「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」ダイジェスト2023 孵化・兄弟闘争

母ワシは雪の日も強風の日も昼夜抱卵を続け(雄ワシは1〜2回/日程度短時間だけ交代)、産卵から42日目の4月11日に1卵目の雛が孵化した。白い綿毛に覆われた小さな雛は、か弱そうで頭は安定せずにフラフラしている。
巣には2日前に雄ワシが運び込んだ獲物がある。抱卵中は巣に獲物を運び込むことは少なく、巣の外で獲物を雌ワシに渡すことが多い。雄ワシは雛が孵化することを察知して巣へ運んできたのだ。孵化する2日ほど前には卵の中の雛が卵殻を少しずつ削って小さな穴を開けている。雛の鳴き声が卵の中から聞こえているので、雄ワシは雛が孵化することが分かっていたのだ。母ワシは空腹であるにもかかわらず、生まれてくる雛のためにその獲物には一切手をつけなかった。

雛が孵化して1時間後には母ワシはその獲物を雛に給餌した。雛は頭をふらつかせながらも小さな肉片を受け取り、いくつかを食べた。母ワシはだいたい3時間おきに給餌をした。
3日後の4月14日、2番目の雛が誕生した。こちらは産卵から41日目で孵化し、1卵目より1日短い抱卵日数だった。1番目の雛をニーナ、2番目の雛をミミと名付けた。
日本のイヌワシは、雛が2羽孵化しても1羽しか生き残ることができない。2羽育てるだけの餌を確保できないことが主要因と考えている。最初に生まれた1番雛は、2番雛が生まれる頃には少し大きく育っているので優位に立ち回る。2番雛が孵化すると兄弟闘争が始まるのだが、大きい1番雛が一方的に2番雛をつつく。2番雛は、怪我をしたり母ワシからの給餌を受けられなくなったりして10日以内に死んでしまうことが多い。
ニーナとミミの場合も例外ではない。ミミが孵化してから17日までの3日間はニーナのつつきはそれほどではなかったので、このまま2羽が育ってくれないかなーと淡い期待をしていた。18日になってニーナのつつきが激しくなってきた。ミミはニーナの攻撃を避けて逃げ回ったりうずくまったりで、母ワシの給餌を受けられなくなってきた。それでもニーナが満腹になって落ち着いた時に少しは給餌を受けることができた。
ニーナのつつきはだんだん激しくなって、母ワシの脚をつついたり巣の上の獲物につつきを繰り返したりと、相手の見境がなくなっている。20日にはミミの背中は綿毛を抜かれて皮膚が露出して血まみれになった。産座から離れて力無くうずくまり動かない。母ワシは産座でニーナを懐に入れて座っているが、ミミを引き入れることはできない。
翌朝、ミミは力尽きていた。獲物が豊富とは言えない日本では、避けられない宿命だ。これからはニーナが少ない獲物を独占することで成長をしていくことになる。



「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」クラウドファンディングを始めます

雛(ニーナ)にヘビを持ち帰る雄ワシ

7月30日16:56、ニーナは立派に幼い生をまっとうしました。ニーナが亡くなった翌日からのクラウドファンディングとなってしまいました。今後もイヌワシを見守り続け、より良い自然環境づくりへと繋げていきたいと思います。

7月31日10時から46日間のクラウドファンディングを開始します。
URL:https://readyfor.jp/projects/GoldenEagle

皆様のご支援、よろしくお願いします。

伊吹山のイヌワシ子育てダイジェスト2023 抱卵、悪天候に耐える

産卵から1ヶ月が経った。抱卵は順調に進んでいる。雪が少なく暖かい日が続いているが、時には雪の降ることもある。雌ワシは自分の体に降り積もる雪にも動じることなく、じっと耐えて抱卵を続けている。
また、雨が降り続いた時にも微動だにせず雨に打たれて抱卵をしていた。頭を下げて動かないので、大丈夫かとモニターを凝視した。5分以上経ってようやく頭を上げたのを見てホッとした。

雄ワシは1日に数回程度巣を訪れて、数分から1時間くらい雌ワシと抱卵を交代する。雌ワシはその間に巣から出て体を伸ばしフンをしてくつろいでいる。雄ワシが獲物を捕らえて運んできていればそれを食べる。抱卵中は基本的には獲物を巣へは持ち込まない。巣の周辺で受け渡す。
抱卵交代時の雌雄の動きや鳴き交わしなどの状況から、巣の外の様子を想像する。2羽で鳴き交わしている声が聞こえる時には獲物の受け渡しが行われているだろうとか、雌が巣から出た後1分ほどで戻って来た時には、飛びながらフンをし抱卵姿勢で強張った体をほぐして数回旋回して戻って来たのだろう、など真実はわからないことが多いのだが想像して楽しんでいる。

米原市と連携して「イヌワシ子育て応援プロジェクト」を立ち上げました。イヌワシを身近な存在として感じて取ってもらい、イヌワシの現状や伊吹山の素晴らしい自然環境について多くの方に知ってもらいたいと考えています。
一方で、イヌワシ目当てに多くのカメラマンが集まる伊吹山では、一部のカメラマンが巣に近づきすぎて親鳥が巣に戻れなくなったり、シカの死体を持ち込んで餌付けが行われるなど、違法行為やマナー違反が目につくようになっています。「無人リモートカメラ」の設置により巣の周辺を監視できることや、多くの人が見ていることで「見守り効果」が発揮され、撮影マナーの向上や違法行為から守る監視役として機能することを期待しています。

※お願い
イヌワシ子育てのライブ配信は、警戒心の強いイヌワシに影響を与えず、多くの方々にイヌワシを見てもらうための企画です。巣を探し回ったり撮影しようとして、巣に近づかないでください。人が巣に近づくと親鳥は巣から出てしまい、卵やヒナが死んでしまいます。

ライブ配信の日程は以下の通りです。
3月28日、米原市役所本庁舎3F市民交流スペースのモニターで配信開始
3月28日、伊吹山文化資料館で配信開始
4月1日、YouTubeで一般公開開始
URL:https://youtube.com/live/7GT1ToXBM64



「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」公開のお知らせ



伊吹山のイヌワシ子育て生中継

4月1日から公開します。
ライブ映像を通して、イヌワシを身近な存在として感じ取ってもらい、イヌワシの現状や自然環境について考えるきっかけになってほしいと思っています。
イヌワシが警戒しないように、無人リモートカメラによるライブ映像です。普通には見ることのできない空の王者イヌワシの子育てをご覧ください。

伊吹山ではイヌワシの巣に近づいて撮影を試みるカメラマンが増えて、卵や雛が死亡する恐れが高まっています。
巣を探し回ったり近づいて撮影したり、絶対にしないでください!!
ライブカメラは、カメラマン対策として巣の周辺での人の動きも監視しています。イヌワシ保護のために巣の場所やカメラの配置は公開していません。

米原市と連携し、ライブ配信を通じて多くの市民と共に「イヌワシを見守る」体制づくりをしています。

注意事項
・イヌワシや希少種等の生息や繁殖の妨害となる情報(撮影ポイントや巣場所など)は書き込まないでください
・不適切と判断した書き込みは削除させていただきます
・録画等による二次利用は著作権の侵害にあたります

「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」URL:https://youtube.com/live/7GT1ToXBM64

「伊吹山のイヌワシ子育て生中継」ダイジェスト2023 巣造りから産卵

一昨年からイヌワシの営巣が観察できるように、無人のリモートカメラをイヌワシに警戒されないように設置している。その後、繁殖期になって巣を訪れたイヌワシは、カメラにはまったく気づいていない。
昨年の様子は2022年1〜3月に書いたとおり、大雪のためにこの巣は使えなかった。その後の観察で、別の巣で繁殖し雛を巣立たせたことがわかった。
今年は雪が少ないが、1月には巣の上に雪が積もったままだった。イヌワシは時々巣にやって来て、積もった雪に胸を押し付けラッセルして除雪する姿が見られた。2月に入って暖かい日が続き、巣の上の雪も急速に溶け始めた頃、頻繁に巣材を運び始めた。5cmほどの積雪の上に巣材を積み上げている。
巣の雪は溶け、巣材は積み上がって産座も完成したのだが、2月下旬になっても産卵していない。2月初旬に産卵することが多いので、これ以上遅い産卵はないだろうと半ば諦めかけた2月27日、夕方遅くに雌ワシが巣にやって来た。夕方に巣を訪れることはあまりないので、もしやと思ってモニターを食い入るように見つめた。
30分ほど経って、雌ワシは卵を押し出すように体の収縮を繰り返し始めた。そのうちに巣の上に座るように姿勢を低くした。産卵が行われたようだ。しばらく呆然と立っていたが、やがて座って抱卵を開始した。
4日後の3月3日夕方に2卵目を産んだ。順調に進めば4月中旬に雛が孵化するだろう。
産卵から1ヶ月経った今も順調に抱卵を続けている。昨年からの計画通りイヌワシの子育ての様子を、公開の準備が出来次第youtubeでライブ配信します。

米原市と連携して「イヌワシ子育て応援プロジェクト」を立ち上げました。イヌワシを身近な存在として感じて取ってもらい、イヌワシの現状や伊吹山の素晴らしい自然環境について多くの方に知ってもらいたいと考えています。
一方で、イヌワシ目当てに多くのカメラマンが集まる伊吹山では、一部の悪質なカメラマンが巣に近づきすぎて親鳥が巣に戻れなくなったり、シカの死体を持ち込んで餌付けが行われるなど、違法行為やマナー違反が目につくようになっています。「無人リモートカメラ」の設置により巣の周辺を監視できることや、多くの人が見ていることで「見守り効果」が発揮され、撮影マナーの向上や違法行為から守る監視役として機能することを期待しています。

※お願い
イヌワシ子育てのライブ配信は、警戒心の強いイヌワシに影響を与えず、多くの方々にイヌワシを見てもらうための企画です。巣を探し回ったり撮影しようとして、巣に近づかないでください。人が巣に近づくと親鳥は巣から出てしまい、卵やヒナが死んでしまいます。

ライブ配信の日程は以下の通りです。
3月28日、米原市役所本庁舎3F市民交流スペースのモニターで配信開始
3月28日、伊吹山文化資料館で配信開始
4月1日、YouTubeで一般公開開始
URL:https://youtube.com/live/7GT1ToXBM64



イヌワシの巣造り、子育てライブ映像ダイジェスト3

イヌワシの巣には、相変わらず雪がこんもりと積もっている。たまにイヌワシがやって来て巣の縁に止まるが、この雪では巣造りができないので困惑している様子だ。巣の近くで鳴き声がたびたび聞こえる。
巣の上の雪は、少なくなってきたと思っていたらまた降ることを繰り返して、一向に減らない。2月6日には1m以上の降雪があって、カメラの前にも雪が積もって1日以上視界がなくなった。
雪の中でも活動しているイヌワシの鳴き声が時々聞こえている。カモシカが雪の岩場を採食しながら歩いている姿も見られた。

このペアは、これまで40年の間に5ヶ所の巣を繁殖に利用してきた。繁殖に成功して雛が巣立ったのは、そのうちの3つの巣だ。雛が巣立つのは、平均して5年に1回足らずである。
5つの巣は遠いものは数キロ以上離れている。この5巣以外にも巣造りをするだけで使用しない巣がいくつかある。現在、ライブカメラの巣は雪で巣造りができないので、他の巣へも巣材を運んでいる。しかし、それらは巣の前に樹木が伸びてきて、出入りが非常にしづらくなっている。
ライブカメラの巣は、上にオーバーハングがなくて雪が積もり、いい条件の巣とは言えない。イヌワシは条件のいい巣を探しているが、なかなか見つからない状況だ。

2月上旬からライブ配信を予定していましたが、巣には雪が積もったままでイヌワシの出入りが少ないので、頻繁に出入りがあるようになるまでライブ配信は延期します。
今年この巣を使用するかどうかはまだ分からないですが、ライブカメラの前で興味深い繁殖生態を見せてくれることを期待したいです。



イヌワシの巣造り、子育てライブ映像ダイジェスト2

昨年末から、巣には雪が降り積もり、巣造りができない状況が続いている。雌雄が鳴きかわしている声が巣の近くで聞こえるが、雪がこんもりと積もった巣には滅多に入って来ない。

1月17日、雄が巣にやって来た。巣の縁の雪のない部分に止まって、さかんに鳴いている。近くに雌がいるのだろう。その方向を注視しているが、雌は巣には来なかった。

イヌワシの産卵は、近畿地方では2月上旬頃が多い。伊吹のワシは早い時には1月下旬に産卵することもあり、周辺の他のワシより若干早めにに繁殖が始まる。しかしここ数年、伊吹では2月下旬に産卵している。遅くなっている理由は分からないが、産卵が遅くなるのは生息状況が悪化している場合に多いように思う。伊吹のワシの将来を少し不安に思う。
産卵が遅いので、巣造りはこれからが本番となるだろう。今年の繁殖がうまくいくことを祈っている。

2月頃からライブ配信の予定です。
イヌワシは、今年の繁殖活動を開始しています。営巣地やその周辺の人の動きなどに敏感で神経質な時期です。
営巣地に近づくことがないようにお願いします。
ライブ映像でイヌワシの繁殖を見守ってください。



雪の積もった巣でコールする

鉄塔営巣のクマタカ、雛が孵化。繁殖順調

鉄塔に営巣しているクマタカの繁殖は順調に継続している。5月中旬には、まだ抱卵であったが、月末には雛が孵化していた。遠方からの観察なので雛の姿は確認できなかったが、雌親が獲物を引きちぎって給餌している姿が確認できた。

鉄塔は周りの林から飛び出て高いので、森の中の営巣と違って直射日光や雨や風を遮るものがない。以前樹木で営巣していたクマタカの雛が、台風の強風で吹き飛ばされて地上に落ちて死んでいたことがあった。鉄塔の上ではさらに強い風が吹き付けるだろう。強い陽射しもまた小さな雛にとっては致命的だ。親鳥が翼で覆って日陰を作って凌ぐしかない。新しい環境での心配事は次から次へと思い浮かぶのだが、新世代クマタカはそれらの問題をいとも簡単に克服するに違いない。



鉄塔に営巣するクマタカ。
雌親は獲物を引きちぎって雛に与え、時々自分も食べる