ

謹賀新年。新しい年が始まりました。

今日は今年初の山行だ。この冬はまったくと言っていいほど雪が積もらない。伊吹山は標高1,000mあたりまでがうっすらと雪化粧する程度である。

ニホンジカは雪が積もると山麓部へと降りて行くのだが、雪がないので山頂近くにまだたくさんいる。ニホンジカも今日が今年初の観察だ。

運良くイヌワシが近くに出現した。今年の初イヌワシだ。イヌワシの飛翔はいつ見ても華麗で格好いい。
獲物を探して斜面すれすれを飛行したり上空でホバリングをしたりと目まぐるしく飛び回った。
ブッシュや草が雪に覆われると獲物を発見しやすいのだが、今冬のように雪がないと獲物探しも大変だ。
暖冬というのはイヌワシにとって厳しい冬なのだ。



イヌワシの華麗な飛翔

奥山にも沢山のゴミが…

A2DD2256

人気の無い山奥に、何やら白っぽい墓石のようなものが林立している。これは、植樹した苗木にプラスチックの筒を被せて、シカやカモシカが食べないようにしたものだ。遠目にも沢山の白い棒状のものがよく目立つ。一見不気味な印象だ。

10年以上も前にこの筒を被せる防除が流行って、山のあちこちに見られるようになった。
しかし、雪の重みでプラスチックの筒が中の木とともに折れ曲がったり、夏の暑さで木が蒸せてしまったりと、食害は防いでも木は育たなかった。最近は新設されたものを見なくなったが、昔の残骸があちこちにある。

A2DD2265

支えのポールを残して、倒れた筒は雨や雪で斜面を押し流されている。谷底まで落ちて川に浸かっているものもたくさんある。雨が降って大水が出るたびに流されて、すでに海まで流れ着いたものもたくさんあるだろう。

粉々になった大量のプラスチックが海に浮遊している、というナショナルジオグラフィックの記事を思い出し、よそ事ではなく身近で起きていることだと実感した。
そもそも設置する段階で、不要になったときの回収を義務付けるべきだと思う。回収しないのであれば、大量の不法投棄と言われても仕方がない。

オレンジカモシカ、昨年に続き出産

昨年に続いて今年も出産するのではないかと期待した通り、オレンジカモシカは子カモシカを連れて現れた。子カモシカは、母親にぴったり張り付いているかのように寄り添っている。母親も子カモシカの様子を見ながらゆっくりと歩いている。

カモシカの子供はなんともいえず可愛らしい。近くで出会ったなら連れて帰りたい衝動に駆られてしまうだろう。かなり昔のことだが、へその緒がついた生まれて間もないカモシカの子供に山の中で出会ったことがある。詳細はネイチャーエッセイVol.35を見てください。その子カモシカは僕を母カモシカと間違えて、僕の行くところへついてくる。なんて可愛い動物なんだと思ったものだった。

今日の子カモシカは、遠く離れたところから見ているのだが、可愛らしさは十分に伝わってくる。しかしこの小さな可愛らしい動物にとって、野生の世界には危険がいっぱいだ。少し離れたところでは、朝からツキノワグマが歩き回っている。鼻先を上げて匂いを嗅ぎながら何かを追跡している。

子カモシカを捕食する動物にはツキノワグマやイヌワシ、キツネなどがいる。うまく危険を回避して生きのびてくれることを祈らずにはいられない。



オレンジカモシカ、昨年に続き出産。子供を連れて現れた

アナグマ君のニアミス

オオルリやクロツグミ・キビタキなど、夏鳥たちの囀りが賑やかだ。雄のヤマドリ2羽が羽毛を逆立てて、ガサゴソと草むらで戦っているのが見え隠れしている。

背後で枯れ草を掻き分ける音がかすかに聞こえた。そっと振り向くと十数メートル先にアナグマがいた。
鼻先を地面に突っ込んで食べ物を探しながらこちらに近づいて来る。
こちらが大きな動きをすると気づかれてしまうので、そのままの姿勢でポケットからiPhoneを取り出して撮影する。
6mほどのところまで来た時に、ようやく僕の臭いに気づいて鼻を上げて臭いを嗅いだ。
それでも大丈夫と判断したらしく、さらに近づいて来る。2mまで来た時、これ以上はヤバイと感じている様子だ。しかし、臭い以外に人間の気配がしないためだろう、アナグマは好奇心に駆られて2、3歩前に出ては戻ることを繰り返している。
それ以上近づく勇気は出ずに、やがて90度方向を変えて走り去った。



人間がいることに気付かずに大接近