伊吹山のイヌワシ繁殖状況2024年6月19日 巣立ち



雛は孵化後70日。巣の中に雛の姿が見えない。雛が立ち上がれば見えるはずだが観察を始めて3時間が経っても動きがない。6月11日には巣の近くに親子グマが居着いていたので雛が食べられたのではと心配になってきた。
11:08、イヌワシペアが西の尾根に現れて旋回していた。次の瞬間、3羽で飛行しているのが見えた。1羽は幼鳥だ。悪い予感は吹き飛んで巣立っていたことに安堵した。

それにしてもあまりに早い巣立ちだ。80日前後で巣立つことが多いので、それと比べて10日は早い。
2日前に幼鳥らしき個体が飛行したという情報を聞いた。それが幼鳥であることが確認できれば68日齢で巣立ったことになる。日本のイヌワシでは最も早い巣立ちだ。

早い巣立ちの原因として考えられるのは、獲物がたくさん捕獲できて雛が十分な餌を食べることができたことが大きいだろう。前にも書いたが、フェンスを張って人の立ち入りを禁止したエリアをイヌワシが頻繁に利用したことで、重要な狩場を見渡しやすく獲物の捕獲効率が上がった可能性がある。
もうひとつの原因は、この雛が活動的で翼や尾羽がまだ短いにも関わらず、勇気を出して巣から飛び出したことだ。

巣立ってまもない幼鳥にしてはよく飛び回る。尾羽はまだかなり短く、飛んでいる時には尾羽より外に脚先が見えることがある。
親ワシたちは幼鳥のことをかなり気にしている。幼鳥が飛べばいつの間にかそばに来て一緒に飛行している。林の中に止まった時には、様子を見に何度もやって来る。
雛は巣立ったとはいえ、まだまだ自分で獲物を獲ることはできないし、飛行技術も未熟なものだ。これから半年間、親ワシから獲物をもらいながら狩りや飛行の技術を磨いていく。
来年の1〜2月頃には親の元を離れて自分の力で生きていかねばならない。

イヌワシを目的にたくさんのカメラマンが集まる伊吹山ではルールやマナーを守って撮影することは必須だと思う。今年はドライブウェイから非常に近い巣で繁殖し、雛が巣立ったことは普通では考えられないことだった。
多くの方々の現地での見守り、そして昨年のイヌワシライブを通じての見守りに感謝します。
今後もこの状況を維持していきたいと思います。