野生動物の世界を伝える
人と野生動物の共存について提案する
イーグレット・オフィス

野生動物の保護と管理
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…


All the things begin from Golden Eagle!
イーグレット・オフィス
野生動物の生態調査・研究 野生動物の行動をより的確に捉えるためには、その生態を長期にわたって調査研究する必要があります。 イーグレット・オフィスには、猛禽類をはじめとしたさまざまな野生動物の生態に精通したスタッフが常駐し 続きを読む…
このところ鬱陶しい梅雨空が続き、山へ入れなくてうずうずとしている。あのカモシカはどうしているだろうか?とか、あのキツネは、などと考えているといらいらとしてしまう。
雨の合間に自動撮影カメラのカードを交換する。このカメラは集落のはずれにある廃屋に設置してある。4月末頃からニホンジカが頻繁にやって来るようになった。それまでも1〜2頭が時々訪れていたが、シカは近年かなり増加しているからもっと出て来てもいいのではと思える程度だった。それが5月に入って多い時には一度に8頭もビデオに映っている。それらが何度もここにやって来るものだから記録用のカードが毎回一晩で満杯になってしまう。それも映っているのはシカばかりである。以前出現していたキツネやタヌキ・アナグマ・テンなどはまったく姿を現さなくなった。
シカがこの廃屋を訪れるのは何のためだろうか?シカの目的は、この廃屋に残された漬物桶だった。この家が放置されてから10年以上経っているから桶の中には何も残っていない。シカたちは桶にしみ込んだ塩分を求めてやって来ているのだ。ミネラル分も残っているのかもしれない。桶は艶が出るほどきれいになっている。シカは桶の下の土まで食べている。
ここに来るシカの数は、6月になって減少してきているが、一晩で記録カードが満杯になるのはいまだ変わってはいない。
廃屋に集まり漬物桶を舐める
昨年タヌキが出入りしていた巣穴は今年もタヌキが利用している。伊吹山山麓からは車で少し遠征した場所にあるこの巣穴は、山の尾根にポコポコと飛び出している直径10mほどの大岩や1mほどの小岩の下に掘られている。巣穴は全部で10ヶ所ほどもある。
僕が撮影しているところから2つの巣穴が見える。この2つの巣穴は同じ小岩の下にある。手前の巣穴から入って向こうの巣穴へ出たり、その逆であったりと、タヌキの行動から内部で繋がっていることが分かる。
10日ほど前に僕がここを訪れた時、1頭のタヌキが食物を持ち帰ってきた。その時、まわりから3頭のタヌキが現れた。父母のタヌキと昨年生まれたタヌキとがこの巣穴群で集合住宅のように暮らしているようだ。時には大岩の上で日向ぼっこしながら寝そべったり、巣穴の前で眠ったりとのんびりと暮らしている。
今日も11時頃に大岩に1頭が現れた。一旦寝そべったものの間もなく立ち上がり岩を降りていった。その後も何度か1〜2頭が大岩に現れたが、長居はせずに立ち去った。巣穴への出入りは3〜4回あった。
14時過ぎに大岩に現れた2頭は仲良くお互いを舐めあった後、1頭は岩を降り、もう1頭は岩の上で1時間ほどよく眠っていた。
このタヌキたちがほんとうに親子の家族群なのか?
もう少し観察が必要だ。
大岩の上でくつろぐ2頭のタヌキ
山はすっかり新緑に覆われ、哺乳類を探すには少し条件が悪くなった。それでもすぐに対岸斜面にオレンジ色をしたカモシカを見つけた。多くのカモシカが黒っぽい灰色の体色なのでこのカモシカは容易に個体識別ができる。このオレンジカモシカは5年前にこのあたりで産まれて、その後もずっとここで暮らしている。そろそろ子供を産む年齢なので初産を確認したくて追跡しているのだ。昨年はお腹が少し膨れて妊娠しているように見えたのだが、子供を産まなかった。
オレンジカモシカは座って休息した後、立ち上がった。足元に何かがうごめいている。子カモシカだ。まだ足元がおぼつかないながらも母カモシカについて歩く。へその緒もまだ残っている。前回オレンジカモシカを見た時には子供はいなかった。今日までの17日間のうちに生まれているのだが、子カモシカの様子から見て生後一週間ほどだろう。白っぽいオレンジの母親からどんな色の子供が産まれるか興味津々だったが、意外に普通の色だった。顔が白っぽくて目のまわりが焦げ茶色で、少しパンダに似た顔をしているのが特徴になるかもしれない。
母親に寄り添う子カモシカ
カモシカ母子から150mほど下の斜面にニホンジカの母子が現れた。こちらも幼い子ジカを連れている。子ジカは母親のまわりを走り回って活発だ。子ジカは疲れると木陰で休息し、母ジカはこの間に採食に出かける。子ジカもよく心得たもので、母ジカが戻ってくるまで数時間もおとなしく待っている。
カモシカの場合は、こんなに幼い子供を置き去りにして出かけることはめったにない。普段は母子が数十メートルも離れることさえない。今日オレンジカモシカは幼い子供を連れてけっこう歩きまわっている。父親と思われる雄のカモシカがつきまとって追いかけてくるので、オレンジカモシカは嫌がって逃げているのだ。雄は子育てにはノータッチである。母親だけで子供を育てるのだから雄が近づいてくるのは迷惑なのだ。夕方には雄カモシカは遠くへ去って行ったので、オレンジ母子に平和が戻った。
アナグマの様子を見るために、いつもの巣穴のところにやって来た。5月10日に来た時には、アナグマはまったく姿を現さなかった。違う巣穴へ移ったのだろうか?それともアナグマに何かあったのだろうか?有害獣の捕獲罠にかかったのでは…。こんな時にはいつもネガティヴな思考になりがちだ。単にその時は長時間出歩いていたか、巣穴の中で寝ていただけかもしれない。
今日はそれをはっきりさせたいと思ってやって来た。アナグマの巣穴には新しい痕跡は確認できない。7〜8m手前にある巣穴に、新しく土を掻き出した跡がある。
とにかく少し離れて観察する。
9時頃、リスがやって来た。カサコソと小さな音を立てながら右に左に忙しそうに走り回っている。木に登り、枝を伝って木から木へと忍者のように移動していく。
9:30、僕の真上の杉の枝にフクロウが止まっている。今まで気づかなかったが、朝からフクロウに監視されていたようだ。姿は枝葉に隠されてほとんど見えないが、時折隙間から目をのぞかせて僕を見下ろしている。
夕方薄暗くなり始めるまで観察したが、アナグマは出てこなかった。どうやらこの巣穴を今は使っていないらしい。
フクロウはまだ活動を始めずにじっと止まっている。
枝葉の隙間からこちらの様子を窺うフクロウ
このところ気温が上がり、夏のような暑さだった。今日は標高900mほどの山に登っているので少し肌寒いくらいで気持ちがいい。
早ければカモシカの子どもが生まれている頃なので、母子カモシカを探しに来た。
目的の場所に到着すると、ガサゴソと何かが逃げて行った。付近を探すと昨年の子どもを連れた母子ジカが逃げていくのが見えた。
シカは音にものすごく敏感だから、物音をさせず慎重に撮影機材を準備する。他のシカには気づかれずに準備は整った。
8:30頃、対岸斜面にいる雌ジカが時々斜面上方を注視している。何かがいるのだろう。8:40、その方向にツキノワグマを発見。低木に登って若葉を食べている。シカが気にしていたのはこのクマなのだろう。200m近く離れているが、シカの耳なら足音を察知できるだろう。そのうえ音源の主までおよそ判断しているようだ。シカやカモシカが大きな音を立ててもほとんど逃げることはないが、僕が物音をさせると姿を確認しなくても逃げてしまう。
クマは移動して別の木に登った。どういう訳か、ゆっくりと木を揺さぶっている。ふわーんふわーんとした感触を楽しんでいるように見える。遊んでいるとしか思えない行動だ。10:00、クマは移動し、尾根を越えて見えなくなった。
間もなくカモシカの警戒声がして、クマの消失地点の80mほど下にカモシカが現れた。以前に同じシチュエーションでカモシカの子どもが襲われたことがあった。そのシーンはDVD作品「ツキノワグマ」に収録したが、また同じことが起こるのかと一瞬緊張した。今回はカモシカに子どもはいなくて単独なのでそれほど危険はない。カモシカはクマが行った方向を見ていたが、やがて落ちついて採食を始めた。
11:20、別の場所にクマを発見。林の中で枝葉に隠されて見えなくなった。
先ほどのカモシカは平らな岩の上で昼寝を始めている。
身体を揺らして、故意に木を揺さぶっている
6:50、アナグマの巣穴が見えるところに到着。アナグマの子どもがそろそろ巣穴から顔を出すのではと期待して待つ。
9:30、ようやく巣穴からアナグマが出てきた。一旦巣穴へ入った後、今度は後ろ向きにお尻から出てきた。巣穴から土や枯れ枝を掻き出している。これを何度も繰り返した後、9:40に巣穴から離れて、いつものように左手の尾根を越えて見えなくなった。これまでは巣穴へ枯れ枝や葉を掻き入れていたのだが、今日はなぜか掻き出してから去っていった。残念ながら子供が出てくることはなかった。
11:40、フクロウがこもった小声で鳴く。僕の頭上近くの木の上から声がしている。枝葉が混み合っていて姿を見つけられない。ゴロスケホッホと3回ほど鳴いた後、羽音のようなブヮーブヮーという低い小さな声を出していた。高みから僕を観察しているに違いない。
帰りに声のしていたあたりを真下から見ると、フクロウが木の枝から僕の動きを見下ろしていた。
小高い尾根のアナグマの巣穴には、農繁期のトラクターや草刈り機の音など、里の喧騒が聞こえてくる。アナグマや他の動物たちもそんなことはお構いなしに悠々と暮らしている。集落まではほんの数百メートルだが、ここにやって来る人は滅多にいない。
9:40、キツネが近くを通り過ぎて尾根を越えて見えなくなった。
11:20、アナグマが戻って来て巣穴へ入る。朝早くに巣穴から出ていたようだ。
13:50、巣穴から出て来た。巣穴の横で毛繕い。毛繕いというよりダニを掻き落としているように見える。痒そうだ。歩き出していつものように左の尾根を越えて見えなくなった。
アナグマの行き先を見ようと尾根まで歩いて行くと下から誰かが登って来た。まさかこの山の中で人に会うとは思ってもいなかったので一瞬ぎょっとしたが、よく見ると隣の集落の正信さんだった。正信さんとは渓流散策や山菜採りで時おり一緒に山歩きをしている。良い天気なので裏山へコシアブラを探しに来られたのだ。一緒に尾根を登ってコシアブラを探す。数本の木から新芽を採集してから別れた。僕は巣穴が見えるところへ戻り、アナグマの帰りを待つ。
17時まで待つが、アナグマ戻らず。
林の中を歩くキツネ
先日から観察しているアナグマは、巣穴から出るといつも左下方向へ山を下っていく。その先にはすぐに集落がある。これまでにそこで何度かアナグマを見かけている。今日はその集落脇でアナグマが山からおりて来そうな場所で待つ。
予想はピタリと当たった。気付いた時にはアナグマは目の前に来ていた。僕から5mのところで立ち止まった。人間の臭いが強烈にするのだろう。そのうちに僕のほうを凝視し始めた。僕は全く動かずに立ったままの姿勢を保つ。アナグマは、僕が動かなければ僕を人間だと見分けられない。何か物体がそこにあると思っているだけのようだ。しかし、臭いには敏感だ。危なっかしい方へは行かず、方向を変えて歩き出した。20mほど歩いて廃屋の裏に座って毛繕いをした後、歩き出して僕の視界から消えた。日中に人目につくところにはめったに出ないから、集落には入らず山際を移動しながら餌を探しているのだろう。機会あれば次回さらに追ってみよう。
太くて大きいワラビが林立する
今日は、地元の人がほとんど行くことのない山奥へ山菜採りに出かけた。清冽な水が流れる沢筋を遡る。ワサビが白い可憐な花を咲かせている。ミズ(ウワバミソウ)もある。岩場にギボウシが伸び始めている。
人の採集圧を受けていない山菜は太くて大きいものが多い。ワラビは茎の太さが1cmもあるのが林立している。
昼食時、対岸の山の斜面にツキノワグマを見つけた。木に登り鮮やかな新緑の葉を食べている。上空高くにイヌワシが舞っている。
夕方帰宅し、ミズとギボウシを塩水でさっとゆがき、タラノメは木灰を入れて茹でる。ゴマドレやマヨネーズなどであえて食べる。ワサビは少量を生のままで肉類と一緒にいただく。ピリッと辛みが効いてさわやかだ。ワラビは木灰で一晩アクを抜くので、明日以降の楽しみだ。
春の野山は気持ちがいい。
今が一年のうちで最も過ごしやすい気候だ。花が咲き、夏鳥たちのさえずりが賑やかだ。オオルリやクロツグミ、キビタキが競うようにさえずっている。遠くからツツドリの筒を叩くようなポポポポという声も聞こえてくる。太く大きなシマヘビが日向ぼっこをして体を温めている。
小高い丘の地上に巣穴を発見。10m四方の中に出入り口が9箇所もある。80mほど離れたところにも巣穴を発見。出入り口は6箇所だ。出入り口にハエがたくさん飛び回っているので使っているかもしれない。巣穴はいずれも出入り口の直径が20〜30cmで、キツネかタヌキまたはアナグマが使用している可能性がある。
さらに80mほど行ったところにも5箇所の出入り口がある。またさらに80mほど先に2箇所の出入り口がある。
2番目に発見した巣穴の近くに戻った時、ガサゴソとかすかな足音が聞こえた。見ると1頭のアナグマが歩いて近づいてきた。6箇所の出入り口のうち一番端の穴へ入っていった。
午後はこの巣穴を少し離れたところから観察と撮影。
待つこと40分。アナグマが巣穴から顔を出した。近くの枯れた枝葉を集めて巣穴へ引き込んだ。出入り口を隠したのだろうか?
2分後、キツネが僕のいる方向へ歩いて来る。70mほど手前で立ち止まった。僕の気配を感じ取っている。方向を変えて去っていった。キツネもこのいずれかの巣穴を利用しているのだろうか?
視線をアナグマの巣穴へ戻すと、アナグマが巣穴から出て歩いている。尾根を越えて見えなくなった。
2時間後の17:15、アナグマが戻って来た。巣穴の10m手前で座り込んで、しばらく毛繕いをしてから巣穴へ戻った。
巣穴へ戻るアナグマ