ムササビの交通事故死体

交通事故死したムササビ

今日(10/25)の夜、スタッフのヨッシーが帰宅途中の道路でムササビの死体を見つけた。すぐに死体を拾って会社に戻って来た。ムササビの死体は、まだ暖かく硬直もしていない。状況から、滑空して道路を横切る時に車とぶつかったと思われた。

皮膜を全開

外傷はなく綺麗な死体だ。各部の計測と写真を撮って冷凍庫に保管する。ムササビはあまり地上を歩かずに、木から木へと滑空して渡っていくので交通事故とは相当に運が悪い。

皮膜を広げて滑空するのだが、前脚の小指にあたる骨が長く(8cmくらい)なって、皮膜をさらに外側へと広げられるようになっている。地上を歩くのには適していない。

前脚の小指にあたる骨が長くなっている

ムササビは夜行性で、昼間は樹洞で寝ているが、あたりが真っ暗になると出て来て活動を始める。木のてっぺんまで登ってそこから目指す方向へと飛び出して滑空してゆく。今回は活動を始めたところで事故に遭ってしまった。

背面

第1回伊吹山イヌワシ観察会の開催

イヌワシ子育てライブで大空を舞うことができなかったニーナ。その両親であるイヌワシペアを観察する企画です。現地での観察で、イヌワシの暮らしや自然環境について肌で感じてもらうことができたと思います。

バスで伊吹山ドライブウェイを登っていく

9:30、強風と霧の中で、耐えることからイヌワシ観察が始まりました。徐々に霧の合間から山並みが姿を現し、やがて視界が開けてきました。今日の観察会でイヌワシの第1発見者に贈る「ファーストディスカバリー賞」をかけて皆が真剣にイヌワシを探します。

霧と強風の中で、イヌワシの出現を待つ

双眼鏡の基本的な使い方を説明する

11:15、「あっ、あれは何」との声にスタッフがすぐに双眼鏡に捉えて、イヌワシであることを確認しました。谷間を飛行し、小さな尾根の裏に消えた。一瞬の動きで、この時イヌワシを見たのは2人だけでした。
11:24、尾根裏に消えたイヌワシが上昇してきたのを発見。ゆっくりと飛行して霧の中に入って見えなくなった。この時のイヌワシはほとんど皆が観察できた。
11:59、岩場に止まっているペアを確認。遠いがスコープでペアの様子を見ることができた。

岩場に止まるペアを発見

昼になってもペアで止まっているので、目を離して昼食に行くことができない。12:40になってようやく昼食に山頂駐車場の食堂へとバスが出発した。弁当持参組は観察地でワシを見ながら弁当を食べる。
食べ終わってまもなく、強い風と雨が降り出した。避難するバスはここにはない。カッパを着て耐える人、僕は強風に傘がおしゃかになりそうになりながらも傘をさして何とか凌いだ。
雨が止んですぐにバスは戻ってきた。皆でまだ止まっているイヌワシを観察。風雨に耐えた人たちは、寒さを克服した。もうそれほど寒いとは思わなくなったらしい。標高1,000mの山で、初めてのイヌワシ観察の方が多い中で、これほど忍耐強く観察してもらえるとは思っていなかったので、僕はそのことに感動した。これもニーナの威力です。
参加者の皆さんには自然の厳しさと、そこで暮らす野生動物の大変さを身をもって感じてもらえたと思います。

イヌワシを観察する

その後もイヌワシペアは出現し、獲物を探しての飛行や急降下する姿などを観察することができました。
15:45、名残惜しい気持ちの中、遠くの木に止まっているイヌワシに見送られながらバスで伊吹山を下山しました。

第1発見者の近藤さん

ファーストディスカバリー賞

この日のイヌワシの行動の映像を、参加者のKaoruさんが撮影してYouTubeに映像をアップされているのでご覧ください。「伊吹山イヌワシ観察会-2023-10-15」で検索してください。

第2回伊吹山イヌワシ観察会案内

第2回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

イヌワシ観察会、天気になあれ

10月15日の「伊吹山イヌワシ観察会」、天気予報が少し危うくなってきた。
少し雨マークが表示された。天気がいい方に転ぶことを期待したい。

「イヌワシライブ」と「アナグマハウスライブ」の視聴者の方が、観察会の好天を祈って大きなてるてる坊主を作ってくださいました。
気温が下がり始めた伊吹山に合わせて、毛糸のマフラーをつけています。

今後のイヌワシ観察会は、冬期を除いて月1回程度の開催を予定しています。第2回は10月29日です。

第2回伊吹山イヌワシ観察会案内

第2回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

第2回伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

ニーナの両親と伊吹山で会いましょう

「第2回伊吹山のイヌワシ観察会」を10月29日(日)に開催します。
秋の訪れとともに気温がぐっと下がり始めました。イヌワシは次の繁殖に向けてディスプレイ飛行など活動的に行動を始めます。
伊吹山ドライブウェイからイヌワシペアを探して観察します。秋の澄み渡った空気の中でアルプスや白山の山並みが遠望できます。冬鳥として訪れたノスリやハイタカなどいろいろな猛禽類を観察することができます。
多くの方々の参加をお持ちしています。

イヌワシ観察会は今後、冬期を除いて月1回程度の開催を予定しています。次回は11月19日を予定しています。

第2回伊吹山イヌワシ観察会案内
第2回イヌワシ観察会案内

参加申込書
第2回イヌワシ観察会参加申込書

伊吹山イヌワシ観察会のお知らせ

ニーナの両親と伊吹山で会いましょう

以前に日程だけをお知らせしていた「伊吹山のイヌワシ観察会」の第1回目を10月15日(日)に開催します。

今年の繁殖はニーナが巣立つことができずに失敗しましたが、親ワシは猛暑の夏を乗り越えて元気に活動しています。
伊吹山ドライブウェイからイヌワシペアを探して観察します。秋は鳥類の渡りの季節であり、移動中や冬鳥として訪れたノスリやハイタカなどいろいろな猛禽類を観察することができます。
多くの方々の参加をお持ちしています。

観察会の案内と参加申込書は下記にあります。
集合場所に関ヶ原駅8:30を追加しました。
下記の観察会案内と参加申込書に関ヶ原を追加しました。すでに申込された方は再度申し込みする必要はありません。

伊吹山ドレイブウェイ入り口事務所前に集合される場合、北側の広場に駐車できるスペースを確保しています。

伊吹山イヌワシ観察会案内:イヌワシ観察会案内

参加申込書:参加申込書

イヌワシ観察会は今後、冬期を除いて月1回程度の開催を予定しています。次回は10月29日です。次回の参加申込書は後日案内します。

「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」クラウドファンディング終了しました


クラウドファンデイングは15日で終了しました。
皆様の貴重なご支援ありがとうございました。セカンドゴールを過ぎてもさらに多くのご支援をいただき、大変ありがたく思っています。沢山の方々が応援してくださることに感謝しています。

これからも野生動物や自然環境の素晴らしさを伝えられるよう活動を続けていきます。人が憩い、野生動物が暮らす自然環境が豊かなものであってほしいと願っています。

野生のいぶき 2023年9月16日

昨日の9月16日はイヌワシライブのニーナの49日であるらしい。チャットでばなーなさんの呼びかけで16:56に黙祷をするとのことだ。その時間帯に僕は伊吹山にいた。きょうはイヌワシライブの視聴者の方たち数人と一緒に観察している。
16:30、雄のイヌワシが来て岩場の灌木に止まった。雌ワシも山の裏側から旋回して現れた。少し高度を上げたあと、急降下して雄から少し離れた岩に止まった。黙祷の時間を前に正面の岩にペアがいる。
ばなーなさんの熱い思いがイヌワシペアをここに呼び寄せたのかもしれない。2羽は落ち着いて止まり、飛び立つ気配はない。

ペアを正面に黙祷の時間を迎えた。気がつくと我々がいる駐車スペースはイヌワシを狙うカメラマンでいっぱいになっていた。少し前までは、我々以外にはイヌワシカメラマンはいなかった。伊吹山に来ているカメラマンの多くがイヌワシライブのチャットを見ていたのかもしれない。

その後、雌ワシの近くにニホンジカの母子が現れた。母ジカと今年生まれの子ジカ、一昨年生まれと思われる若いシカの親子3頭だ。母ジカはイヌワシに気づき、子ジカを心配してかなり警戒している。イヌワシの様子を窺いながら立ち止まっている。
イヌワシのほうは、シカのことを気にしていないかのように貫禄を見せている。母ジカは、意を決してイヌワシを追い払いに小走りに駆け出した。少し躊躇しながらもどうにかイヌワシを追い払った。

イヌワシのほうはそれほど気にする様子もなく、近くを一回りしてすぐに同じあたりの岩に戻って来た。シカの親子はどこかに去っていた。
18時に雄ワシが飛び立って、山を回り込むように飛び去った。続いて雌ワシも雄ワシの後を追って今晩のねぐらへ向かった。


「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」ダイジェスト2023 ニーナの成長

4月11日に孵化した1番雛ニーナは、2番雛のミミが4月21日に死んでからは巣に運ばれてくる獲物を自分だけで独占して食べることができるようになった。2羽が育つだけの獲物が確保できない日本のイヌワシでは、この兄弟闘争によってほとんどの場合1羽しか育つことができない。

4月と5月は比較的順調に獲物が巣へ運び込まれた。それでも2〜5日も獲物が運ばれて来ないことが何度かあった。ニーナはまだ小さく食べる量も少ないのでどうにか深刻な餌不足にはなっていない。普通よりも少し早い成長だ。4月30日(19日齢)には、わずかに伸び始めた風切羽が黒く見えるようになった。

この巣はオーバーハングがなく雨や雪が降りかかり、落石が直撃する可能性がある。4月28日には落石があった。幸いニーナにも母ワシにも当たることなく、すぐそばの巣の上にいくつかの石が落ちてきた。母ワシは慌てて巣から飛び出した。20分ほどで戻ってきたが盛んに上を気にして見上げている。
母ワシは巣の中に落ちている5cmほどもある石を嘴でくわえて巣から飛び立ち捨てに行った。巣に戻ったあと、別の石を拾い上げて巣の端に移動させた。
夕方にまた落石があった。母ワシは驚いて巣から出て行ったが、日没までには戻って来た。

29・30日と獲物の搬入がなく、巣に残っていた餌も無くなった。母ワシは早朝から狩りに出た。普通なら母ワシは日中も雛と一緒に巣で過ごしている時期なのだが…。
母ワシは昼頃に帰巣したがすぐにまた出て行った。夕方にも一旦戻ったものの、落石を気にして上を見上げていたが再び出て行った。薄暗くなった頃に戻って来て、今度はニーナをお腹の下に入れて落ち着いて座った。
落石の原因は、ツキノワグマが巣のある岩壁の上を歩いていたためだと思われた。夕方になって近くの木に登っているクマを発見した。
獲物は3日目の夕方(5月1日)に母ワシがノウサギを持ち帰った。ニーナは2日ぶりに餌にありついた。

5月3日、母ワシは夜になっても帰巣しなかった。22日齢のまだ幼いニーナが1羽で夜を過ごすことになった。通常この日齢の雛には夜間は母ワシが添い寝するはずだがどうしたことか。寒さは大丈夫だろうか。
翌朝、暗いうちからライブ映像を確認する。徐々にニーナの白い体が暗闇から現れてくる。小鳥たちの囀りが賑やかだ。ニーナは横たわってまだ眠っているのか動かない。頭を上げてくれ、と祈るような気持ちで画面を見続けた。4:36頭を上げた。いつもと変わらないクリッとした目であたりを見回している。
元気そうだ。今朝は強くは冷え込まなかったのは幸いだった。気温は8度くらいだろう。0度近くまで冷え込んでいたらと考えるとゾッとする。
2日後(5月5日)の夜も母ワシは帰って来なかった。前回も切り抜けたのだから大丈夫と思いながらも翌日早朝からライブ映像を確認する。元気な姿にホッとする。
次の試練は5月13日、ニーナが32日齢の時だった。母ワシは帰巣せず、夕方から雨が降り出し、夜になって雨足が強まった。まだ羽毛が伸び始めたばかりの綿毛のニーナが冷たい雨の一夜をやり過ごせるのだろうか?今回は前の時よりさらに厳しい夜になりそうだ。
翌朝、ニーナは座ってはいるが体を立たせた姿勢で雨に打たれていた。この姿勢は、雨が羽毛や綿毛の表面を流れて内部には侵入しにくい。横たわって寝ると、雨は綿毛や羽毛の向きと逆行して内部(体)にまで浸透しやすくなる。幼いニーナはそのことを本能的に知っているのだろう。
ニーナは雨に耐えてあまり眠れなかったのか、明るくなってからも居眠りを繰り返していた。

雛が20〜30日齢なのに母ワシが夜間巣にいないことは普通ではない。獲物が捕れないとしても夜には帰巣するはずだ。考えられる原因は落石だ。以前の落石以来、母ワシは巣に戻るたびに上を気にして、落石を恐れている様子だった。

獲物の搬入は5月下旬以降さらに少なくなった。ニーナは餌がなくて雛が普通は食べない大きな骨を何本も何本も食べた。3〜5日間の絶食も何回もあった。ニーナはいつも空腹状態で親ワシの帰りを待っていた。
ニーナは母ワシから給餌を受けることも少なかった。腹が減り過ぎて給餌を待ってはいられなかったのだと思う。自分でガツガツ食いついてガンガン食べた。大きなヘビも引きちぎっている余裕はない。丸呑みで一気に食べた。
ニーナは常に飢餓と闘っていた。それは両親も同じだったと思う。母ワシは6月28日にヘビを運んだ時、巣の上に何か餌はないかと盛んに探していた。拾い上げるものは干からびた骨と皮ばかりだった。その日を最後に母ワシが巣に来ることはなかった。

その後は雄ワシだけが時々獲物を運んで来た。ニーナの飢餓はどんどんひどい状況になった。7月下旬には10日以上の絶食となって、両脚と尾羽も使って3点支持で立っているのがやっとという状況まで衰弱していた。痩せて羽毛の成長がほとんど止まっている。80〜85日齢で巣立つと予想していたが、108日齢で巣から落下したが、その時のニーナの外見は75日齢程度の雛と同じだった。成長は1ヶ月以上遅れていた。(7月下旬以降の話は「ニーナ救護の舞台裏」に続く)

巣に搬入された獲物は、ニーナが孵化する前の4月9日に運び込まれたヤマドリからニーナの救護に動き始める前の7月26日まで、計109日間に65個体だけだった。また獲物が搬入された日は49日、搬入されなかった日は60日で搬入されない日が多かった。ニーナが最も食欲旺盛となる6〜7月の58日間では、搬入された日は16日、搬入されなかった日は42日とさらに厳しい状況となっていた。

今年のこれまでにない餌不足はなぜ起こったのか?記録的な猛暑によって獲物となる動物が暑さを避けて日中に姿を現さなかったことが要因となっているのではないだろうか。
また年間を通した主要な獲物であるノウサギはかなり以前から減少していることも関係しているだろう。現在は増加したニホンジカの子供を捕獲することでノウサギの減少分を少しは賄っている。しかし子ジカを捕獲できるのは5〜6月の出産期だけである。

日本の山はスギやヒノキなどの人工林が40%以上を占めている。
近年はシカの食害で植物が減少し裸地化していることが大きな問題となっている。それと同様に放置された人工林の林床にはシカの食害以上に植物は少ない。人工林内には動物たちが生活できる食物が非常に少ないのだ。
放置人工林を伐採して自然林へと転換することは、自然環境や野生動物の保全のための重要な取り組みだと考えている。



「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」ニーナの絵日記

絵日記風にニーナ親子を描いたスケッチブックを、ライブ視聴者のミナレグさんから送っていただきました。
その絵日記をみなさんに紹介します。20日間限定でYouTubeに公開します。
他にも何人かの視聴者の方にニーナ親子の絵や創作小説などをSNS等にアップしてもらっています。

ニーナ親子の子育ての様子がリアルに思い出されます。
絵に添えられた俳句も感慨深いです。

9月20日20時まで下記のURLでご覧になれます。
閲覧期間は終了しました。



野生のいぶき2023年8月22日

このところ毎日のように伊吹山の山頂にはガスがかかっている。昼前になってガスが徐々に上がり視界が利くようになった。
待ってましたとばかりに上昇気流に乗ってイヌワシペアが現れた。草地が広がる斜面の林の中に子ジカを見つけて急降下した。子ジカは生まれて3ヶ月ほど経っているので跳躍力もついて力強くなっている。イヌワシの攻撃をかわして草地へと走り出てきた。再度林の中に逃げ込んだが、イヌワシも林の中まで飛び込んで雌雄が交互に攻撃を仕掛ける。

イヌワシの攻撃は2〜3分間続いた。子ジカは右へ左へと走り回り、やがて母ジカと合流できた。子ジカは母ジカと他の2頭の雌ジカに囲まれて、イヌワシの攻撃から逃れることができた。

これらの行動は、カメラ機材のセットが間に合わずに観察だけになってしまった。撮影できずに観察だけというのは悔しいものだが、何度も見てようやくカメラに収められたシーンは数多い。
その後のイヌワシは、ペアや単独で獲物を探して出現した。しかし獲物に襲いかかるような場面はなかった。
翼と尾羽に欠損が多く、特に雌はボロボロの印象だ。雛への給餌のために十分な食事ができず、栄養不足で換羽が順調に行われていないためではないだろうか。他のイヌワシペアでも、子育てを終えた夏から秋に羽の欠損が増えてみすぼらしくなっている個体を時々見かける。

イヌワシが子ジカに襲いかかった草地に1頭のツキノワグマが現れた。草地を横切り林の中に姿を消したが、しばらくするとまた草地に出て来た。それを何度か繰り返している時に、子ジカ1頭を含む7頭のシカの群れがクマを見つけて逃げて行った。そのシカたちをクマが呆然と見送っていた。あてもなく歩き回っているように見えたクマは、この子ジカを狙っていたのかもしれない。